軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

言い分

「やっちまった。どうしてこうなった……」

「何言ってんだよ、大将。やるなら徹底的に、とか言ってたのは大将だぞ」

「そんなことはわかってるよ、バルガス。でも、本当にどうしよう。収拾がつくのかな、これ?」

バルカ騎士領にダムを作った。

俺の農業用魔法で土地が水不足になる可能性があったのでその対策のためだった。

だが、それにクレームが付いた。

川の下流に位置するガーネス騎士領を治めるガーネス家が文句を言ってきたのだ。

確かに水利問題は領地間における争いの原因になることが多い。

俺もそのへんの配慮は足りなかったかと思う。

だが、ガーネス家の連中も配慮が足りなかった。

よりによって領地間の問題を話し合う会談へ参加する使者として、まだ若い騎士のラフィンとかいうバカをよこしてきたのだ。

ラフィンはどうやら俺に対する対抗心もあったようだ。

前回のアインラッドの丘争奪戦にも参加し、俺の活躍を見ていた。

その戦での実績が自分よりも下の年齢の俺に負けていたのが悔しかったのかもしれない。

あるいは出自が農民の俺とは違い何代も領地を任されてきた騎士家の出身というプライドもあったのかもしれない。

それゆえか、会談では最初からどこか高圧的だったのだ。

まあ、それでも俺は割と我慢して冷静に対応していたと思う。

が、それも今考えればよくなかったのかもしれない。

戦での活躍で俺に及ばなかったが会談では自分のほうが有利な立場にあると思ったのか、言ってはいけない発言をした。

それが、リリーナを我が物にするという発言だ。

俺はこの発言をそれまでのように低姿勢に流すことはできなかった。

それは心情の面でもそうだ。

リリーナのようなキレイな女性を嫁にもらってそれを横から別の男に持っていかれるなどありえない。

が、今回の発言の問題点はそこではない。

俺の立場がその発言を許してはいけない、というところにあった。

俺はリリーナと単純な恋愛結婚をしたわけではないのだ。

フォンターナ領の当主であるカルロスから血の繋がった関係であるリリーナという元グラハム家の令嬢を嫁がせるという形でバルカ騎士領が出来上がったのだ。

そのリリーナをよこせという相手を笑って許すと、俺はカルロスからの期待を裏切ることと同義であるとみなされてしまう。

カルロスとの関係そのものをないがしろにしていると言われてもおかしくないのだ。

それに、元グラハム家に対する印象も良くない。

俺はリリーナを守る気がないのだと思われれば、これまでのように領地の運営に手を貸す義理もなくなるのだ。

さらにいうと、領地に住む民にも悪影響を与えかねない。

いくら俺が戦場で活躍して、それをもとに領地を任されたと言ってもまだ子供なのだ。

たとえ城を立派にしても完全に心から俺を領主としては認めにくいだろう。

その問題を解消しているのもリリーナという存在なのだ。

リリーナという庶民とは違ういわば高貴な相手と俺が結婚しているからこそ、俺に領地を支配されることを認めているに過ぎない。

もし、リリーナと縁が切れるとなると俺は領地をまとめるための精神的な根っこの部分が失われてしまうことを意味していた。

それ故に、俺はラフィンの発言に対して厳格な対処をせざるを得なかった。

まあ、だからといって会談の場で、その発言の直後に九尾剣でラフィンを消し炭にしたのはさすがにやりすぎだったと反省している。

せめて半殺しだったらパウロ司教のもとに連れて行って命だけは助かったかもしれないのだが……。

「いや、問題はそこだけじゃないだろ、大将。その後も十分過激だったぞ?」

「だって……、使者としてやってきた騎士を討ち取った場合の対処法なんてわからんかったからな」

「で、証拠隠滅ってか? ガーネス家だけじゃなく、他の騎士家も巻き込んで」

「しょうがないだろ。向こうがガーネス家の肩を持ったんだから」

問題発言の直後にラフィンを亡き者にした俺は焦った。

なので、せめて俺の行動に理論武装をすることにしたのだ。

すでにこの世には存在しないラフィンを相手に雪辱を果たすためと理由をつけて、カルロスに問題解決の許可をもらうための伝令を走らせた。

その伝令によって許可を得たら、準備していた軍を率いてガーネス騎士領へと向かったのだ。

まだ生きているラフィンが逃げたのを追いかけたという話をでっち上げて侵攻していった。

適当なところでラフィンを討ち取ったことにして引き上げるつもりだったのだ。

俺はガーネス騎士領に軍を進めたものの、その領地についてどうこうという考えはなかった。

だが、俺は知らなかったのだ。

まさか、領地を任される騎士の本拠地である館があれほど簡単に攻略できてしまうということを。

自分を基準に考えてしまって感覚が麻痺していたが、領地持ちの騎士家であってもそのすべてが領地に城塞都市を持ち、そこに大きな城を構えているわけではないのだ。

ガーネス家もそうだった。

街と言えるほどの大きなところはなく、いくつかの村とその村の中心に位置するところに館を持っていた。

その館で領地の統治を行い、いざというときの立てこもる拠点となる。

が、そんな要塞とも言えないようなちょっと警備のついた程度の建物が相手ではバルカが率いる騎兵団による速攻であっという間に攻め落としてしまったのだ。

気がついたときにはガーネスの館はバルカ軍によって占領されたあとだった。

そして、そんな俺の行動をみた周りの騎士家も動いた。

いよいよバルカがその本性を表して襲ってきたのだと勘違いしたのだ。

向かってくるガーネス領に隣接する騎士家の軍に対して、バルカは交渉の窓口すらまともに持っていなかった。

なので仕方がないが、武力で対応することにした。

躊躇すればこちらが痛みを負うことになる。

こうして、バルカ軍はまたたく間にガーネス家のほか3つの騎士家を打倒して18の村を奪う大戦果を得たのだった。

どうしてこうなった!

なんもかんもラフィンが悪い。

俺は悪くねえ!

俺の心の叫びは無情にも誰の心にも響かず事態だけが進行していったのだった。