軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

新機能搭載型腕輪

バルカ教会で信者にたいして配っている腕輪は、実は少しずつ変わっていっている。

一番最初に作ったのは、単にアイが現在位置や魔力の波長を捉えて個人識別できるだけのものだった。

それが、腕輪にはエンを取引する機能が付いたおかげで物の売買が可能になった。

さらに最近では腕輪にも【自動調整】と【錆防止】の魔法陣も加えるようになっている。

このおかげで、それまでは子どもや大人、あるいは男女の差である程度大きさを作り分けなくてはならなかったのが、その必要もなくなった。

信者獲得に力を入れているおかげで腕輪の必要数は多いので、これは結構助かることになっている。

そんななか、さらに機能追加をしたのが、貸し借りの機能だった。

それまでは単純に当人同士での売り買いというものだったが、それにたいして貸付を行い、一定期間で自動的に借主から貸主へお金が動く設定をできるようにした。

その際は、返済に利子を伴うことになる。

ぶっちゃけそんな機能がいるのかと思ったが、これはクリスティナが主張して加えられることになった。

というのも、クリスティナにたいして商人たちから陳情があったらしい。

商売するために金を貸してほしいといろんな人から言われたのだろう。

俺も最近はいろんなところで工事をしたりして、仕事をする人というのをよく付き合うようになっている。

川の付け替え工事などでも、レンガや壁以外に必要な資材や工員のための食べものなど、取引するものが多々あるからだ。

そんななか、金を稼ぐ奴というのは、思い切って金を借りることができるやつでもあるというのが分かってきた。

自分が稼げると思った商売でも、元手がいるんだろう。

戦いに勝つためには武器が必要なように、商売には金がいる。

金を借りてでも儲かると思ったことに取り掛かりたい、ということらしい。

堅実なのも悪くないのかもしれないけれど、時には大胆さも必要というわけだ。

が、今はまだまだ不況でもあった。

オリエント国以外では硬貨不足でもある。

商売をしようと思っても、金を借りられる場所が少ないのだ。

というわけで、なんとかエンで借りられないかということになったのだとか。

別に金の貸し借りだけなら、証文があればできる。

いつ誰にどのくらいを借りて、それをいつまでに返す。

そう決めた紙を用意して、お金を取引すればいい。

が、そうした時に問題になるのがそいつがきちんと返すかどうかだ。

金を貸す以上はしっかりと回収しなければならない。

そして、エンという現物の硬貨を使わない取引ができる腕輪であれば、それを自動的に期日に回収できるようにならないか。

商人たちはそんなことを考えたらしい。

商人たちのその意見をクリスティナが聞いて動いたのは、オリエント国のためにもなるからだ。

エンを貸すことができ、それで商売が活発化すれば国としても豊かになる。

クリスティナはそう主張したのだ。

そして、それにはアイも賛成した。

アイの持つ知識のなかでも、それは実際に観測された事実だからだそうだ。

それは、やっぱりアルス兄さんだった。

アルス兄さんは昔から金貸し業をしていたのだ。

フォンターナ家がまだ貴族だったころから、主家の配下の騎士にたいして金を貸し付けて農地の改良などを促したのだという。

金を貸すという恩と返済での利益、そして農業の発展でフォンターナ領は豊かになり、王国に至る道筋をつけたのだとか。

さらにいえば、利息の設定も意味がある。

この貸し借り機能における利息、あるいは金利を統一しようという考えがアイにはあったようだ。

というのも、今は金を借りにくい小国家群ではあるが、高利貸はいないわけではなく、存在し続けている。

そして、そんな金貸し屋は今回俺がラムダに提示した金利がかわいらしく見えるほどの、えげつない高利で貸し付けをしているのだ。

相手が金を返せなくなっても、身ぐるみを剥いででも回収するのだろう。

腕輪とエンで金が借りられるうえに、高利貸よりもはるかに安い金利であれば、そういう連中が力をつけることを抑えることができる、というのがアイの考えのようだ。

つまり、大きな視点で見れば治安維持にもつながることになる。

それが、腕輪に金利設定付きの金貸し機能を取り付ける効果なのだそうだ。

と、いうわけで今回ラムダたち、バイデンの町にて配られることになった腕輪はこの新機能搭載型のものだ。

町全体に支払いを求めて、そこに一定額の利子をつけて払わせる。

これは、ある意味で実験としての意味もあった。

今までの腕輪だと残高と取引金額だけしか表示切替できないのが、毎月自動で残高から金額が動くことになるのだ。

使い勝手も検証していく必要がある。

それと同時に、貸し借り機能がついた腕輪を持つことでなにか問題が起きないかの確認も兼ねている。

社会的検証とでもいえるかもしれないな。

まあ、俺が損することもないだろうし、利子の支払いで儲かるからなにも問題ないな。

仮のバルカ教会の建物で腕輪が配られていく様子を見ながら、すぐに使い始めた者に聞き取り調査も始めたのだった。