軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

視察

「よしよし、順調に育っているようだな」

「ああ、きちんと世話してくれてるよ、大将。でも、いいのか? 前はここで冬でも食べ物育ててたのに」

「いいんだよ、バルガス。今年のバルカでは十分な収穫があったからな。冬を越せるだけの十分な食料は確保してある。それよりはもっとここのガラス温室を有効活用しておきたかったからな」

「まあ、大将がいいってんなら別に問題ないけどよ。わざわざこの温室で薬草育てる意味なんてあるのか?」

「そりゃ、お前、温室っていったら薬草園だろ。それにこれから薬の材料が必要になるからな。きちんと薬を作れる用意だけは今のうちからしておかないと」

研究棟から出た俺はその後バルガスと一緒に隣村であるリンダ村へとやってきていた。

この村は俺が川から引いてきた温泉を利用して造ったガラス温室がある。

このガラス温室で俺は薬草を育てることにしたのだ。

去年はほとんど思いつきで温泉の湯を利用するためだけに温室を作り、冬の間はハツカなどをつくってフォンターナの街へと売りに行っていた。

だが、それは本意ではない。

あくまでもとりあえず育てていただけなのだ。

その後、俺が戦に出ている間にもリンダ村の人には温室の管理を頼んでいた。

が、もともとが辺鄙な場所の村なだけに、温室を利用してまで作らなければならないようなものは村人も思いつかなかったようだ。

そのため、今年も冬でも温室内で育ちやすい作物を作るだけになるかと思われていた。

だが、その考えを改めてガラス温室は薬草園とすることにした。

それはバルカにやってきた医者のミームの存在が大きい。

ミームは普通の医者ではなく、各地を放浪してきた経験を持つ医者だ。

そのため、いろんな土地で薬となる材料の薬草などについて詳しく知っていたのだ。

さらに、よく使うものや、手に入りにくい貴重なものは種などの状態で自分で持って旅をしていたようだ。

つまり、ミームのおかげでバルカにはこれまで近隣ではあまり見られなかった薬草まで持ち込まれることになったのだった。

その薬草の存在を知った瞬間、俺は飛びついた。

わざわざ温室をつくっておいてハツカを育てる気はなかったが、かといって代案もなかったところにもたらされた薬草。

温室にはピッタリではないかと思ったのだ。

ちなみにだが、温室で薬草を育てる必要性を聞かれてもうまく答えられないのだが。

気温・湿度が安定しているのがいいのだろうか。

割と適当につくったガラス温室の条件にピッタリ合う薬草が多ければよいのだが。

「まあ、しばらくは薬草を安定して育てるノウハウ作りからだろうな。ミームに聞いた注意点もここに書いてあるから、その点に注意して育てるようにバルガスからも言っておいてくれ」

「わかった。まあ、育てた薬草を大将が使うってんなら責任重大だしな。きっちりやるように言っておいてやるから安心してくれ」

「ありがとう、バルガス。頼んだぞ」

新しく薬草を育て始めたガラス温室を視察しながら、俺はバルガスに指示出しをしていったのだった。

※ ※ ※

「これが温泉ですか。お湯で体を清めるところというのは初めてです」

「だろうね。生活魔法で体を清潔に保てるから入る意味があるのかって言われると困るんだけど、俺は好きなんだよ。リリーナも気に入ってくれると嬉しいな」

「はい、わかりました。頑張って入ってみますね、アルス様」

「あはは、そんなに気合い入れて入るようなもんじゃないけどね。リラックスして入るのが一番だよ、リリーナ」

「わ、わかりました。リラックスですね、アルス様」

隣村のガラス温室を視察に行こうと考えたとき、ついでに温泉にも入っていこうと考えた。

せっかく温泉宿まで造ったのだ。

利用しない手はないだろう。

そこで、ふと他の誰かも温泉に誘ってみようと思ったのだ。

裸の付き合いというやつがある。

親睦を深めるためにも人を誘って一風呂浴びれば楽しいのではないか。

そう思って適当な人に声をかけたのだ。

だが、最初に声をかけたカイルに言われたのだ。

リリーナを誘ってはどうか、と。

確かに言われてみれば結婚してから仕事に戦にと忙しくてそんなに一緒に何かをした記憶もない。

せっかくの機会なのでここらで一つ、家族サービスをしようではないか。

そう思ってリリーナを誘うと満面の笑みで了承してくれた。

誘って正解だったのだろう。

「全く、アルス様、これはどういうことですの。リリーナ様をお誘いしておいてこのような庶民の建物につれてくるなんてあんまりですわ」

「う、悪かったって、クラリス。ここの温泉宿は俺が庶民の宿を建てただけで、貴族向けではなかったのを忘れてたんだよ」

「気をつけていただきたいですわ、アルス様。アルス様もリリーナ様もこのバルカ騎士領には無くてはならない人なのですよ。このような建物に泊まりにきて何かあったらどうするのですか」

「そうだな。防犯性もあんまりないか。この温泉宿も建て替えたほうがいいかもな。お金持っている商人向けの高級宿っぽいやつとかにして」

「そんなことして元が取れるのか、大将? 言っちゃなんだがこの温泉ってのは大将みたいに好きな奴らがたまに入りにくるぐらいなもんだぜ。商人連中がわざわざ入りに来るかね」

「ブランド化すればチャンスはあるかもな。まあ、俺は今後も入りに来たいからもうちょっと整備したほうがいいのは確かだろ」

一緒に隣村へとやってきたリリーナは普通に喜んでくれていたが、側付きであるクラリスはお怒りだった。

まあ、それもしょうがないだろう。

俺が造った温泉宿の建物は普通の宿屋を再現しただけの建物だったのだから。

なんといっても貧相である。

一部屋の広さ自体が狭いのでリリーナを連れてくるべき場所でないと言われれば返す言葉もなかった。

だが、一応バルガスたちを護衛に連れてきているので、この村でなにかあるということもないだろう。

去年、俺が造った温泉は宿の建物こそ一緒ではあったが、少し村人によって手を入れられていたようだ。

地面を掘って造ったようなプールのような温泉の浴槽のそばに簡易な建物が作られている。

どうやらそこで着替えなどを置いておけるようにしているようだ。

俺はさっそくそこで服を脱いで浴槽へと向かった。

俺が造った温泉だが男女別にはしていない。

今後はどうなるかはわからないが、現状では混浴がひとつだけという状態だ。

そして、その風呂は露天風呂の状態になっている。

俺が入浴中は見えない位置にバルガスや連れてきた護衛の兵を配置しておくことにした。

そして、俺のあとから小屋で服を脱いだリリーナが出て浴槽へとやってきた。

しかも、一緒に側付きのクラリスもいる。

リリーナはフォンターナの街にいるときには読書が趣味だったと言うだけあり、ほとんど日焼けしておらず透き通るような肌のスレンダーな体をしており、一種の芸術品のような美しさがある。

それに対してクラリスはリリーナよりも出るところが出ており色気のある体つきをしていた。

このふたりはどちらもとびきりの美人さんなので眼福どころの話ではない。

しかも、ふたりとも温泉などといったものは初めてなので、俺の言ったとおり真っ裸で浴槽にやってきて、付き添いのクラリスまでもが何も手にしていないのだ。

この光景を見て、俺は異世界に転生したことを感謝したのだった。