軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

丘の攻略

「ウォオオオオオオオォォォォォォォォォ」

「うわっ。なんだ今の? どうしたんだ?」

「……アルス様、どうやら我らの陣営がアインラッドの丘を攻略したようですよ」

「本当か? そりゃよかったって言いたいところだけど、リオン、お前が言っていたよりも早いんじゃないか?」

「はい。思った以上に早く攻め落とせましたね。これもアルス様の働きによるものでしょう」

「相手の騎兵を打ち破ったのはそんなに大きかったのか?」

「それもあります。基本的に騎士というのは一般兵が束でかかっても敵いませんからね。初戦で敵の騎士を多数含んだ騎兵団を殲滅したのはものすごい働きですよ」

「でも、その前提があっての上で攻略までの時間を予想していたんじゃなかったのか?」

「そうです。ですが、そのあとのアルス様とバルカの兵たちの働きがこれまたすごいものだと言わざるを得ないと思います。なにせ丘そのものを壁で囲ってしまったのですから。丘の上にて防衛している敵兵は増援の見込みもなく囲まれてしまって、士気が低下していたのでしょう。それゆえに早々と決着がついたのです」

「そう言われても結果的にうまくいっただけって気もするな。完全に逃げ場を封じたから、死ぬまで戦う死兵ってやつにでもなられてたら反対に時間がかかったんじゃないかな」

「なるほど。そういうこともあるかもしれません。まあ、ネズミ一匹通さないほど完全に囲んでいたので、相手の気力が萎えてしまったのでしょうね」

「籠城戦か。やっぱり、負担が大きいよな。ただ、何にせよ丘争奪戦はこれで一段落だ。ようやく一息つけるな」

俺たちバルカ軍がアインラッドの丘の周りを壁で囲い、要塞化した丘の上から敵兵を逃さず、増援に来ようとする外からの部隊をヴァルキリーに騎乗した騎兵隊でひたすら攻撃し続ける日々がようやく終わりを告げようとしていた。

カルロス率いるフォンターナ軍がアインラッドの丘を攻略し、かつて奪われた土地を奪還したのだ。

さすがに何年も前から防衛設備を整えていた丘は攻略するのに一手間かかったようだが、無事に終わった。

みんな喜びに満ちた顔をしている。

だが、俺からすると敵味方ともに大変な戦いだったと思わざるを得ない。

攻撃されている籠城側は来る日も来る日も攻撃され続けて肉体的にも精神的にも参ってしまったことだろう。

降伏して丘を明け渡すしかなくなったとしても仕方がないと思う。

しかし、攻撃側も無傷とはいかない。

防御を固めて弓矢などで迎撃している相手のところに自分から飛び込むように攻撃しにいかなければならないのだ。

絶対に損害が出る。

目の前で倒れていく味方を乗り越えるようにして攻撃をし、その日で丘の砦が落ちなくとも、次の日も、それでも無理なら更に次の日もと攻撃し続けなければならないのだ。

正直なところ、俺が丘攻略に回らなくてもよくなったのはラッキーだった。

いくら魔力で防御力を上げられるとしても自分から攻撃されると分かっているところに突っ込んで行きたくはない。

しかも、隣で自分の知り合いが死ぬところを見ながら突撃するなどやってられない気持ちにしかならないだろう。

他人事のようになるが、自分が攻略側にならなくて本当に良かったと思ってしまう。

ただ、おれと違ってほかのカルロス配下の騎士たちは違ったようだ。

みんな恐ろしいほどにやる気に満ちていた。

その原因は俺だった。

昨年急に現れた俺がレイモンドを打ち破り、フォンターナ領の勢力図を大きく変動させてしまった。

そして、そのレイモンドの後釜にスパッと収まった当主のカルロス。

現在はそのカルロスのもとでフォンターナの地はまとまっている。

だが、権力基盤が完全なものとは言えないカルロスのもとでもっと自分の力を大きくしたいと思っているものも多い。

そして、そのために手っ取り早いのは今回のウルク家との戦いで活躍して手柄をたてて、カルロスに近づくことにある。

もちろん、反対に今までの既得権益を維持するために力を見せようとしているものもいるようだ。

そうした思惑がそれぞれにあり、カルロスからの招集を断らずに戦場まで兵を引き連れてやってきたのだ。

だが、そこで新参者の農民出身騎士である俺が手柄を上げてしまった。

それも、小さな手柄ではなくウルク直系の子供とその配下の老将を騎兵団ごとまとめて倒してしまったのだ。

これには戦に参加しにやってきた騎士たちは驚いたと同時に焦ったはずだ。

一番の武功を持っていかれてしまうと。

それに対抗するにはどうすればいいか。

方法は3つくらいだろう。

ひとつは俺に対して何らかの圧力をかけること。

もうひとつはカルロスに有る事無い事吹き込んで、俺の手柄をなくしてしまうこと。

だが、この2つはどうやら誰もやらなかったようだ。

義理とはいえ今年カルロスの血筋関係者と婚姻関係を結んだ俺に対して下手に手を出すのをためらったのかもしれない。

あるいはカルロスから何かを言われていたのかもしれない。

何が理由かはわからないが、あるいはカルロスが俺をアインラッドの丘攻略戦から外したのが関係しているのかもしれなかった。

騎士たちはこぞって攻略戦に意気込んで参加して、自ら何度も突撃して攻撃していったのだった。

誰もが鬼気迫る顔つきで働いたおかげで想定よりも早く攻略完了となった。

カルロスにはうまく配下たちの手柄を褒めてやって、俺に向けられる対抗心やらを減らしておいてほしい。

「そうだ。攻略が成功したんなら宴くらいするだろう。おっさん、酒の手配でもしといてくれ。フォンターナの兵士は農民含めてみんなが飲めるくらいの量を振る舞おう」

「お、いいな、それ。きっとみんなも喜ぶぞ」

「アルス様はまだお酒は駄目ですよ。他のみんなも飲み過ぎ厳禁ですからね」

「分かっているよ、リオン。なら、宴の間の夜警もこっちで担当するようにしとこうか。父さん、兵の振り分けしといてくれないかな?」

「おう、いいぞ。そのかわり、先に夜警したやつらにはあとで多めに酒をもらうからな」

「わかったよ。じゃ、手配よろしく」

こうして俺のはじめての外征は成功という形で無事に終わった。

俺はこのとき、そう思っていたのだった。