軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

祖王の力

空を滑空する竜の姿。

それが一体だけではなく二体分あることに驚愕する。

いつの間にか、どこかにいた二体目が現れたんだろうか。

もしかして、つがいの相手とかか?

そう思ったのだが、どうやら違ったようだ。

「あれは魔装兵器か。なるほど。精霊化した魔装兵器の姿が白竜のようになったってことみたいだな」

新たに現れた竜の姿をしっかりと確認しなおしてようやくそのことに気が付いた。

純白の白竜とは造形が少し違っていたのだ。

あれはおそらく魔装兵器だ。

ベンジャミンが巨大吸氷石に魔力を通してその中にいた精霊を使役して作り出したものではないだろうか。

超巨大な吸氷石は迷宮核に匹敵する。

その中にいた精霊を魔装兵器で具現化した際に、その姿かたちが竜になったのではないだろうか。

「ようするに、竜っていうのは魔物であり、精霊でもあるって感じなのかもな」

「そうかもしれません。かつて、フォンターナ王国の祖王であるカルロス・ド・フォンターナ様は【氷精召喚】を使用した際に、氷の竜を召喚できたと言われています」

「え、そうなんだ。アイはそれを見たことあるの?」

「いいえ。私が生まれる前に祖王カルロス・ド・フォンターナ様はお亡くなりになられていますので。ですが、アルス・バルカ様の言では、【氷精召喚】の使用者の中では間違いなく一番強い精霊を呼び出していたのはカルロス様であったとのことです」

「へえ。ってことはあの白竜ってのはもしかしたら召喚されてアルス兄さんたちと一緒に戦っていたのかもしれないってことなのか」

あんなのを召喚されたらたまったもんじゃないな。

そういえば、あのアルス兄さんもカルロス様が生きている間はずっと主のために働き続けたそうだ。

今は自分が王になって、天空王国を鎖国して自由気ままに好きなことをしているけど、当時はいろんなことを命令されて動いていたんだろう。

やっぱり竜を使う人が上にいると反抗もできなかったんじゃないだろうか。

ってか、よくそんな人が負けたな。

たしか、呪文を封じられたんだっけ?

「まあ、けどこれでベンの目的はある程度達成できたってことでいいのかな? 巨大吸氷石から力を得て、精霊を使役することができた。その精霊は王級魔装兵と魔装兵器を使うと竜の姿になれる。十分、王として認められるでしょ」

「そうですね。生きて帰還できれば十分に条件を満たすことができるでしょう」

「でもなぁ、ちょっと強すぎるんだよなぁ」

ブリリア魔導国の第一王子ベンジャミン。

次期国王として最有力の人間が竜を使役して凱旋すれば間違いなく王になれるのではないだろうか。

少なくとも表立って反抗してきた連中は力で叩き潰すことができる。

それを見た者は恐れおののいて従うことになると思う。

それだけの力が氷の竜にはあるだろう。

が、それはそれで困る。

強力な王のもとで大国をまとめ上げ、盤石なものにされたら今後どうなるか。

国内が安定してしまえば、次はその力を外に向けることにはならないだろうか。

それが帝国や教国であればいいが、小国家群であるかもしれない。

つまりはオリエント国も狙われる可能性がしっかりとあるわけだ。

ベンとアルという愛称を呼び合う関係でオリエント国は見逃してくれるとか、あるだろうか。

微妙だな。

俺はヴァンデンブルグ家と婚約関係を結んだし、ヴァンデンブルグ家は第一王子派閥ではない。

ベンジャミンの派閥の貴族から敵対派閥の一派だと認識されて強硬姿勢で当たられる可能性もある。

できればベンジャミンが白竜と死闘を繰り広げて、倒せなくともその体の一部を手に入れて、あとはそれを持ち帰るだけでよかったんだけどな。

そうすれば、王としての威光を発揮できるし、ベンジャミンの強さを測ることもできたんだ。

だけど、まさか本当に竜の力を手に入れられるとはな。

ちょっと協力しすぎかもしれない。

「いや、よく見ろ、アルフォンス。白竜相手に押されているぞ」

「え? ああ、ほんとだね、イアン。氷竜のほうが力負けしているのか……」

「おそらくは魔力の消費が激しいのでしょうね。竜を召喚していた祖王カルロス様も召喚維持可能時間はあまり長くなかったようです。ここぞという切り札として使用されていたとか」

「あー、まあそりゃそうか。あんな巨体でさっきからバンバン息吹を放つような精霊を使ってたら、すぐ魔力なんて無くなるよな。人間相手なら一撃で即終了の戦いでも、白竜相手だと力が拮抗する。で、結局人間側の魔力が足りなくなるのか」

そりゃそうか。

そううまくはいかないよな。

ってことは、ベンジャミンのとるべき行動は巨大吸氷石から力を得たらすぐに離脱を試みることだったのだろう。

だが、それも難しい。

雪崩に対処しないといけなかったからだ。

氷竜という規格外の精霊を使役することに成功したベンジャミン。

だが、その力をもってしても竜の持つ力の前には勝てなかった。

雪崩の後に滑空しながら姿を現した二体の竜は、着地後も戦い続け、しかし片方の動きが次第に悪くなってきたことで決着がついた。

ベンジャミンの魔力が尽きたのだろう。

こうして、霊峰という人の生存範囲外での超絶戦闘は幕を下ろした。

「じゃ、ここからは俺の時間か」

なので、動く。

仕事の依頼主であるベンジャミンが白竜相手に戦い、敗北し、生死不明になったことで仕事は終わりだ。

あとは俺が自分のために動くことにする。

俺は騎乗するワルキューレの頭をポンッと叩いて、白竜のほうへと向かって歩を進めさせたのだった。