軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

人材派遣業

「おい、アルス。アインラッド砦への派遣の話を聞いたぞ。もちろん、俺が行くぞ」

「耳が早いな、バイト兄。でも、アインラッド砦へはピーチャ殿と知り合いのバルガスを派遣しようかと考えていたんだけど」

「なに言ってんだよ、アルス。俺が行くに決まってんだろ。許可してくれるまでここを動かないからな」

「どうしたんだよ、バイト兄。今日はえらく強情だな。なんかあったのか?」

「なんかあったか、じゃねえだろうが。お前もカイルも自分の家を建てたんだぞ。兄貴としての威厳がなくなるだろうが。俺もここらで男を見せるときなんだよ」

「バイト兄は十分活躍してくれていると思うんだけどな。ていうか、別にアインラッド砦には戦いに行くわけじゃないからな。ちゃんとわかってるのか、バイト兄?」

「そりゃ建前なんだろ? レンガをつくってきておしまいってわけにはいかないんじゃないのか?」

「間違っちゃいないけど、戦うのがメインではないってことさ。まあ、いいか。ちょっと説明しておこうかな」

俺がピーチャと話したバルカ姓の持ち主の派遣をどこかで聞きつけてきたのだろう。

バイト兄が自分が行くと言って名乗り出てきた。

が、どうやら戦う気まんまんのようだ。

アインラッド砦からのバルカへの協力依頼はピーチャの判断によるものだ。

去年は戦闘後の損害を癒やすためにおとなしかったウルク家が動く可能性を考えてのものだろう。

なので、バイト兄の言う通り戦闘になる可能性がないわけではない。

が、俺はこの話を聞いて新たに金儲けをすることにしたのだ。

それはバルカからの人材派遣というものだ。

今回のピーチャへの派遣はその第一歩となる。

そして、この派遣の目的は戦闘行為のためだけのものではない。

つまり、戦闘以外の行為に対しても派遣を受け付けるというもの。

すなわち、土地の改良を請け負うことにしようと考えたのだ。

俺が生まれ育ったバルカ村も大概ひどかったが、前回戦に動員されて移動しながら他の土地をみたときに感じたこと。

それは、フォンターナ領内はもっと開発できるというものだった。

まだ使われていない土地があるうえに、今農地として使っている土地ももっと良くすることが可能だと思ったのだ。

バルカの魔法を使えるものを各地へと派遣して【整地】や【土壌改良】、あるいは【道路敷設】などをすればフォンターナ領内は更に発展する可能性がある。

少なくとも、食料の増産は間違いなくできるだろう。

なので、希望するもののところへとバルカの魔法持ちを派遣して、有料で土地開発をしようと思ったのだ。

俺も儲かるうえに、そこの土地を持つ者も間違いなく収益が上がる。

そうすればフォンターナ領自体がさらに活気づいていくことだろう。

以前からバルカ騎士領だけが儲かってもいずれ限界に来る可能性が高いことを考えていた。

が、自分の領地以外は勝手に触ることはできない。

たとえ、収穫量が上がるからといって無許可で土地を改造していけば必ず揉めるだろう。

そこで、今回のピーチャの提案に目をつけたのだ。

アインラッド砦の周囲の村は前回少しだが農地の改良をしている。

ピーチャが許可さえ出せば、土地の住人も嫌がらずに農地へと手を出すこともできるだろう。

その成果が数字となって現れれば他の領地持ちの騎士からも派遣を要請する声がかかるのではないかと考えたのだ。

「ようするに、お前はアインラッドに行く連中に農地を改良したり、道路を作る仕事をしろって言いたいんだよな、アルス?」

「そうだね。まあ、けど、アインラッドに行くなら当然自衛して戦える必要もあるけどね。何があるかわかんないし」

「よし、お前の言いたいことはわかった。向こうもそのことについては同意してるんだろ?」

「そうだな。ピーチャ殿とは話をつけている。基本はレンガ造りや周辺の村の農地改良と、指定された道路を作ることになるかな」

「よっしゃ。向こうの言うことを聞いてりゃいいってことだな。簡単じゃねえか」

「ちょっと待ってよ、バイト兄。確かに道路造りなんかは向こうの意見が重要だけど、言いなりにはなるなよ。あくまでも派遣する理由はレンガ造りとそれに付随しての土地改良でってことだ。もし仮に戦闘になって危険そうなら引き上げてきてほしい」

「はあ? 戦わないのか?」

「別に戦ってもいいけど、あくまでも危険なら自分たちの判断で撤退してもいいってことだよ。バイト兄の主はバルカ家の当主である俺だからな。向こうにバイト兄に対しての命令権なんかは一切ない。バルカの人間に無駄な被害が出ないように行動してほしいってことだ」

「……なるほどな」

「それと派遣の責任者になるなら交渉術も身に着けておいてよ、バイト兄。一応、事前に料金を決めていくことになるけど、向こうについたらあとであれもやってほしい、こっちも頼むっていろんなことを言ってくると思うんだよ。その時は、手間と危険度なんかも考えて適切な金額で引き受ける必要がある。こっちの能力を安売りしたりただでやると、次からもそれを要求されるようになるからな」

「……な、なんか思った以上に大変そうなんだな、アルス。俺、そういう面倒くさいの苦手なんだけど」

「いや、必ずやってもらうぞ、バイト兄。意外といい機会かもしれないな。バイト兄にはいい経験になるかもしれないぞ」

とは言え、いきなりバイト兄に全部を任せるのは厳しいか。

そもそも、今までしたことのないはじめての試みの派遣となるのだ。

適正な金額なんて俺も正直わからない。

となるとそのへんのサポートができるやつと一緒に行ってもらうことにしよう。

「よし、バイト兄にはリオンについていってもらうことにしよう。前も一緒に行動したこともあるし安心できるだろ?」

「リオンか。あいつがいればなんとかなりそうだな。よし、わかったぜ、アルス。俺に任せてくれ」

「ほんと、無理だけはしないでくれよ、バイト兄。リオンの言うことはちゃんと聞いてくれよな」

「わかってんよ。大丈夫だって」

若干不安があるものの、こうして俺はバルカの人材派遣をバイト兄へと一任することにした。

まあ、どうせ出発するのは雪が溶けてからになるだろう。

それまでにみんなと協力してだいたいの値段設定くらいを決めておこう。

こうして、新しい一年が始まりを告げたのだった。