軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

学校

「てっきり新しい神父様でもやって来るのかと思ってたんですけど、新しい教会はシスターに任せられることになったんですね」

「はい。私もこの度司教となりましたので。新しい教会が建つと聞いて嬉しく思います」

「城を造ったときの建材が残っているからそんなに時間はかからないと思いますよ。教会と孤児院は行き来しやすいように作るってことでいいんですよね?」

「はい。ここバルカではあまり孤児はいないので、当分は私一人で切り盛りすることになると思いますから」

「なら、屋根のある渡り廊下みたいなものでつないでおきます。完成楽しみにしておいてください」

「よろしくおねがいしますね、アルス様に神のご加護を」

バルカニアに新しい教会を作ることになった。

その教会にはもともとパウロ司教と一緒にバルカ村の教会を運営していたシスターが行うことになったらしい。

おおよその様式などが決まっているようなので、それに沿って教会と併設する孤児院を建てることにした。

場所はバルカニアの外壁内の南東地区である。

南地区の中央には大通りがあり、自由市があり、その周辺は住宅地になっている。

そこから少し距離のある場所なので、多少スペースをとって教会と孤児院を建設していく。

そして、その建築作業を指示しながら、俺は新たな施設も作ることにした。

それは学校と職業訓練所の2つだった。

※ ※ ※

もともと、バルカ村やその隣村では貧乏な農民しかおらず、基本的にまともに字をかける人材すらいない。

そんな土地で農民出身の俺がバルカ騎士領としてこの2つの村を統治、運営することになった。

だが、それをまともに運営することは俺一人ではとうてい無理な話だった。

だから、行商人のおっさんを金庫番として雇入れ、バイト兄やバルガスに農民たちの訓練を任せ、あとは適当なものを割り振って仕事をさせて俺がそれを見て回るという運営方法になっていた。

しかし、これがなかなかきつい。

まともに文字を書けないため、仕事内容を確認するには実際に働いているところをみて、本人たちから直接口頭で報告を受けなければならないのだ。

だが、せっかく新しく植物紙まで作り出したのだ。

報告くらいは口頭でも構わないから、簡単な記録くらいは各自でつけておいてほしい。

そう思うのは当然のことだろう。

だから、俺は各自に字を覚えるように言っておいたのだ。

実はこの文字の習得について、俺は軽く考えていた。

なんといっても、【記憶保存】という魔法があるのだ。

覚えさせたい文字を書いて、魔法を使って覚えれば間違いなく記憶することができる。

覚える時間が多少かかろうとも、全員が字を使えることができるようになると思っていたのだった。

しかし、この考えは少々甘かったと言わざるを得ない。

というのも、【記憶保存】というのはあくまでも写真のようにその時見ていたものなどを正確に記憶するという魔法であって、別に頭が良くなるものではなかったからだ。

教えたことはきちんと記憶している。

だが、それを活用できるかどうかというと話は別だった。

単語はきちんと覚えて書くことができるようになっても、読みやすい文章が書けるとは限らなかったのだ。

試しに書いてもらった報告書も、覚えたいくつかの単語を羅列してなんとか意味を伝えようとしているものの、かなり読みにくい。

要するに単語を覚えることはできても、文章の法則である文法を理解してわかりやすい文を書いたりできなかったのだ。

これは数字を覚えても計算できないということにもつながる。

正直物足りない。

やはり、もう少しまともな学力がある人材がほしい。

そのための学校づくりだった。

「というわけで、学校を作ることにしたから頼んだぞ、カイル」

「えっ、ボクがやるの?」

「ああ、お前には期待している」

「何言っているの。ボクはまだ子供なんだけど。教えてほしいことがあるのはこっちの方だよ」

「いや、お前にしか教えられないことがあるんだよ。頼むよ、カイル」

この学校には俺の弟であるカイルを送り込むことにした。

といっても、俺よりも年下のカイルにすべてを任せるつもりはない。

基本は村にいる物知り老人に頼んで子供にいろいろと教えてもらうことにする。

教会と孤児院のそばにつくった学校はお昼前から開校することになった。

昼飯を無料で食べさせてやるから勉強しに来い、というスタンスの学校である。

授業は昼飯を食べる前にやって、勉強したあとに飯を食ったら解散だ。

基本的には老人が昔話をしながら、かつてあったことなどを教えている。

その中に、商人たちが臨時講師となって字と計算を教えてくれることになった。

そして、そのなかにカイルの授業があった。

だが、カイルが教えるのは文字の書き方でも歴史や地理でも、計算でもない。

魔力の使い方だった。

かつて俺が教えた魔力の使い方。

バイト兄はそれをもとに肉体を強化して、まだ子供ながらに戦場でも活躍できる強さを手に入れる事ができた。

だが、魔力には別の使い方もある。

それは頭を良くするというものだ。

バイト兄のように筋力に魔力を振り分けるのではなく、頭に魔力を集中させるようにする。

そうすると、集中力や判断力、記憶力などが劇的に向上するのだ。

俺はこの魔力操作をカイルに教えたことがある。

この結果、カイルは幼いころからいろんなことを勉強して、かなり頭脳明晰になっていたのだ。

実はバルカ騎士領の事務仕事の多くをカイルにも手伝ってもらっていたりする。

まだ子供のカイルがそこまでできるのであれば、他の子供にできないはずもないだろう。

勉強そのものを教えるのではなく、頭の回転そのものを向上させる方法をカイルを通してバルカの住人たちに教えることにしたのだ。

こうして、バルカでは魔力トレーニングの方法が広まり始めたのだった。