軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

使役獣

「おう、坊主。約束通りの数を揃えておいてくれたみたいだな。助かるよ」

俺が魔法で作り上げたレンガを買い取っていった行商人。

彼がいうには、今レンガ市場が熱いらしい。

あればあるだけ買い取るぞ、と言ってきたのだった。

俺の中にあった高級食器を量産してウハウハという計画があっという間に消えさったこともあり、「レンガは今ならいくらでも買い取る」と豪語する行商人からせめて一泡吹かせてやりたいと考えた。

なので「今度来たときはこの数倍、いや十倍の数のレンガを用意しておいてやる」と言っておいたのだ。

どうやらこれまで真面目にサンダルを納品していたこともあるためか、子供の俺の言葉をまともに取り合わないなどということもなく、行商人側もしっかりと準備してきていたようだ。

レンガというそれなりに重量のある品を持ち、移動するための運搬手段を確保して再び村へとやってきていたのだ。

「なんだこいつ……。バケモンじゃねえか……」

俺は行商人が用意してきた運搬手段のそいつを見て思わずつぶやいてしまった。

重たいレンガを人が背中に背負って運ぶようなことはさすがにできない。

そこで行商人はいつもよりも大きな荷車を持ってきていたのだ。

が、その荷車を動かすのは人間でもなければ馬やロバでもない。

ギョロリと釣り上がった目を光らせ、全身には鱗をまとい、手と足の先には鋭い爪を持つ二足歩行の生き物が荷車に繋がれていたのである。

その姿は大きなトカゲ、あるいはワニのようなものを後ろ足二本で立たせたかのような感じだった。

眼と眼があったかと思うとそいつが鼻よりも前へと突き出した口を開け、ギザギザの大きな歯が見えている。

万が一にも噛まれでもしたら死んでしまうだろう。

こんな生物は間違いなく前世にはいなかった。

「はは、坊主は騎竜を見るのは初めてか。どうだ、かっこいいだろう。レンガを大量に用意してくれるっつう話だったからな。力の強いコイツを連れてきたってわけさ」

「騎竜? ってことは、こいつは竜なのか?」

「ん? いや、本物の竜とは別だそうだぞ。コイツは使役獣の一種だからな」

「使役獣? なにそれ?」

聞き慣れない言葉を聞いたので質問する。

俺が荷車の上に乗り込み、地面にあるレンガを行商人が手にとり渡してくる。

それを受け取って崩れないようにきれいに並べるようにして積み込む手伝いをしながら行商人が使役獣について教えてくれた。

使役獣とはその名が示すとおり、人が使役する生き物である。

が、野生動物を捕まえて使役するというようなものではないらしい。

なぜなら使役獣とは人間が卵から育てるからだ。

使役獣の卵を肌身離さず持っていると、その人が持つ魔力を卵が吸収するらしい。

その吸収した魔力を糧に卵は成長していく。

そして、大きくなった卵から生き物が生まれるのだが、それは生みの親である人に対して非常に従順になるという特性があるらしい。

それだけではない。

使役獣は糧にした魔力によって成長の仕方が違うのだ。

今、目の前にいる使役獣のように二足歩行の爬虫類のようなやつもいれば、全然姿かたちが違うものもいる。

つまりは卵を育てる人によってどんな姿の使役獣が生まれてくるのか、全く違うらしい。

そのため、変わった使役獣や実用性の高い使役獣を育てることができる人は大変重用される。

逆に役に立たない使役獣しか育てられない人も多いらしい。

というか、卵から孵化させられない人のほうが多いという。

騎竜というのは使役獣の中でも人気が高いものらしい。

力も強く頑丈で勇敢さも持ち合わせている。

実はこの世界ではマジモンの竜も存在しているらしい。

圧倒的な実力を持つ竜に似た外見をもつことも人気を押し上げる一因となっているらしい。

ほかにも持久力のある馬型のものや空を飛ぶ鳥型の使役獣なんかも人気が高いそうだ。

「ふーん。じゃあ、この使役獣ってのは買ったら高いんだ?」

「そりゃそうだ。大切な財産って言ってもいいくらいだぞ。言っとくけど、いたずらするんじゃないぞ」

いや、するわけないし。

というか、ものすごくいいことを聞いた。

レンガを売ると言っても今は特需があるからいくらでも買い取るという話だったが、今後もそれが続くかはわからない。

売れるものは複数確保できるようにしておきたいと思っていたのだ。

騎乗できる使役獣、そうでなくとも重たい荷物を運ぶことができるタイプの使役獣はいつでも需要があるというではないか。

人によってどう育つかは全くわからないというが、それは逆にやってみなければ誰にもわからないということ。

ならば俺も使役獣の卵を育ててみたい。

うまく当たりを引ければ大儲け間違いなしだろう。

こうして俺は行商人に使役獣の卵を次来るときに持ってきてもらうように頼んだのだった。

もっとも、その卵の値段がそれまでに稼いだ金額すべてを注ぎ込んでギリギリ足りるかどうかというほどのものだとはその時知るよしもなかったのだが。