軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

イーリス軍本陣での戦い

「ウォオオオオォォォォォォォ!」

身長五メートルを超える全身金属鎧を着て、巨大な剣を振り回す巨人。

その姿は暴風雨のようだった。

かつての大嵐で周囲の木がなぎ倒され、半ばで折れて地面に横たわる大惨事を彷彿させる光景がそこには広がっていた。

イーリス軍が迎撃するために使用した【照明】の光があちこちで周囲を照らしている中での、そんなイアンの戦闘はまるで舞台の一幕のようでもあった。

線路を作りながら移動していたイーリス軍の中核であり、すべての指揮系統を行う者がいる本陣として使われていた天幕なども倒れている。

そして、その近くで倒れているイーリス兵はおそらくは本陣に詰めていた将校や伝令などではないだろうか。

ワルキューレの陽動と俺が率いる別動隊の攻撃に対処するために気を取られていたところにイアン率いるオリエント軍から攻撃を受け、かなりの被害にあっている。

だが、それでもまだ決着がついていないのはイーリス国が十剣士と呼ばれる者がここに三人もいるということがあるのだろう。

イアンが三人の剣士と戦っていた。

アロンダルと同じようなそりのある片刃の剣だ。

いわゆる刀と呼ばれる武器なのだと思うが、それぞれに違いがある。

刀を二本持って戦っている者もいれば、一本だけの者もいる。

さらに、もう一人は異常に長い刀を振るっている者もいた。

武器の統一というものはしていないのだろう。

きっと、達人と呼ばれる十剣士が自分の持ち味を出すために独自の刀を作らせて使用しているに違いない。

そこに赤い刀を持ったアロンダルが飛び込んだ。

アロンダルを味方にした際に、少し気になったのが武器のことだった。

俺がアロンダルと戦ったとき、アロンダルの体をざっくりと斬ったのだが、その時に武器の刀も切ってしまっていたのだ。

彼の武器は魔法剣のような特殊なものではなかったが、それでもかなりの業物であったらしく代わりとなる刀がないようだ。

そのため、アロンダルは使える武器がないということになる。

なので、俺がその代わりを提供することにした。

といっても、魔法剣の硬牙剣などを渡してもアロンダルなら使うことはできるだろうが、本来の持ち味を出し切れないかもしれない。

なので、刀を渡すことにした。

赤黒い魔石を使って鮮血兵ノルンを作り出す要領で、折れたアロンダルの刀を模倣するようにして血で武器を作ったのだ。

ようするに、俺の魔剣をもう一本作り出したようなものだろうか。

さらにアロンダルに持たせて、何度か刀を振らせて使用感も確かめさせている。

本人からは十分に使えるものになっているとお墨付きをもらっているので大丈夫だろう。

急遽味方になったばかりのアロンダルに魔剣を貸し与えるのは、別の理由もあった。

裏切り防止としての意味合いだ。

もしも、アロンダルが武器を持って俺やイアンを攻撃しようとしたら、ノルンにはアロンダルを攻撃するようにと言っている。

だが、そんなこととはつゆ知らず、アロンダル隊の兵たちは自分たちの将が俺に武器を下賜されるくらいに信用を得ていると思ったようで士気が上がっていた。

まあ、別に誤解を解く必要もないので、そのままにしているが、そんな士気の上がったアロンダル隊がイーリス軍本陣へと突入していった。

「アロンダルか? 無事だったのだな。悪いが、この巨人を倒すのに手を貸してくれ」

アロンダル隊が本陣に駆けこんだところで、それまでイアンと戦っていた長巻の男が叫んだ。

どう見ても身長よりも長い刀を使用している。

あんなに長くては取り回しがしづらいのではないだろうかと思うのだが、うまく体の捻りなども使って戦っていた。

二刀流の十剣士がイアンの足元に潜り込むように超接近戦を仕掛けながら、長巻の男が正面からイアンの気をそらしつつ、攻撃を捌き戦っていた。

だが、かなり苦しかったのだろう。

アロンダルの姿を見てどこかほっとした表情が顔に出ていた。

本来であれば、それは自分たちにとってありがたい加勢だったはずだ。

アトモスの戦士という強すぎる相手をするには強者が何人いても足りないくらいだ。

だからこそ、イアンと戦う十剣士は加勢に現れたアロンダル隊に背を向けながら、そのままイアンとの戦いに集中していた。

そんな十剣士へとアロンダルが襲い掛かる。

赤の刀が長巻を持つ男の背を横なぎに斬りはらった。

アロンダルお得意の切れ味抜群の一閃だ。

背骨を断つその一撃は致命傷となり、長巻を振り抜こうと体をひねる途中だったその勢いで、ぐるんと向きを変えながら地面へと落ちていく。

「な、何をするか、貴様! 裏切ったのか、アロンダル!!」

背を断ち切られてまともに体を動かせない長巻の使い手が大きな声でそう言った。

それを耳にして二刀流の男や、さっきから「キエーーーー」と大きく叫びながらイアンに斬りかかっていた男の視線もそちらに向けられて、驚愕の顔をしていた。

だが、それはイアンの前ではあまりにも大きな隙となってしまった。

わずかばかりに目をそらした二人の剣士に、イアンの剣が襲い掛かる。

こうして、イーリス軍本陣内で行われていた戦いはアロンダルが突入したことであっという間に決着がついてしまったのだった。