軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

グルーガリア国の戦略

オリエント国からグルー川を下る。

魔導鉄船という移動と防御を高めた船を用いての移動だったが、その途中ではたいした小競り合いというのは起こらなかった。

そうして、目的のグルーガリア国へと到着する。

川岸に船を停留させ、そこから攻略へと向かうことになる。

「魔導鉄船はグルー川で待機していてくれ。一応、材木所がある中州から兵力がこちらに向かってこないようにだけは注意しておいてくれ」

船からオリエント軍の兵士たちが次々と降りていく。

そうして、残った船の船員にたいして指示を出しておく。

グルーガリア国にもいくつかの重要な拠点というのはあるが、基本的には都市部と材木所の二か所だけに注意しておけばいいだろう。

中州にある材木所から都市に救援が来る可能性もあるが、それにはどうしても船を使っての移動になる。

今まではこの材木所の兵力というのが、グルーガリアの防御に大きく関わってきていた。

熟練の弓兵を揃えるグルーガリア国は川の上での戦いも得意だったからだ。

船の上ではどうしても弓による遠距離攻撃か、船をぶつけての船上での白兵戦が主な戦い方になる。

そのなかでも、圧倒的な弓の力で川の上での戦いに勝利してきたグルーガリア国は、これまで他国から船で近づかれて都市を攻撃されても、兵員を運んできた船と川で戦い、そのことごとくを撃退してきたのだ。

なので、本来であればグルーガリア国の都市を攻めるのであれば、ここまで来るのに使った船の守りに相当数の兵力を割く必要がある。

が、オリエント国はその必要がなかった。

それは、やはり魔導鉄船の力が大きい。

船全体を鉄で覆い、高い守りを得ているということ。

そして、従来の船とは隔絶した圧倒的な推進力を持つというのがなによりも大きいだろう。

しかも、こちらも遠距離攻撃ができる。

【見稽古】によって弓の腕は以前までのオリエント兵とは全然違うし、魔弓オリエントという武器もある。

なので、少ない兵数でも魔導鉄船が沈むことはまずないだろう。

と、いうわけで、移動手段が途絶えるという心配はいらないからこそ、俺たちは都市の攻略に専念できるというわけだ。

グルーガリア国が出した救援要請を聞きつけて、他国の軍が到着する前にさっさと攻略を開始してしまおう。

魔導鉄船から降りた兵三千を連れて、今度は地上を移動し、グルーガリアの首都へと進行していったのだった。

※ ※ ※

「亀、みたいだな。あれって攻略できると思うか、オリバ?」

「どうでしょうか。【アトモスの壁】をイアン殿は破壊できないのですか? できるなら、話は早いのですけれど」

「無理じゃね? あの壁は対アトモスの戦士用に作られた守りの壁だからな。ものすごく頑張れば壁を倒せるかもしれないけど、一枚抜いたくらいじゃ駄目だろうね。何枚も重ねてそうだし」

グルーガリア国の首都。

そこに到着した俺たちはさっそく攻撃を開始した。

が、その攻撃は全然通じていない。

というのも、グルーガリアが恐ろしいほどに守りを固めていたからだ。

グルーガリアの首都は壁で囲まれていた。

が、その壁は【壁建築】ではなく、【アトモスの壁】で囲まれていたのだ。

高さ十メートルでも十分な防御力があると思うが、さらにその上をいく五十メートルの壁だ。

しかも、【アトモスの壁】は普通のレンガではなく硬化レンガ製でもある。

あれは金属のように硬く、高熱の炉にも使える耐火性を持つレンガだ。

そう簡単には攻略できない。

さらに、その壁を何枚も重ねているらしい。

【壁建築】で作られる壁は高さが十メートルで厚さは五メートルだ。

しかし、【アトモスの壁】は高い代わりに厚みが減っている。

これは、一度の魔法の発動に必要な魔力消費量を減らすためだったはずだ。

が、グルーガリア国としては厚みのない壁では不安だったのだろう。

いくら、硬化レンガでできているといってももっと厚みがほしいと考え、【アトモスの壁】のすぐ後ろにさらに【アトモスの壁】を発動し、と繰り返したことで分厚い守りを実現させたようだ。

おかげで、イアンの攻撃が一切通じていない。

そうなると必然的に攻撃する場所は限られる。

それは壁門だ。

いくら、強固な壁に囲まれた都市とはいえ、中と外を出入りする場所はどうしても必要になる。

そして、そのための門を必ず設置しなくてはならないのだ。

【アトモスの壁】と比べるとその門は防御力は低くならざるを得ない。

なので、都市攻略をするならば、その門を攻撃するのが一番いいということになるだろう。

だが、そんなことはグルーガリア国も分かっている。

だから、門の守りは厳重に固めてあった。

なんと、壁門には柔魔木をも使用しているらしい。

硬化レンガと同じく、魔力を通さなければ金属のように固い木材。

それを壁門の開閉に利用し、中からは魔力を使って簡単に開くように、けれど外からでは開けられないように固く分厚く重い金属製の跳ね上げ門となっているために、こちらの攻撃が一切通じないのだ。

しかも、その門回りは弓兵が弓を射やすいように壁に細工が施され、上からの打ち下ろしの矢が飛んできて、こちらに被害が出てしまう。

ようするに、グルーガリア国は徹底的に防衛戦をするつもりのようだ。

亀のように守りを固め、一切こちらに攻撃しようと出陣するつもりはないのだろう。

そんな戦略が成り立つのは、ほかの小国がここに向かって援軍を出しているからだ。

耐え忍べばいつかは助けがきて、オリエント軍に数の暴力で圧倒できる。

ぺリア国がやったような囮役を今度はグルーガリア国はやるつもりなのだろう。

どうしようかな?

手っ取り早くこの堅い守りを攻略できる方法とか、あるんだろうか?

今まで見た中で一番堅い守りの都市を目の前にして、俺たちはどう対処していくか検討を始めたのだった。