軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

条件交渉

「分かりました。条件がありますが、それさえ満たしていただけるのであればシオンさんのほかに、アイさんとミーティアさん、ユーリさんとの結婚も認めましょう」

アイとの話の後、改めてエリザベスに話をする機会を作って結婚相手が増えることを切り出した。

どうなることかと思ったけれど、いきなり怒り出すということはないようだ。

だが、小さな声で「やっぱり女好きなのかしら」と呟いたのが聞こえていた。

やっぱりってどういうことだ。

「条件ってなに、エリザベス?」

「そうですね。ひとまず、最初に確認すべきは私が正妻であるという点でしょうか。これが認められない限りはほかの女性との結婚を認めるわけにはいきません」

「まあ、それはそうだろうね。もともとそういう話で婚約することになっていたんだし、相手が増えるからってその根底を覆すようなことはしないよ」

「それを聞けて安心いたしました。ですが、条件はほかにもあります。子どもの財産相続権についてもしっかりと結婚前に確かめておく必要があります。たとえばですが、私に男の子が生まれない状態でほかの方が男児を出産された場合に、そちらが優先ということにはならないですよね?」

「財産のことはさすがにしっかりしてるよね。それについては、オリエント国の法に従うって感じかな。ブリリア魔導国の慣習なんかとはちょっと違う点もあるみたいだから、あとで一緒に確認しておこう。で、ほかにはなにか条件ってあるの?」

「そうですね。お話の中で気になったのは、継承の儀というもののことです。初めて聞きました。それについて、もう少し詳しくお聞きしたいと思います」

話の中でエリザベスが質問してくる。

まあ、当然か。

結婚するという話をしたときに正式に結婚式をあげるのはバルカ教会でだという話もしていたからだ。

そのときに、継承の儀というものがあり、それが理由で俺の故郷では長男が優先されたということも軽く説明していた。

というか、そうしないとエリザベス以外の女性と継承の儀を行って、その人のほうが先に男の子を出産したら継承権第一位になってしまうからだ。

さすがにそれは困るし、フォンターナ連合王国でも正妻としか継承の儀はしない。

だけど、そのへんの細かいことはエリザベスは知らない。

ただの儀式ではなく、魔法的な不思議な効力を持った儀式なのだと考えたエリザベスが突っ込んだ質問をしてきたので、それに対して答えることにする。

「……初めて知る内容ばかりでした。悪辣ですね。【命名】による名付けによって魔法を得る代わりに魔力の譲渡が行われるということは、ブリリア魔導国でも認識されています。また、名付けた者が死んだ場合には、その人から【命名】された者から魔法が失われるということも。ですが、継承の儀というものがあったのですね。それがあれば、永続的に魔力を奪い続けることができるではありませんか。相手がだれであっても、たとえ王であってもです」

簡単に説明しただけだったが、事の重大さをエリザベスは正しく認識したようだ。

このへんは庶民ではあんまり身近な問題として感じないからな。

普通の人にとっては名付けによって失われる魔力なんて体感的にはあまり気にならないくらいの量だからだ。

それに、フォンターナ連合王国では貴族や騎士でなければ継承の儀をしないし、一般人には関係がない。

が、魔力量の多さが地位にも関わってくる東方の貴族社会だとそうではない。

名付けによって魔力を奪われるだけではなく、下手したら子子孫孫に至るまでそれが続くかもしれないからな。

由々しき事態だと考えるのは当然だろう。

アイとのことがあるからエリザベスに話したけれど、まだ結婚に至っていない状態で説明したのはどうだったのだろうか。

ちょっと早まったかなと思い、エリザベスの様子をうかがいながら訊ねた。

「このことを知ったのはブリリア魔導国内では多分エリザベスが最初だろうね。どうする? 本国に帰って、王様にでも報告するか?」

「……それは、シャルル殿下もお知りにならないということですか、アルフォンス君?」

「多分そうなんじゃないかな? もし、継承の儀を知っていて、新バルカ街にあるバルカ教会でそれができるって分かっているんなら、すぐに飛んでくるでしょ。けど、そうはなっていないってことは、きっと知らないと思うよ」

分かんねえけど。

アルス兄さんがどこまで情報を流しているのか知らないし、どこからこの情報が洩れるか分からない。

が、状況的には多分知らない確率が高いと思う。

「分かりました。でしたら、そのバルカ教会での継承の儀をヴァンデンブルグ家の者も行えるようにお願いできないでしょうか?」

「うん。いいけど、エリザベスはそれでいいの? 前に話していた感じでは俺たちの子が請求権を持った後のことも想定しているみたいだったけど、実家も強くなっちゃうよ?」

「かまいません。むしろ、ヴァンデンブルグ家は強くならねばなりませんから。ここからは距離が離れていますし、ブリリア魔導国も派閥争いで大きな内乱が起こらないとも限りません。そのときに、一族の者が魔法を使えて、それを利用しての国内の影響力拡大ができるほうが大きいですから。それに、私との婚姻によってバルカ教の領内での設立と布教もするのでしょう? でしたら、私からお父様たちに改宗をするように説得いたしますよ?」

まあ、それならいいか。

それならば、こっちからも条件を出してもいいかもしれないし。

俺がエリザベスに名付けて、そのエリザベスがヴァンデンブルグ家当主のお父様に名付けをする、とか?

受け入れるだろうか?

あとでそのへんももう少し話を詰めよう。

「とりあえず、条件ってそのくらいかな?」

「何を言っているのですか、アルフォンス君!! もっとも重要な条件が抜けていますよ」

「おお? どうした、エリザベス。今までにないくらい大きな声を出して。ちょっとびっくりしたよ」

「失礼しました。ですが、大切なことが残っていましたから……」

「なに? ほかにもっと大切な条件ってあったっけ?」

「【回復】をかける、ということです。先ほどのアイさんのお話にもありましたが、本当なのでしょうか? 私に【回復】を毎日かければ、年老いることが無くなるというのは」

「えっと、多分ね? まだ検証が終わっていないから、絶対とは言えないけど、【回復】にはそういう効果があるのは確かだよ。俺の【回復】がその域に達しているかどうかってだけだけど、多分できているとは思うかな」

「分かりました。でしたら、アイさんやほかの女性たちとのアルフォンス君との結婚を認める代わりに、絶対に譲れない条件として私に毎日【回復】をかけていただきましょう。いいですね? 絶対に毎日ですよ?」

グイッと顔がぶつかるかというくらいまで近づけてそんなことをいうエリザベス。

どうやら、エリザベスにとって俺が複数の女性との結婚を持ち出しても認める最大の理由はそこにあったみたいだ。

まあ、女性だしね。

美の追求には終わりはないとか元高級娼婦だった女性陣には何度も聞かされていたから、分からなくもない。

が、毎日欠かさず【回復】をかけるって、意外と大変そうだけどできるだろうか?

戦場に行くこともあれば、仕事で街を離れることもあるしな。

絶対とは言えないかもしれない。

が、極力努力はしよう。

そのかわり、エリザベス自身にも医学や人体構造の勉強をしてもらって、自力で【回復】の効果を上げる努力はしてもらおう。

俺がそう条件返しをしたところ、エリザベスはそれでかまわないと言ってきた。

そんなこんなで、俺は見事正妻予定の女性から結婚相手の増加の許可をいただくこととなったのだった。