軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

寝ずの館

「最近、うちが関わっていない工事が増えてませんか、アルフォンス団長?」

「ん? 今頃気が付いたのか、ゼン。この間から、俺たち以外にも工事を行う連中が増えているんだよ」

「そうだったんですね。どおりで忙しいのが少しマシになってきたように感じるんですね。でも、なんでほかに工事をやる人が増えたんですか?」

「決まってんだろ。互助会の評価を上げて、金貸し業をしようってことだろ」

工事現場で作業を監督しているときだった。

そばにやってきたゼンが話しかけてくる。

作業員に指示を出しながら、少しの間、雑談をしていた。

バルカ教会における互助会の評価制度の利用。

それによって、変化が現れた。

新機能搭載型腕輪によって金を貸し、それを手間暇なしに利子付きで回収できるようになった。

が、それを使って金貸しをできるのは互助会におけるS評価保持者のみだ。

このことについてはオリエント国でどんなに権力を持っていようともなにも言うことができない。

なぜならば、このエンを扱える腕輪はオリエント国のものではなく、バルカ教会の品であるからだ。

その腕輪の機能の制限についてはバルカ教会が決めることは当然だ。

さらに言えば、文句をつけようとしても教会は傭兵団と一緒になっているからな。

武力のある相手に注文を付けようという者はいなかった。

ならば、目端の利く者はどうするか。

うまい儲け話があるならばそれに飛びつくのは当たり前だろう。

金を貸して利益を得る。

そのために互助会の評価を得たいのであれば簡単だ。

自分も互助会から出される依頼をこなせばいい。

最高位の評価を得るために今、一番手っ取り早いのは工事を行うことだ。

まだまだ川の氾濫を防げるほどに工事はできていない。

俺が現場指揮をとって工事をしているといっても、どうしても時間もかかるし、場所も限定されるからな。

需要は尽きない。

というわけで、金を持っていてさらにそれを増やしたいと考えている者は、互助会の評価を上げるために依頼されている工事を受注し始めたというわけだ。

工事を受注した者は人を集めて、指定された現場で着工する。

そういう流れができ始めたおかげで、これまでほとんど工事業者になりつつあった俺は工事にかかりっきりにならなくてもよさそうになってきたのだ。

ちなみに、アイが議会を通して発注している工事はどこの川をどのように付け替えるか、しっかりと決めて指定してある。

そのとおりにやる必要があるので、実際のところは結構大変な管理が必要だ。

きちんとやらないと氾濫防止のためにした工事が原因で氾濫が起きることも考えられる。

評価を高めるために受注だけして丸投げ、でも問題はないのだがしっかりやらないと達成できない。

あまりにひどい工事がないかどうかの確認だけは必要だろうか。

「でも、アイ議長も大変そうですね。こないだ見ましたよ。アイ議長に会いに長蛇の列ができているのが」

「金を借りようって連中だろ。すごいみたいだな。オリエント国以外からも人が来るから、しばらくはずっとそんな感じだろうな」

「大丈夫なんですかね? あんなに人が来たらさすがに困りそうなものですけど」

「まあな。けど、あれがきっかけでいい面もあるみたいだよ」

アイが人にエンを貸し始めてしばらく経っている。

最初はもともと要求していた商人たちがアイのもとへとやってきた。

そして、次第に職人などが来て、だんだんとそれ以外の人までもが訪ねてくることになった。

が、そうなると本当に大変だ。

数が多ければ、ひとりに対しての話をする時間をいくら短くしても追い付かない。

そこで、それを解決するためにアイは人を雇い始めたのだ。

アイが直接話を聞く前に、事前に聴取を行う者。

その情報を記録する者。

整列を促す者。

面会予約をとる者。

そのほか、いろいろだ。

アイがアイを補佐するための人を使う。

これは天空王国でのアイとは真逆の立場になったと言えるかもしれない。

バリアントでは城の中でそういう雑務をこなすのがアイの仕事でもあったからだ。

一番最初にアイが働き始めたカイル兄さんのシャーロット城でもそうだと聞いている。

それが、オリエント国では人を使ってさばき始めた。

さらに、もともとアイがしていた仕事だからこそ、アイの補佐役の連中も恐ろしいほど効率的に仕事こなすようになっている。

そういうことがあり、アイはオリエント国の首都である都市国家内に自分の家を購入した。

それまでは俺の屋敷やローラの家にいることがあったが、今は自分の所有する建物のほうにいることが多い。

一級市民権を持ち、金もあるので、議会の近くの結構いい家を購入したようだ。

そこに多数の補佐役たちが詰めていて、仕事をしている。

そして、そんなアイの補佐役の仕事は時間が経つほどに面会する者をさばいていくだけではなくなってきたようだ。

というのも、アイはその建物で生活しているのではなく、ずっと仕事をしている。

寝る間も惜しんで、などではなく寝る必要がないので、文字通りずっと仕事をしていられた。

そこにいる他の者も次第にその仕事をも補佐するようになってきて、今ではアイの議長としての仕事も手伝うようになってきているのだとか。

アイというオリエント国議長の仕事を手伝う者たち。

それらが働き者でないはずがない。

アイによる人物評価によって選別された優秀な人材が、一個の建物で仕事を行っている。

【照明】を使っていて朝も晩も建物の中は光が途絶えることなく、【瞑想】によって必要最低限の休息でアイの仕事の速度についていこうと働く異常者たち。

いつの間にか、そんな環境が出来上がっていたのだ。

途絶えることのない光を見て、「寝ずの館」などとも言われたりもしているらしい。

法の整備や国内の多くの問題やそれに対しての処置など、さまざまなことがそこでは検討され議会への議題として提出できるようにまとめられていく。

なので、今のオリエント国議会で提出される議題や提案の多くは、そんなアイの建物内からのもののようだ。

こうして、いつの間にやらアイに家臣団のようなものができ始めていた。

アイの数が限られているオリエント国だからこそ、人手が足りずに組織化されたというわけだ。

アイのそばで働くことで、半強制的に仕事をしまくり、学習していく補助の人たち。

そこらの議員などよりもはるかに国内事情に精通した、優秀な人材が急速に育てられていくようになり始めたのだった。