軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

大怪獣的戦闘

「グルアァ?」

目の前に現れた岩の巨人に白竜が息を吹きかけたら氷の巨人に変化した。

さすがにそれには白竜も驚いたのだろうか。

小首をかしげるように頭を斜めにしてふたたび気の抜けた声を出している。

そんな白竜にたいして巨人たちが動いた。

大きな氷によってできた体を動かして、複数体が同時に白竜のもとへと近づいていく。

動きが滑らかだ。

どの氷の巨人も霊峰という氷と雪が大量にあり、さらには地面には吸氷石まであるこの白竜の住処で走っている。

それまでの岩の巨人のときよりもはるかに動きがいい。

「なんか魔装兵器の動きだけをみると生きているみたいだな」

「はい。ですが、人型であることにはさほどこだわっていないのかもしれません」

「あ、ほんとだ。あれは何か犬っぽいね。っていうか、確かにこんな地形だったら人の姿を真似るよりもほかの動物のほうが戦いやすいかもしれないな」

「あれは【氷精召喚】で見たことのある姿ですね。バイト・バン・バルト様が【氷精召喚】を使用すると狼の姿をした氷精を出現させることができました。それに似ているように見えます」

「……まじか。ってことは、あれは氷の巨人ってだけじゃなくて一種の氷精なのか」

二足歩行しながら白竜のもとへと駆け寄る魔装兵器の後方からは人間以外の姿をした魔装兵器も出現していた。

氷でできた狼などはすでに先頭を走っていた魔装兵器に追い付こうかという速さで追いかけている。

そういえば、【氷精召喚】はこの霊峰のどこかにいる氷精たちを一時的に自分のもとへと連れてくるだけの魔法だったか。

だとすれば、その召喚された氷精たちは現実に実在しているということになる。

王級魔装兵はそれらを真似しているのか、あるいは魔装兵器を氷精そのものに変えているのだろうか。

犬のような狼のような姿をした巨大な氷の生き物。

そのほかにも蛇やカエルのような姿のものまででき始めていた。

中には走っている最中の人型までもが変化し始めている。

戦いながらどの姿がいいのかを考えているということなのだろうか。

やはり、それを見ていると精霊を取り込んだ王級魔装兵は高位の存在になっているのだろう。

多分、魔装兵器の操縦権を握っているのも今は王級魔装兵なんじゃないだろうか。

さすがにいくらベンジャミンが王族であり、豊富な魔力を持っていても、あれほどいろんな姿の魔装兵器を同時に生き物と見間違えるほどの動きをさせられるとは思えないからだ。

そんなことができるのは、【並列処理】という魔法を編み出したカイル兄さんくらいだろう。

きっと、高位精霊である王級魔装兵だからこそ、あれほど多彩な姿のものを動かせているに違いない。

そんな種々の魔装兵器が白竜のもとへとたどり着き、ぶつかり合った。

白竜のきれいな体に氷でできた魔装兵器たちが激突する。

その瞬間、すさまじい音がした。

超重量の物質がぶつかったのだから当然だろう。

「よく見ておけよ、アルフォンス」

「イアン? どうしたんだ?」

「お前も今のような小さな規模での戦いに終始するつもりはないのだろう。だったら、よく見ておけ。あれがお前が今後戦うかもしれない相手だ。俺たちアトモスの戦士は強かったが敗れた。それは世の中には上には上がいるということを意味している。ああいうのに当たっても勝てるようにならなくては、この先生きていけないぞ」

「……ああ、そうだな。分かっているよ、イアン」

目の前で繰り広げられる戦い。

それは、尋常ならざるものであった。

次々と姿を変える魔装兵器たち。

どうやら二属性の精霊を取り込んでいるからか、体表の氷をバラバラに砕かれても土喰のような姿になって地面に潜り、ふたたび氷を纏って地中から飛び出してくる、なんて芸当を繰り広げている。

そんなふうに氷と土を使い分けつつ、さまざまな形で白竜に襲い掛かるが、白竜もさるものだ。

ときおり、氷で叩かれたり落ちつぶされたりしながらも、ほとんど傷を負っていない。

その都度、反撃を行い、魔装兵器を大きく砕く一撃を与えている。

まさか、霊峰の魔物を倒しに行くと言ったときにはここまでの大怪獣の戦いみたいになるとは思いもしなかった。

これがブリリア魔導国の次期王の力ということだろうか。

本人が自分の肉体で戦っているわけではないが、想像以上に強い。

こんな相手と戦場で相まみえた時、俺はきちんと対処して勝利を掴むことができるかどうか。

正直なところ、今のところベンジャミンが王級魔装兵を使ったら勝てる気はしないな。

だが、この大規模な戦いもそう長くは続かなさそうだ。

それは白竜と戦っているのが王級魔装兵を通してのベンジャミンという人間だという点にあるのだろう。

ベンジャミンの魔力がどれほど多いのかは、いまだに俺は分かっていない。

が、確実に言えることは一つだけあった。

それは、ベンジャミンがどれほどの魔力を持っていたとしても、白竜には敵わない、という点だ。

白竜と王級魔装兵、および二属性精霊化した魔装兵器十数体。

拮抗しているかに見えたそれらの戦いは魔装兵器を操る原動力となっているベンジャミンの魔力量が低下してきたことで天秤が傾き始めた。

少しずつ、魔装兵器が白竜に押され始めるようになったのだ。

そして、自動修復機能により破壊されても元に戻るはずが、その前に完全に停止させられるようになり始めた。

じりじりと減り始める魔装兵器の数。

さすがにもう無理か。

それを見ながらこの場から逃げる時を見計らい始めた俺と、まだ諦めるつもりは一切ないであろうベンジャミン。

そのベンジャミンがついに動いた。

王級魔装兵や魔装兵器を通してではなく、自身で白竜のもとへと向かっていったのだった。