軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

小国家群での争乱

小国家群における争乱。

いくつかの小国がバルカ教会がもたらしたエンを禁止することに端を発したその動乱は瞬く間に範囲を広げていった。

自国の税を守るためにエンを禁止するという至極まっとうな発想ではあったが、すでにそのエンは禁止するには影響が大きすぎたからだ。

そして、禁止したことにたいして強く反対する者が多数いたのもこの争乱の特徴だった。

これまでの小国家群では少し変わった特徴というのが見られた。

それは、複数の国が存在しているにもかかわらずに、全体としてみると一種の共同体のような意識が働く傾向があったのだ。

たとえば、小国家群を併呑しようと大国が攻めてきた場合などがそうだろうか。

攻められた小国のみならずに、ほかの小国もがその国を守るために戦うことがよく見られたのだ。

これにより、小国家群は動乱渦巻く地域であり、そして大国からは放置されるに至っている。

そして、それは小国家群内でも同様の働きが見られることがあった。

たとえば、小国の中の一国が強力な力を持ち、他国に攻め入った場合などがそうだろう。

国同士で領地や都市の奪い合いというのはあっても、いくつもの国が一国のもとに統一されなかったのは、それに対抗して連合を組んで戦ってきたからでもある。

一国の力が増した場合、それにたいして複数国が組んで抵抗することによって、小国家群は完全にまとまることなく存在し続けてきたのだ。

なので、今回の俺の動きは完全にその抵抗を受ける行為であったはずだ。

他国に対しても強い影響力を発揮しようとしているのだから、当然だろう。

だが、これまでと大きく違ったのは俺が直接支配ではなく、間接的な支配を志向した点だろうか。

俺個人にたいして忠誠を心から誓った者に力を貸す。

それによって複数の小国に影響力を発揮する。

が、その国で実際に政務を行うのはその国の人間だった。

それにあくまでも忠誠心を示せれば、今のところは国のあり方については介入していない。

つまりは、それまでとほぼ同じような独立性があったのだ。

そのために、これまでならば発動していたであろう小国家群全体としての防衛機能にほころびが生じたのだ。

各国が俺という存在を排除するために一致団結しきれなかった。

各小国の中でも、俺に反対せずに、むしろ忠誠を誓って自国の実権を握ろうと考える者が出た。

あるいは、統治者側が反対意見を示そうとも、現地に住む住人たちがそれを受け入れようとしなかったのだ。

こうして、本来あるべき防衛機能は各国の国内の意見が割れるという現象により機能不全に陥ってしまった。

ようするに、内乱が多発したというわけだ。

同時多発的に発生した小国家群での内乱。

そして、俺のもとには各国から次々と人がやってきた。

自分たちの側に手を貸してくれと嘆願しにだ。

もちろん、そいつらは試験を受けることになる。

俺が発動した忠誠紋の魔法陣によって、忠誠心をしっかりと示せない限りはいかに理屈を述べても援助は受けられない。

が、忠誠紋が浮かび上がらなかったとしても特に罰則というものはない。

ならば、どうなるか。

援助に来た者は俺に忠誠心を示せなかった場合、代役をたてることにしたようだ。

俺の紋章がその手に浮かび上がる者が現れるまで自陣営の人間を面会によこしてきたのだ。

そんないい加減なやり方でいいのかと俺自身も思ったが、弾数を増やせば命中するものなのだろう。

何人かは俺に忠誠を示すことに成功し、俺はその国に介入する権利を得た。

「しかし、困ったな。さすがに数が多すぎる。しかも、オリエント国から離れる国ほど結構ドンパチ内乱やり合ってるから、鎮圧に長引きそうだし、どうするかな」

最終的にはほぼすべての小国に介入する大義名分を得たことになるのだが、それはそれでなかなかに大変だった。

おかげで俺の魔力量はさらに伸びたのは間違いないのだが、俺の身は一つしかない。

いくら強力な力を持っていても、一人では多数の国に武力介入し続けるのは大変だったのだ。

それはこの争乱が一般市民を巻き込んだ内乱だったことにあるのだろう。

俺が【流星】などで一撃で決めてはいおしまい、というわけにはいかなかったからだ。

一度は決着したかに思えた場所でいつの間にか再び戦火が広がっている、なんてことが増えてきたのだ。

それに対応するためには各国に強力な部隊を派遣でもしなければならなさそうだが、それはできなかった。

オリエント軍やバルカ傭兵団はそこまでの数が用意できないからだ。

それに、それをしてしまえば俺に忠誠を誓った者の独立性を脅かすことにもなり、親バルカ派が減るかもしれない。

「それなら、ワルキューレやヴァルキリーをあちこちに配置したらどうですか、アルフォンス様?」

「ワルキューレやヴァルキリーの配置? どういうことだ、キク?」

「そのまんまの意味ですけど、たとえばバルカ教会の建物に厩舎でも用意してヴァルキリーをそこそこの数置いておくとかどうでしょうか? そうすれば、アルフォンス様と一緒にバルカ傭兵団の精鋭が各地に急行できるようになるんじゃないかなって思ったんですよ」

「ああ、なるほど。各地に部隊を配置しておくのは難しくても、機動力のあるヴァルキリーさえいれば確かに助かるな。それに、ヴァルキリー自体は兵じゃないしな。他国に配置していても、傭兵部隊の配置ほどには拒否反応を示されないかもしれないもんな」

いずれは、親バルカ派となった国々の間で線路を引いて魔導列車を走らせるつもりだ。

その時には魔導列車に兵を乗せての移動もあり得るだろう。

が、今はまだできない。

ならば、というわけでもないが、現状でできるのは確かにキクの言うとおりヴァルキリーの厩舎を他国にも作ることだった。

以前までならこれもできなかっただろうが、最近はそれなりにヴァルキリーの生産数も増えてきている。

今はまだ新バルカ街のみにしかいないが、それも可能なくらいの数にはなってきていた。

自分の目の届かないところにヴァルキリーを置いておくのは多少の不安もあるが、バルカ教会内であれば大丈夫だろう。

キクの意見を入れて、俺は内乱が頻発するいくつかの小国にたいしてヴァルキリーの厩舎を作っていくことにした。

こうして、小国家群では戦闘があればすぐにヴァルキリーが駆けつけて鎮圧する光景があちこちで見られるようになったのだった。