軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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「うーん。待っているだけってのはあれだな。だんだん不安になってくるな」

「早く上に帰ってこいとノルンに伝えればいいんじゃないか?」

「それができればいいんだけどね。魔剣と違って、鮮血兵のほうのノルンは自立型なんだよ。向こうで独自の意思を持って自己判断で動いているから、こっちからは呼び戻せないんだよね」

土喰はどうやら精霊石の気配に引き寄せられているようだ。

ラッセンが調べている最中もずっと地面の奥深くへと向かって穴を掘り進んでいるらしい。

もしも万が一にもノルンが襲われたら困る。

とはいうものの、呼び戻す手段がなかった。

大丈夫だろうかとそわそわしてしまう。

鮮血兵自体は魔導迷宮で採れた赤黒い魔石を核にして、俺の血で作ったものだ。

俺の血に含まれるノルンが赤の鎧となり、自分の判断で行動している。

そのために、遠く離れた場所でもその場に応じて動くことができるものの、こちらの異変には向こうが気付くことはない。

鮮血兵のいい面、悪い面のうちの今回は悪い面が目立っているということになるだろうか。

早く帰ってきてほしいものの、それをつたえる術はない。

なので、地上でずっとそわそわし続けることになってしまった。

というか、魔法鞄を預けたノルンが戻ってこないと、こちらの食料も手持ちの少量だけになってしまう。

そうなったら、盗掘許可を得た期限を満たさずにバリアントへと戻らなければならなくなってしまうかもしれないのだ。

「無事に帰ってこられるかどうか、確率は半分あればいいほうかな」

「そんなに低いのですか。バルカ殿? あのノルンさんというのは獄炎釜からも帰還したのではなかったですか? それならば、きっとなんとかなりますよ」

「だといいけどね。千メートルも直下型の穴の底にいるからな。土喰がいなくても、戻るのは時間がかかりそうだけどね。どうなるかな」

まあ、これ以上心配してもしょうがないか。

あとはノルン次第だしね。

それに、土の中を移動しているという土喰だが、すぐにノルンのいる地底にたどり着けるわけでもなさそうだ。

ラッセンが言うには、ラッセンの堀った縦穴は小さすぎて、土喰の体の大きさには合わないのだそうだ。

なので、自分で穴を掘って千メートル下までたどり着く必要がある。

が、あの巨体を通すための穴を口で土を食べながら掘り進めるのは相当時間がかかるだろうというのが、ラッセンの予想でもあった。

実際、進む速度は遅いらしい。

「しっかし、あんな魔物がいるんだったら、アトモスの里ってもっと穴だらけになっているんじゃないのかな?」

「確かに。それは私も思いました。もしかしたら、この渓谷という地形は土喰が穴を掘ったことで、地盤沈下してできたのかもしれませんね。なんとなく、そんな気がします」

「へえ。魔物によってできた地形ですか。確認しようがないですけど、もしかするとそうなのかもしれませんね。そう考えると、面白い場所ですね、ここは」

ノルンのことは不安だが、土喰がこちらに来ない感じなので、周囲の緊張はだんだんと解かれていった。

ラッセンも仮説の話をし始めたくらいだ。

たしかに、この大渓谷ができたのは魔物の力も関係しているのかもしれないな。

あるいは、ものすごく強い奴が地面をえぐった跡かもしれないけれど。

イアンは以前、アトモスの里の伝承で先祖の戦士たちが戦ってできた大地の裂け目だとかいう話もしていたし。

大昔の話らしいけれど、嘘とは言えないからな。

実際、アルス兄さんは地形を大きく変えちゃっているし。

そういうことをした人がいたとも限らないだろう。

「ま、そういう話はまた今度ですね。とりあえず、ラッセン殿は俺やイアンの魔力も使っていいですから縦穴に変化をつけてくれませんか?」

「分かりました。穴の側面に梯子のような突起を作りましょう。ノルンさんが少しでも地上へ帰還しやすいようにしておくくらいしか、我々にはできませんからね」

「我々っていうか、ラッセン殿だけですけどね。そういうわけなんで、お願いします。今、頼りになるのはラッセン殿ですから」

そう言って、俺はラッセンの体に触れて魔力を送りこむ。

魔石よりも俺の魔力のほうが効率がいいみたいで、土をいじりやすいといいながら、ラッセンは土操作を行った。

俺の魔力が尽きそうになると、かわりにイアンが魔力を供給する。

そのかいがあったのか、鮮血兵ノルンはしばらく経ったころに無事に地上へと戻ってきた。

「お疲れ様、ノルン。よく無事に帰ってきてくれたな」

「……なにかあったのか?」

「ああ。手傷を負った魔物が地底の精霊石目指して土の中を進んでいたんだよ。ノルンと地面の下で鉢合わせしないかどうか、心配していたんだよ」

「へえ。そんなことになっていたのか。確かに、なにかの気配があるように感じたが、魔物だったんだな。あんな光もない中では状況がつかめなかったから判断がつかなかった」

「とにかく無事でよかったよ、ノルン。で、首尾はどうだった?」

「中身を確認しろ、アルフォンス。ひとまず、完全な暗闇の中で適当に魔力のありそうな石を片っ端からこの鞄に入れてきたからよくわからん」

そう言って手渡してきた魔法鞄。

土や砂を鞄の表面からはたいてから、中身を確認する。

魔法鞄へと手を入れて、掴みだしたそれはまさしく精霊石だった。

「よくやった、ノルン。間違いなくこれは精霊石だよ。これがあれば、アイもたくさん増やせるな。お宝だよ」

それなりの倉庫にいっぱい積み上げることが出来そうな量の精霊石。

それが魔法鞄に詰め込まれていた。

ラッセンが言うにはもっと大量に地下にはあるようだけど、もう一度ノルンに行かせるのはやめておこう。

魔法鞄を失う危険も考えるとこれ以上は無理だ。

「んじゃ、帰りますか」

「もう帰るのか?」

「ああ。盗掘できる期限はまだ残っているけど、これ以上ここにいたってしょうがないからな。さっさと帰ることにしよう」

新月の日まではまだ時間はある。

が、目的は達成したので帰ることにした。

魔法鞄に大量の収穫を入れて、俺は意気揚々と帰路に就いたのだった。