軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

布教の効果

バルカ教の布教活動の活発化。

これは、オリエント国周辺でかなりの影響を与え始めている。

かなり無理をして、バルカ教会から人を派遣していろんな街で儀式を行ったことで、教会が認めた信者の数というのが一気に膨れ上がったからだ。

そのなかでも、治安の回復というのは一番ほかの国に大きな影響を与えていると思う。

今まで何年も占拠されていた、それなりの規模の街などが元の国へと戻ってきたからだ。

そのおかげで、人手と金が手に入るようになり、今までの不況という状況からの脱却に繋がりそうな気配を感じ始めていた。

さすがに周囲の国もここしばらくの不況はなんとかしないといけないと思っていたのだろう。

オリエント国が積極的に内政を行い、国力を増しているのを横目に見ていたこともあり、土地開発に乗り出し始めた。

バルカ教会が行った儀式では自分勝手に魔法を使ってはならないといったものがある。

が、これは街の中ではという注釈がつく。

つまり、街の外へと一歩出れば魔法は使えるということでもあった。

これは、俺が最初に儀式を考えた時に利便性を考慮したからだ。

街の中で勝手に【道路敷設】や【壁建築】をされたら困るけれど、街の外を開発したいときに使用できないのはどう考えても困るからだ。

そういうわけで、一般人も街から一歩出れば魔法が使える。

そして、その魔法の中でも【整地】や【土壌改良】をすれば短期間で農地改良もできる。

これには魔力さえあればいいわけで、力の弱い女性や子ども、あるいは老人でさえも仕事ができるということでもあった。

国によってはオリエント国同様に川の工事もしようとしているところもあるようだけれど、一番はこの魔法による農地開発で食料生産を増やすのが手っ取り早い不況対策と考えられて実行されている。

別にこれらの対策は独自勢力が無くならなくてもできただろうけれど、喉元に邪魔な存在がいなくなったことで一気に進められるということらしい。

また、治安維持のしやすさ自体もバルカ教会が進出して以降、やりやすくなっている。

というのも、儀式における条件はけっして一つの形だけではないからだ。

オリエント国もそうだ。

バルカ教会は信者にたいして儀式を行い、腕輪を渡す。

それは誰に対してもそうだけれど、一般人と兵、あるいはバルカ傭兵団では少し条件が異なる。

一般人にたいしては街中で殺人や盗みは禁止するけれど、兵などにたいしてはそれを禁止していないのだ。

というか、そうしなければ警備もできないのだから当然だろう。

そして、それはグルーガリア国から俺に手紙を送ってきてバルカ教へと改宗したヘイル・ミディアムなどにもそうしている。

グルーガリア国首脳部や軍関係者は一般人とは異なる条件が示されて儀式が行われていた。

これにより、国内の街中での治安維持は無抵抗な住人と一部の不信心な人を力ある兵が見張ればいいということになっている。

かなりやりやすくなっていることだろう。

この兵士用の儀式は誰に何人くらい受けさせるかはこちらが決められれば一番よかったが、さすがにそれはしていない。

兵数の上限規定なんてことをしようものなら、どの国も難色を示すからだ。

もしも、こちらの都合を優先させれば、あえて儀式を受けさせない非バルカ教徒の兵ができるだけだからな。

今、一番重要なのはバルカ教会の影響力を高めることとして、各地でだれにどの儀式を受けさせるかを決めるのは、その国に任せることにしている。

だが、それだけの苦労をして、譲るべきところは譲っても布教を優先するのはその分利益があるからだ。

もっとも、オリエント国にというよりは、俺、あるいはバルカ教会にだけれど。

その一番の恩恵はエンの使用者が増えたことだろう。

今まではオリエント国という小国家群の中でも弱小と言われる一つの都市国家でしか流通していなかったエンを使う国の数が一気に五倍に増えたわけだ。

当然、そこに住む人の数もそれに比例するように多くなる。

エンは銀換算で得られるが、庶民感覚では小数点以下での運用も用意されているので日常生活でも十分使いやすい。

そして、最近になってようやく例の行動が実を結んだのも大きい。

白犬人たるエルちゃんたちの数が、ようやく増え始めたのだ。

鉄を銀に換えるあの錬銀術を使える魔物の数がようやくだ。

これにより、今までよりもさらに製鉄した良質な鋼を純度の高い銀に換えてエンとして使うこともできる。

ちなみに、今までの研究で白犬人という魔物は一年で繁殖期になる日数がわずか数日という恐ろしい短さだということが分かってきた。

しかも、その数日で交尾して子を残すかどうかは運次第かもしれないらしい。

さらに言えば、着床してもうまく成長するかもわからないときたものだ。

どうやって今までこの魔物たちは生きてきたんだろうか?

そう思ってしまうくらいの繁殖力の低さだったが、受精卵を取り出して犬の母体で育てて産ませるという借り腹手法がうまくいくことが分かったのが救いだろう。

白犬人と犬や狼の交配は結局うまくいかなかったが、とりあえず受精したエルちゃんのおなかを切って受精卵を取り出して、犬の母体に入れて俺が【回復】かけてやれば、自然に任せるよりは子どもが生まれやすいということだ。

これで、一定程度まで数を増やせば、あとはもう少し自然に任せてもいいかと思うけどどうなんだろうか。

そんなことがありつつも、バルカ教の布教とともにエンの流通量も増えている。

これが他国の兵数の規定などよりももっと大きな意味を持つだろう。

今はまだ、各国で増えた信者がエンを使い始めたといっても、実際には既存の実在通貨を使う人のほうが多い。

が、そのうち、エンのほうが使用頻度が多くなって逆転するだろう。

そのときになって、グルーガリア国やほかの小国は気が付くだろう。

エンを使った取引は基本的には個人間でのものだ。

そのエンを国が税として取り立てるのに、個々人から回収するのはできなくはないが、人手と手間がかかる。

それをバルカ教会なら一括でできる。

全住民から一斉に税を引き落とすという人の手を介さない徴税方法が、すべての腕輪と戸籍情報、そしてエンの管理をしているアイだけはできるのだ。

この重要性を把握している者はまだいない。

というわけで、そのことが気づかれる前にさらにバルカ教の布教を頑張っていったのだった。