軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

グルーガリアの荒廃と戦果

「いや、すごいね。タガが外れた軍隊ってのは怖いね」

「そうですね。というか、グルーガリア国はもう終わりかもしれませんよ、これは。国内の土地での被害が大きすぎます。これでは十年たっても立て直しできない可能性がありますよ」

グルー川に作ったオリエント軍の拠点。

その拠点内にいる俺とオリバは影の者から受けた報告を聞いていた。

つい先日、イーリス国がオリエント国側に寝返ったという情報が外にいた各小国軍にも届いたようだ。

そして、それまで食料を届けていたアロンダル率いるイーリス軍からの補給が完全に途絶えた。

それによって、この地に集まりオリエント軍と戦っていた各国の軍がバラバラに動き始めたのだ。

食料を求めて、自分たちで調達に向かったのだ。

グルーガリア国内の町や村へと軍が向かい、そしてそこで食料を確保しようとする。

が、すでにそれらの地には満足に軍の腹を満たすだけの量の米はなかった。

すでにオリエント軍に売ったか、アロンダルたちに渡したか、あるいは焼かれていたからだ。

なので、食うものが手に入らない。

そうなると人は暴走するものらしい。

ある軍はわずかに残った食料を奪いつくしたり、あるいは、隠し倉庫をあばいて持ち出したり、もしくは憂さ晴らしに住人を武器で斬りつけたりとやったらしい。

おかげで、グルーガリア国内ではまるで大量に発生した夜盗にありとあらゆるものを持ち去られたような状態になったらしい。

それは食べ物だけにとどまらなかった。

金目のもの、武器、防具、女性や子ども、その他持っていけるものはなんでもといった様相を呈していたらしい。

おかげで、グルーガリアは完全に荒廃した。

しかも、それはグルーガリアだけの問題には留まらなかった。

そのほかの国にも盗賊化した小国軍が向かったからだ。

グルーガリア周辺の国にも場所を移して略奪の限りを尽くしていく。

おかげで、オリエント軍を包囲していた周辺国の軍は自国に戻っての防衛を余儀なくされた。

そのために、これまではオリエントを敵としてまとまっていた各国がまとまらなくなってしまっていたのだ。

本来であれば、そのようなことが無いように、援軍を呼び集めたグルーガリア国がなんとか各国をまとめなければならない。

が、もはやそんな余裕はなく、これ以降、各軍がまとまっての行動を行うことはないだろう。

というわけで、俺たちは包囲していた軍に対してしばらく攻撃はしないことを決めた。

今、オリエント軍がなにか動きを見せればふたたび各国がまとまる口実になるかもしれないからだ。

グルーガリア周辺に住んでいる人たちには悪いが、しばらくは暴走する軍の被害を耐えてもらわなければならない。

ただ、ここまで被害がすごいとオリバの言うとおり、十年たっても国力を回復できないかもしれないな。

少なくともグルーガリア国は無理だろう。

食料生産はともかく、弓に特化した人材が育つ土壌は確実に失われただろうからな。

「ま、その代わりに手に入れるべきところは貰っておこう」

「材木所、ですね?」

「そうだ。今の荒廃したグルーガリアで唯一価値がある場所って言ったらもうあそこしかないからな。今頃材木所も食うもんなくて瀕死の状態だろう。攻め込むぞ」

この数月ほどはオリエント軍は防衛だけをしていた。

拠点を守り、ずっと耐えていたのだ。

しかし、その間、守りだけではないところがあった。

それは、川の上だ。

グルー川の上に限っては、魔導鉄船という他の国の船よりもはるかに機動力と防御力のある船を持っているのがオリエント軍の強みだった。

そのため、水上から拠点を攻撃されないように船で戦うのはもちろんのこと、グルーガリア国に川を利用しての食料補給ができないように、他国の船はすべて見つけ次第拿捕、および撃沈させていたのだ。

そして、それはグルーガリアのひとつでもある中州も同じだった。

グルー川の中州にある柔魔木の材木所。

ここは当たり前だが、食料を自給できるような場所ではなく、他から運び込む必要があった。

その材木所に向かう船もオリエント軍が拠点防衛を始めてからすべて攻撃していたのだ。

そのため、現在、中州にたどり着けるグルーガリアの船というのはほぼない状態で、それはすなわち、中州における食料の枯渇を意味していた。

今ならば、なんの抵抗もなく中州を占領できるだろう。

そして、グルーガリアはそれを止める手立てがない。

自分たちの土地を自分たちが呼び寄せた援軍が荒らしまわっているので、そこまで手が回らないのだ。

もしも、首都から軍が出て中州に向かっている間に、どこかの小国軍が都市内に流れ込んだら大変なことになってしまう。

ゆえに、最重要拠点である材木所を守ることすらできない状況なのだ。

「寄せ集めの軍があだになったということですね」

「そうだな。共通の敵と戦うってのは小国家群の強みなんだろうけど、まとめ役がきちんと機能しないと大変なことになるよな。だけど、遠慮は無しだ。こっちだって損害がないわけじゃないし、持久戦で戦費がかさんでいるしね。しっかりと取り立てできるところでしておこうぜ」

「了解です。では、材木所占領に軍を動かしましょう」

グルーガリア国内が荒れ果てているなか、俺たちオリエント軍は悠々と船に乗って中州に上陸した。

今までにも何度かここには軍を引き連れてやってきたが、その中で最も抵抗の少ない上陸作戦となった。

こちらも【アトモスの壁】で守りを固めた拠点化された施設があるが、まともな食事ができずにほとんど戦いにならなかったからだ。

こうして、俺たちは柔魔木という他では見られない資源を確保する地を手にすることに成功したのだった。