軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

使役獣活用法

「あ、あの、少しいいですか、アルス様」

「どうしたんだ、ビリー? もしかして、【産卵】持ちの使役獣がついにできたのか?」

「す、すいません。まだできていません……」

「そ、そうか。そんな気まずそうな顔するなよ、ビリー。別に責めているわけじゃないんだから」

「す、すいません。お気遣いありがとうございます、アルス様」

「で、【産卵】持ちの話じゃないっていうなら、どんなようなんだ?」

「は、はい。実はその、相談したいことがありまして。実験で産まれた使役獣たちはどうしたらいいのでしょうか?」

「どういうこと? 産まれた使役獣?」

「は、はい。アルス様に命じられて【産卵】を持つ使役獣を作るために実験していますよね。その実験で使役獣の卵から孵化した使役獣たちはどうすればいいのですか?」

「そんなにいるのか。ちょっと待ってくれ、ビリー。一度、その使役獣たちを見てみたい。案内してくれないか?」

カイルダムの工事を終えてバルカ城へと戻ってきたとき、俺はビリーに話しかけられた。

なんでも、俺がビリーに与えた仕事で孵化してしまった使役獣たちの処遇に困っていたようだ。

まあ、たしかにそのへんのことはあまり考えていなかった。

普通は使役獣というのは貴重なものなのだが、今回の実験では魔獣型以外は研究的な価値が高くはない。

が、かといってビリーが勝手に処分したり、売り払うということもできない。

あくまでも今回の実験では俺が金を出して使役獣を孵化させているのだから、俺のものとなるのだ。

見たこともないようなステンドグラスで彩られた城の主である俺の許可なく使役獣たちをどうこうすることもできず、かといって自分で飼育するわけにもいかない。

ようやくダム工事から帰ってきた俺に泣きついてきたというわけである。

ビリーが言うにはいまだに【産卵】という魔法を持つ使役獣は作れていないようだ。

が、それなりの種類の使役獣が生産できているという。

面白そうなので、俺はビリーと一緒にその使役獣の厩舎となっている場所まで行くことにしたのだった。

※ ※ ※

「すごいな。こんなに孵化したのか……」

「は、はい。【魔力注入】を使っても孵化しなかった魔力を除外して、いろんなパターンで魔力配合をしてみました。数だけは増えたのですが、肝心の魔獣型はまだいないのですが……」

「俺の魔力をベースにすれば魔獣型が産まれやすいかもっていう仮説をたててたろ? 魔獣型が産まれていないなら間違っているってことになるんじゃないか?」

「正直、もっとデータがほしいです。け、けれど、カイル様が言うにはアルス様の魔力をベースとした個体のほうが魔力量の多い傾向にあるとのことです。魔力量の多さが魔獣型になるかどうかに関わっているかをこれからは調べていこうと思っています」

「ふーむ。先は長そうだな」

「す、すいません」

「いいよ。で、こいつらはその話でいうと全部魔法を持たない使役獣ってことだな。騎乗できそうなやつもいるけど、どう考えても乗れないようなやつも多いな」

「は、はい。今回の実験では【産卵】の魔法を持つ魔獣型を作ることを目的にしています。な、なので、騎乗できるかどうかは重要度が低くて、その、どうしても騎乗できないタイプが多くなってしまって……」

ああ、なるほど。

ビリーは金の心配もしてくれているのか。

実験が成功していなくとも騎乗型の使役獣であれば商人などに販売可能だ。

別に荷物を運ぶという目的であれば騎士のように騎乗して得物を振り回せるかどうかも関係ない。

荷物を運ぶ力さえあれば移動速度がそこまで速い必要も別にないのだ。

が、現状ではどうしても騎乗できない使役獣もたくさん産まれる。

となると、実験で産まれた使役獣を販売して金銭的な負担を減らすこともできないということになる。

実家が貧乏な農家であるビリーにとって、ここまで金のかかることに関わることなど今までなかっただろうし、ものすごく不安だったのだろう。

さすがに実験で孵化した使役獣が売ることができないということでビリーを罰したりするつもりは毛頭ない。

が、確かにこのペースで使役獣が次々と増えるということになれば、少しでもいいから何らかの活用法があったほうがいいかもしれない。

「でも、どうするかな。さすがに騎乗タイプ以外は売れないよな」

「か、変わった姿をした使役獣なら観賞用として買う人もいると聞いたことはあります、アルス様」

「うーん、でもなー。そんな奇特な買い手を探すのも面倒だしな。それに今後も実験で孵化してくる使役獣のことを考えたら、もうちょっといいい活用法がほしいかな。……って、観賞用? 使役獣を見るってことか?」

「え、はい。そうですけれど、どうかしましたか、アルス様?」

「ああ、ちょっと思いついたことがある。ちょっと何頭か使役獣を連れて行くけど、いいな?」

「は、はい。もちろんです」

ビリーとの会話で思いついた使役獣の活用法があった。

俺は厩舎にいる使役獣で使えそうなものを選んで城を出ていったのだった。

※ ※ ※

「ありがとう、アルスくん。これなら今までよりももっと盛り上がると思うわ」

「でしょ? 我ながらいい活用法を思いついたと思うんだ。よろしく頼むよ、エイラ姉さん」

実験で孵化した使役獣を引き連れて俺がやってきたのは、バルカニアの北西区にある遊戯エリアだった。

ここにはヴァルキリーを用いたレース場とそれに付随した賭博場が併設されており、ヘクター兄さんの奥さんであるエイラ姉さんが取り仕切っている。

俺はこのレース場で使役獣たちを使うことにしたのだ。

実は、鳴り物入りでオープンしたこの遊戯エリアだが、俺が目玉として用意したヴァルキリーのレース場の人気は当初こそすごかったものの、最近は少しずつだが人気に陰りが見え始めていた。

というのも、ヴァルキリーはすべての個体の身体能力が一緒だという致命的な問題があったからだ。

一応ヴァルキリーに乗せる騎手を変えてレースをしているのだが、どのヴァルキリーも勝つ可能性はほとんど同じであり、結局のところ運による要素しかなかったのだ。

それなら別にくじを引くのと同じであり、勝敗を予想するという面白さはあまりない。

この遊びは何度かやれば飽きる可能性の高いものでしかなかったのだ。

そこで、ここにヴァルキリー以外の使役獣を投入することにした。

ビリーから預かってきた使役獣の中からそれなりに走りそうな使役獣たちを連れてきた。

全く種類の違う使役獣たちで競争すれば、身体能力が全く同じであるヴァルキリーだけのレースよりも予想外の結果をもたらしドラマを生む可能性がある。

そうすればレース結果に賭ける楽しみの他にも、予想する楽しみもできるだろう。

将来的にはリーグ制みたいにして、成績の上位中位下位などを別グループに分けてより実力が拮抗するレースをやってみてもいいかもしれない。

入れ替え戦みたいなものがあればよりドラマチックになるのではないだろうか。

こうして、バルカニアのレース場は様々な姿かたちをした使役獣がしのぎを削る唯一無二の場所として新たなスタートを切り始めたのだった。