軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ビリー

今回の卵孵化計画で重要な役割を与えられたビリーという少年。

彼は学校に通ってはいたものの満足に文字もかけず計算もできなかった。

にもかかわらずカイルは自分の魔法をビリーへと授けることにオッケーを出した。

これはビリー本人からの強い希望もあったのだが、半分は実験的な意味合いもあったのだろう。

文字も数字も理解していない人間にカイルの魔法を授けた場合どうなるのかを確認する。

おそらくカイル自身もそのような考えからビリーに名付けを行っていた。

だが、ビリーに対する思い入れもあったのだろう。

彼はよく言えば個性的、悪く言えば変わり者だったこともある。

ようするにビリーは周りから見ると、この社会でまともに生きていけないだろうなと思わせる人間だったのだ。

ビリーは小柄で力が全然ない。

畑仕事もろくにこなせないほど線の細い少年だった。

しかも、実家では長男ではなく末っ子であり、家を継ぐ事もできない。

彼がこの先生きていくには戦場で手柄を立てるなりして、なんとか自分の土地を持たなければならないのだ。

おそらく難しいだろうというのが周囲の一致した見解だった。

さらに学校に通うまでは家の手伝いですら役立たずだったのだ。

畑の手入れを頼んだら、地べたを這う虫をじっと見つめて時を過ごすありさまで無駄飯ぐらいと言わざるを得なかった。

俺が学校をつくって昼飯を提供するようになったことを聞いた家族は畑の手伝いはもういいから学校へ通えと送り出したのだった。

そんなビリーがカイルの目に止まったのはその集中力からだった。

どうやらビリーは一つのことに熱中するとそれに入れ込むように周囲の音すらも遮断して集中する。

学校に通い始めたビリーがハマったのは俺がつくって置いておいた知育グッズだったのだ。

前世の記憶から思い出した知恵の輪やパズル、ブロックなどのおもちゃを俺は学校に置いていたのだ。

学校の目的としては文字を書いたり計算ができるようになったりすることではあるが、それはあくまでも最終的なものだった。

まずは学校に通う人数を増やそうと思い、おもちゃ系統もいろいろと用意しておいたのだ。

ビリーはこの玩具がたいそうお気に入りだったようで、学校へは最初に来て最後に帰るくらい長時間いるのにずっとそれで遊んでいたようだ。

カイルはそれをみていたこともあり、ちょっとした時間にビリーと話をしたりもしていたようだ。

こうして、カイルともそれなりの関係を築いていたおりに、リード家をカイルがたてて魔法を授けることになった。

ビリー自身も自分が農業や戦働きに向いていないことがわかっていたのだろう。

どうしてもと頼み込む形でカイルから名付けを受けることになったのだった。

「で、そのビリーは名付けを受けてからはちゃんと勉強している、と」

「うん、頑張ってるみたいだよ。ただ、本の筆写はあんまり好きじゃないみたい。他の仕事があればって思ってたところなんだ」

「まあ、パズルが好きなら配合比の組み合わせもできるか……? 熱中さえしてくれれば仕事をしそうではあるかな」

「大丈夫だよ、アルス兄さん。ボクもちゃんとサポートするから」

「わかった。ビリーのことはよく知らないけど、俺はカイルを信じるよ。うまくいくことを祈ろう」

こうして、ビリーにはバルカ城の一室を研究所として貸し与えて、卵の管理を任せることにしたのだった。

※ ※ ※

「で、どうだ、ビリー。研究結果は?」

「あ、はい。これが孵化した卵の一覧です、アルス様」

「ああ、ちゃんと表をつくって記録をとってるんだな。アドバイスしたように、文章で書くだけよりも表にしたほうがわかりやすいだろ?」

「あ、はい、そうですね。わかりやすいと思います、はい」

「で、肝心の研究具合は……、やっぱり【産卵】持ちは難しそうかな」

「あ、はい。現状では難しいと思います。そもそも使役獣の卵は魔獣型として孵化する確率自体がかなり低いようなので」

「うーん、そうなると自分で使役獣の卵を孵化するのは難しいか。やっぱ、本家の【産卵】持ちをどうにかして手に入れる方法を考えたほうがいいのかな」

「あ、はい、アルス様。でも、もう少し時間があればなんとかなるかもしれません」

「え、それは本当か、ビリー。別にこの研究に失敗したからってかかった費用を請求するようなことはないんだぞ」

「そ、それは困ります、アルス様。ボクの家ではここの卵一つの金額も払えませんよ」

「だから、そんなことはしないって。で、さっきのことは本当なのか? なんとかできるかもってのは」

「あ、はい。今はデータ不足です。データが揃えばもう少し狙った形質の使役獣を孵化させることができるようになるかもしれませんから」

「……ちなみにどんなデータをとってるんだ? 狙った形質の使役獣なんてほんとに作れるのかよ」

「使役獣は吸収した魔力によって形質がかわります。それぞれの人の魔力にはどんな姿の使役獣が孵化するかのタイプがあるような気がします。それを洗い出していけば、可能性はあるかなと」

「つまり、騎竜を孵化させるやつの魔力は他の人の魔力と配合しても騎竜の特徴が出やすい、とかそんな感じの法則があるのか?」

「あ、はい。まあ、大雑把に言えばそんな感じです。もっとデータが揃わないとなんとも言えませんが」

「ふーむ、そうなると【産卵】持ちの使役獣を作るなら、魔法が使える魔獣型を孵化する魔力をベースに配合する必要があることになるのか。こう言ったら何だけど、そんな都合よく魔法を使う使役獣が孵化するもんかな?」

「え?」

「ん? 何だよ、ビリー。俺、なにか変なこと言ったか?」

「あ、はい。あの、アルス様の魔力から孵化するヴァルキリーは魔法を使う魔獣型です。なので、アルス様の魔力をベースにすることになると思いますよ?」

「うん? ああ、なんか勘違いしてるんじゃないかな、ビリーは。ヴァルキリーは純粋な意味で魔法を使う魔獣型じゃないぞ。ここだけの話、俺が名付けして魔法を授けただけで、普通の騎乗できるタイプの使役獣だ。魔獣型だと思って期待してたんなら悪いな」

「え、いえ、ヴァルキリーは間違いなく魔獣型ですよ、アルス様。アルス様が名付けをしているとか関係なく生まれながらに魔法を使える魔獣型です」

え?

いや、そんなはずないだろ。

だって、ヴァルキリーは俺が名付けをしてから魔法を使えるようになったんだ。

名付けをしていなかったら魔法を使うことはないただの使役獣のはずだ。

だが、確信を持って発言するビリーの言葉を受けて、俺は驚きからなんと言っていいかわからず固まってしまったのだった。