軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

志願者を増やすために

「兵数の恒常的な確保についてですか?」

「そうそう。現状では入隊したいって奴の数は増えてはいるけど、増え方が鈍化していないかってゼンが言っているんだよ。で、もしかしたら、今後は戦闘員になるよりも普通に仕事していたほうが割がいいからってことで志願しない人のほうが増えるんじゃないかって話していたんだ」

「そうですね。現状では心配いりませんが、そのようなことがあるかもしれません」

「でしょ? だから、今のうちからなにか対策を立てておいたほうがいいんじゃないかな。アイはどう思う?」

ゼンと話し合ったことについて、アイの意見を聞く。

というか、バルカ傭兵団はともかくとしてオリエント軍のことは議会が決めるからな。

俺は国防長官と護民官という立場で軍を指揮することができるが、だからといってその辺にいるやつを勝手に軍に引き込むことはできない。

議会を通して手続きを踏まないといけないのだ。

なので、法について誰よりも詳しいアイに相談しないと始まらない。

「そうですね。検討すべき方策としては、次の制度が考えられるかと思います。それは、強制するというものです。オリエント国に住む者にたいしての義務として、軍への入隊を絶対のものとする法案を議会にあげて採択する、などでしょうか」

「まあ、ぶっちゃけ一番単純な解決方法はそれだよね。フォンターナ王国もそうだし。国民の一体感を出すために一定年齢で徴兵するんだよね?」

「そのとおりです。そうすることで、いつ戦闘が起こっても常に一定数の兵士を確保できるという考え方です」

「ふむふむ。それだけ聞いていると損はなさそうだね。徴兵制だと特に問題もないんじゃないの?」

「ですが、おそらくその法案は議会を通過しないでしょう。少なくとも修正が行われる可能性が高いと考えられます」

「議会で修正? どういうことだ?」

アイの言うことを頷きながら聞いていたら、思わぬことを言われてしまった。

そんなことがあるのだろうか。

「オリエント国はフォンターナ王国や連合王国などとは制度が違います」

「それは知っているよ。王がいなくて議会があるんだからな」

「はい。ですが、王はいなくとも特権階級というものは存在します。この国には一級市民と二級市民、そしてその他の民が存在するのです」

「そうだね。俺はあんまり意識してないんだけど確かにあるよね」

「はい。そして、この都市に住む者も市民権の種類によって住む場所の制限や財産相続の方法、そして議会への投票権などが違ってきます。おそらくですが、議員を選択する権利を持つ一級市民は自身が戦場に行くことになる可能性のある法案を快く思わないでしょう」

「ああ、なるほど。そういうことか。金と権利を持っている一級市民は強制される徴兵制に反対するってことね。ってことは、二級市民やそれ以外の都市外に住む者を対象にする法律になるってことか」

「はい。ですが、それも後々問題視される可能性はあるかと思います。国が豊かになれば、二級市民も同じようになぜ自分たちがその身を危険に晒す必要があるのかと思うことになるでしょう」

「じゃあ、都市に住む者は免除ってことか? 国全体での一体感とかは無くなりそうだね」

「そうなるかもしれません。が、一級市民が二級市民の声を聴くかは不透明でしょうね」

なるほどなあ。

あんまり意識していなかったけど、言われてみればそういうこともあるかもしれない。

普段から議会で仕事をして一級市民のための政治をするアイと、バルカ教会で庶民の声を聞くアイ。

そんな二面性のある生活を送っているからこその観点なのかもしれない。

ただ、議会はあくまでも一級市民の利益になる法案が通るんだろう。

まあ、バルカ党の力でごり押しできなくはないかもしれないけど。

「ほかに方法って何かあるかな? できれば、やる気のある奴が集まってきそうな方法で」

「でしたら、志願者を増やす方策を採用すべきではないでしょうか」

「志願者を増やす方法? いい考えがあるのか?」

「よい考えかどうかは分かりませんが、現状の問題として、戦闘員になるよりも一般職についていたほうが利益があると考えられる点が挙げられるのではないでしょうか。であれば、一般職よりも戦闘員に志願するほうが利益となる、となれば自然と増えるのではないかと思います」

「利益を増やす、か。ま、それも言われてみれば当然だよね。ってことは、兵士になれば給料を多めにあげるとか、そういうこと?」

「当面はそれでもいいでしょうが、後々はさらに手厚くしてもよいかもしれません」

「さらにって、たとえばどんなことを言っているんだ?」

「そうですね。一例ですが、たとえば志願して入隊し、長期間、兵としての仕事を全うした場合には退役後も毎年の生活費を支給する約束を行う、などでしょうか」

「年間の生活費を? 兵士をしたら退役後は遊んで暮らせるってことか。それは確かに手厚そうだね」

「はい。ほかにも、金利を無くしたり、減額したり、特別な市民権を用意したり、いろいろ考えられるでしょう」

「面白そうだね。それなら法律とか関係のないバルカ傭兵団でもできるかも。ちょっとどうやるのがいいか、考えてみようぜ、アイ」

「かしこまりました」

一年生活するのに必要な金を渡す制度か。

どうせ、エルちゃんたちとエンの制度のおかげで金の心配はそんなにしなくていいんだ。

だけど、一般人からしたらそんなおいしい話があれば、普通の仕事をするよりも志願してでも兵になりたがるかもしれない。

とりあえず、それを年金制度とでも名付けて実際にできるか検討してみようか。

徴兵制との違いやなんかとも比較して、この国ではどうするのが一番いいかを考えていったのだった。