軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

人造高位精霊

ベンジャミンが魔法鞄から取り出した王級魔装兵。

本来ならば迷宮にしか存在しない魔物だ。

魔導迷宮はちょっと特殊な迷宮で、ほかの土地にあった迷宮核をブリリア魔導国が持ち帰り、有効活用しようと研究してできたものだと聞いている。

お得意の魔法陣と組み合わせようとして研究し、失敗した。

迷宮核を守るために魔法陣から次々と魔物である魔装兵が出てきてしまうことになったために、山の洞窟内にあった研究所を放棄せざるを得なかったという話を聞いたことがある。

しかし、その失敗も悪いものではなかった。

魔法陣から出てきた魔装兵は迷宮核を守るために動くという特性があった。

そのために、迷宮の外にわらわらと出てくることはなく、常に一定数の魔装兵が迷宮核の周りに展開され、倒されると補充が行われていたのだ。

しかも、その魔装兵は全身が金属でできている。

青銅や鉄はともかく、さらに奥にいる銀や金などは貴金属としての価値もあるために、王家としてはおいしい鉱山を手に入れたことになるということでもあった。

「あれが、王級の魔装兵か。たしか、素材は緋緋色金とか言うんだったっけ、アイ?」

「はい。金よりも軽く、けれど金剛石よりも硬く、錆びることもない永久不変の金属であるとされています」

そばにいた小型魔装兵器であるアイと話す。

緋緋色金は確か熱伝導もいいんだったっけ?

ほかでは見られない特殊な金属で、ブリリア魔導国王家のみが使用できるとされているとか。

だが、それを迷宮の外であるこの場に持ち出してベンジャミンが使役していることには大きな意味がある。

「もしかして、ベンの能力って精霊使役じゃなくて使役ってことかな?」

「ん? どういうことだ、アルフォンス? それはなにか違うのか?」

「全然違うだろ、イアン。精霊を使役する力じゃなくて、魔物を使役する力だったとしたら魔装兵を使えることに理屈が通る。で、その場合、こういうことも考えられるとは思わないか? 魔物である魔装兵を使役できるんなら、同じ魔物である白竜も使役できるって」

「白竜を? 奴は白竜を倒しに来たんじゃないのか?」

「いや、考えてみれば倒す必要って実はないんじゃないか? 他の者に自分が王であると認めさせることがベンの目的なんだ。だったら、白竜を倒して素材を持ち帰るのもいいけど、生きた白竜を連れ帰ってもいいだろ。あれを使役しているのを見て、ベンに王位は我にありって言われたら否定なんてできないだろう」

白竜の牙なんかをもぎ取って持ち帰るより、よほど効果的だと思う。

だけど、現実的にそんなことができるんだろうか?

吸氷石内の精霊を使役するというときにはあまり苦労しているようには見えなかったが、白竜に対しても同じようにとはいかないのではないかと思う。

というか、もし簡単に使役できるんなら寝ている今は絶好の機会だ。

わざわざ戦うために緋緋色金でできた王級魔装兵を出す必要なんかない。

「なんだ。ならば結局戦うということか?」

「うーん、そうなるのかな? よく分かんないけど、白竜のような強い相手を使役するならある程度弱らせないといけない、とかそういう条件があるのかもね」

離れた場所で見物しながら話をしていた。

すると、ベンジャミンが動いた。

といっても、まだ戦うわけではないらしい。

そばにいる王級魔装兵に手を向ける。

「なんだあれ? あれって精霊か、アイ?」

「おそらく。現時点では情報が不足していますが、精霊を魔装兵に取り込ませているように見えます」

「魔装兵に精霊を? そんなことできるのか。ってか、それってなんの意味があるんだ?」

「分かりません。が、もしかすると人造高位精霊を生み出そうとしているのかもしれません」

「人造の高位精霊? それって、カイル兄さんのみたいな?」

「はい。精霊とは自然界の力そのものであるとされています。が、そのためか精霊はただそこにいるだけでもあるのです。しかし、その精霊が言葉を理解するほどに知性を得た場合は上位存在となりえます。緋緋色金はまだその特性が完全に解明されていない特殊な金属であると言われていますが、もしかすると精霊との相性が良い金属であるのかもしれません」

高位精霊を人工的に、か。

それってかなりすごいことだと思う。

しかも、ベンジャミンは精霊を二つ出したのだ。

吸氷石から得た氷精。

そして、精霊石から取り出したであろう土精。

その二つの精霊が緋緋色金というよくわからない金属の中に入り込んでいく。

二つの精霊が浸透していき、融合していっているのだろうか。

次の瞬間、それまでよりもさらに王級魔装兵の存在感が上がった。

こうして、霊峰の奥地で高位精霊が誕生した。

氷と土の二属性を持つ高位精霊が緋緋色金の鎧という肉体をもって立つ。

さすがに、それは白竜も無視できなかったのだろう。

それまでは身動き一つ取らずに寝ていた純白の竜の目が開いたのだった。