軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

結婚式とその後

「はあ、なんとか無事に結婚式が終わった……。こんな大騒ぎになるとは思わなかったけどな」

「アルス様、お疲れ様でした。よろしければ、お飲み物はいかがですか?」

「ありがとう、リリーナ。いただこうかな」

なんだかんだといろんな事がありながらも、リリーナとの結婚式が無事に終わった。

いや、本当に大変だった。

俺の中での結婚式と思っていたイメージと実際の結婚式が違ったことにある。

新しく建てたバルカ城にフォンターナの街から輿入れしてきたリリーナ。

彼女を城に迎え入れ、謁見の間を利用して祝言をあげた。

当然、結婚の誓いについての宣誓の儀を執り行ったのはパウロ司教だ。

パウロ司教が読み上げる誓いについて、俺とリリーナは同意し、口づけを交わす。

それを見届けた関係者が大いに拍手をする、という流れだった。

これだけなら、俺のイメージどおりであったと言えるだろう。

だが、違ったのがここからだ。

結婚した俺とリリーナに祝いの言葉を言いに、人々が列をなして並んでいるのだ。

それも身内である父さんや母さん、バイト兄たちやカルロスやリオンといった関係者だけではない。

調度品を持ってきていた商人たちや、俺と一緒に戦った農民、さらには全くみたこともない連中までやってきていたのだ。

理由は食事だった。

結婚式に参加したものには食事を振る舞うのがマナーである、というのがこのあたりの風習らしい。

これは庶民レベルでも同じだったが、貴族でも同様だそうだ。

だが、俺は貴族でもあり、農民出身だったため、いろんな身分のものが割とフランクに式に参加してきたのだ。

しかも、料理を担当したのはリリーナの実家であるグラハム家の人間であるため、農民では普段食べられないような料理が出てきた。

それを聞いた連中は我も我もと城へと押しかけてきたのだった。

合計3日もの間、俺が自分の結婚式のために料理を振る舞い続けるというイベントが開かれた。

当然、酒を飲んで暴れるようなやつもいないでもない。

なかなかにカオスなことになっていたのだった。

「まあ、よいではありませんか。アルスの結婚式を私が挙げることができ、嬉しく思いますよ」

「パウロ司教、わざわざありがとうございました。最近はフォンターナ領の各地を移動して回っていると聞きましたよ。忙しいんでしょ?」

「いえいえ、アルスが領内に道路を造ってくれているおかげで、移動そのものはかつてほど大変ではありませんよ」

「結構あちこちに作りましたからね。だいぶ通りやすくなりましたもんね」

「はい。大したものです。それにこの城もすごいですね。わたしはここまで神聖な結婚式をあげた経験がないと思ったほどです。見事なものです」

「ありがとうございます」

「ですが、ひとつ気になっていることがあるのですよ、アルス」

「気になることですか? なにか変なところがありましたか?」

「ええ、実におかしなことがあります。このバルカニアの城下町の中には教会がひとつも見当たらないのですが、どういうことでしょうか?」

「えっ? あ、そういえば確かに教会はなかったかも……。い、いや、でも、もともとのバルカ村にはまだ教会が残っていますよ、パウロ司教」

「ほう、つまり、あなたはこの街の中には教会が不要だとおっしゃるのですね?」

「滅相もない。実は教会をつくる場所は確保してあるんですよ。そうだ、南東エリアがいい。あそこならすぐに作ることができると思います」

「そうですか。アルスのように信心深いものがいて神もお喜びでしょう。ぜひ、お願いしますね」

「サー、イエッサー!」

「ああ、そうだ。アルスは知らないかもしれませんから一応伝えておきましょう。街にある教会にはぜひ孤児院も併設しておいてください。大きな街にある教会はだいたいそうなっていますので」

「孤児院ですか。わかりました」

「頼みましたよ。それではわたしはこれで失礼します。アルス、リリーナ様、二人のこれからが幸せなものとなることを祈っています」

「ありがとうございます、パウロ司教」

そういって、パウロ司教が部屋を出ていった。

しかし、教会か。

完全に忘れていた。

「アルス様、いい人でしたね、あのパウロ司教というお方は」

「そうか? まあ悪い人ではないけど」

「良いお方だと思いますよ。あのようにアルス様に足りないものを遠慮なく言ってくださる方は大変貴重だと思います。今後も何かあれば相談されると良いと思いますよ」

そういうもんだろうか?

どっちかと言うと弱みを握られている分、いつ脅されるのかとヒヤヒヤしているのだが。

だが、教会を作るという話自体は悪いことではない。

パウロ司教は別にタダ働きしろと言ってきたわけではなく、教会建築の費用を置いていってくれた。

結婚式関係で金欠気味になっていた俺のお財布にはありがたい申し出だとも言える。

本当に俺の財政事情を把握しているのではないかというくらいありがたいタイミングだった。

さらに言えば孤児院の併設が必要というのも知らなかった。

だが、確かにあったほうがいいだろう。

そうだ、孤児院を作るならついでに学校みたいなものでも作ってしまおうか。

グラハム家の人間を雇い入れたはいいが、それでも事務仕事を任せられる連中が少ない。

最低限の教育機関くらいあってもいいかもしれない。

そう考えた俺は、バルカニアの南東区に教会と孤児院、学校、さらには職業訓練所も作ることに決めた。

こうして、結婚式直後から俺はバルカニア内の開発を再び行うことになったのだった。