軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

牧場エリア

「そういえば、ヤギはどうなったんだっけ?」

「アルス兄さん、思いつきでいろいろ試すのはいいけど、もう少し結果を予想してから行動してよ。大変だったんだよ、あのヤギのことで」

「ごめんごめん。カイルが怒るなんて珍しいな」

「怒りたくもなるよ。家の建物の上にジャンプしてるって苦情が多かったんだからね」

「そいつは大変だったな。でも、今はその苦情も来ていないんだろ。どうしたんだ?」

「バルカニアの街中では面倒事が多くなったからね。内壁の中の中央区に全頭引き入れたんだよ。ヴァルキリーの厩舎に一緒に入れてる」

「ヴァルキリーの厩舎に? 大丈夫なのか?」

「うん。どうもヤギが【跳躍】しようとするとヴァルキリーたちは分かるみたい。むやみに飛ぼうとしたヤギにヴァルキリーたちが【散弾】を放ってたみたいだね」

「え、【散弾】をぶっ放してたの? もしかしてヤギは全部死んだから問題解決だとかいわないよな?」

「そんなわけないでしょ。ちゃんとヴァルキリーたちも気は使ってたみたい。けど、何度も【散弾】で威嚇射撃されていたからか、おとなしくしていれば何もされないのがわかったからか、ヴァルキリーと一緒にいるときにはヤギたちも静かにしているみたいだよ」

「……ようするにヴァルキリーがヤギを従えたってことか? 上位存在に立つみたいな感じで」

どうやら、バルカニアの街に送ったヤギたちはヴァルキリーと一緒であればおとなしく生活を送っているらしい。

無駄にピョンピョン跳ねるのはさすがに街中では大きな問題となっていたようで、助かったといえば助かった。

ヤギ自体はおとなしい性格をしているのだが、なにせそれなりの体重のある獣なのだ。

そんな動物が数mほどの高さへと跳躍し、地面に着地する。

そのタイミングで人間が踏み潰されないとは誰にも言えないのだ。

俺はこの事故の可能性についてまったく考えていなかった。

どうやら、この最悪の事態は運良く起こっておらず、単なる街の住人からの苦情レベルで止まっていたらしい。

もし、ヤギによって人身事故が起こっていたら面倒だったかもしれない。

「でも、これからどうするの、アルス兄さん。ヤギを育てるつもりなんでしょ?」

「ん? そのつもりだけど、なんかまずいか? ヴァルキリーと一緒なら育てられそうなんだろ?」

「数が少ないうちはそうだけど、増えてきたらどうするのさ。というか、バルカ城がある中央区でわざわざ獣を飼うのもどうかとは思うけど」

「そう言われるとそうだな。……よし、これを機会にまた開拓でもするか。なんだかんだで全然開拓していなかったしな」

確かにカイルの言う通り、領地の仕事をするべき場所である中央区にヤギを増やしていくわけにもいかないだろう。

ならば、牧場みたいな場所をつくろう。

ヤギが逃げないように壁で囲った飼育専用の場所を作れば、住人に対する被害も出ないだろう。

そう考えた俺は久しぶりにバルカニアの北に広がる森を開拓していくことにしたのだった。

※ ※ ※

もともと、フォンターナの街の北には森が広がっていた。

そこを開拓しようと努力してできた村のひとつがバルカ村という俺が生まれたところだった。

しかし、この森は危険な生き物が住んでいることもあり、一度切り開いた場所も再び森に侵食されるようにして、なんとか維持するだけで精一杯という状況に陥っていた。

その状況を変えたのが何を隠そうこの俺だ。

今でもまだ子供ではあるが、更に幼いときから独自の魔法を駆使して森を切り開いていき、土地を広げていった。

おかげでその土地を治める貴族とも敵対することにもつながったわけだが、まあそれはいいだろう。

結果として広大な土地を手に入れることに成功し、バルカニアという壁に囲まれた城塞都市を作り上げるに至ったのだ。

一辺4kmほどの壁に囲まれた大きな街。

それが俺の住むバルカニアだ。

だが、当時俺が開拓したのは4km四方の土地ではない。

あくまでも開拓した土地の中に一辺4kmという壁を建てたに過ぎないのだ。

つまり、壁の外には更に数kmほどの【整地】された土地が存在するのだ。

このバルカニアという壁に囲まれた外の土地は俺のものではあるが利用していない。

何故かと言うと森から出てくる大猪を仕留めるための土地となっているからだ。

森から出てきた大猪は一般人では傷をつけることすら困難で、しかも、畑の作物を根こそぎ食い尽くしてしまいかねない。

かつて切り開かれた土地がこいつらのおかげで減ってしまったくらいだ。

だが、今はヴァルキリーに騎乗したバルカ騎兵によってその大猪は発見しだい仕留めることに成功している。

この土地を更にもう少し広げて新たに壁をつくって牧場となる場所を作る。

実はこの作業は俺がやらなければあまり進まなかったりする。

しっかりと大地に根を張る木々を俺は魔法で地面の土をゆるくして、根っこごと抜き取ってしまう手段があるからだ。

もし俺のように魔法で開拓できない場合には斧を使って一本ずつ木を切り、その切り株の周りの土を掘ってから、切り株へとロープをかけて引っ張って根っこを抜かなければならない。

【整地】という魔法があれば切り株や岩もまとめて地面を均すこともできるが、それでも木を切るための時間がかかる。

簡単に開拓というが、俺以外がそれを実行するのは思った以上に重労働で時間がかかるものなのだ。

しかし、俺はこの作業をかなり速い速度でこなしていった。

俺の魔法と多数のヴァルキリーの存在が大きいのだろう。

俺が根っこから抜き取った木を、ヴァルキリーたちが引っ張ってバルカニアへと運び込んでいく。

次から次へと木を倒していき、その後に地面に【整地】を行う。

そして、ある程度土地が広がったら壁で囲んでいった。

こうして、バルカニアの北側には新たに拡張された壁で囲まれた牧場区が出来上がったのだった。

限られた人間しか入ることを許されないヴァルキリーとヤギの楽園が出来上がったのだった。