軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

調度品集め

「でも、どうするつもりなんだ、クラリス。グランが作った品以外を置くといったって、木こり連中に木工作品でも用意させるのか?」

「アルス様、何を寝ぼけたことを言っているのです。もちろん、よそから職人を呼び寄せるのですわ。名工アルマーリやバーバラなどといった一流の職人を呼び寄せて、この城にあったものを作らせるのですわ」

「いや、ちょっと待った。今から余所の土地の職人を選んで呼び寄せて、それからこの城にあう調度品をつくるってか? リリーナとの結婚までそんなに時間はないから無理があるぞ」

「そうでござる。どうしても気に入らぬというのであれば拙者に言えば、それに沿ったものを造るのでござるよ」

「グランさんは黙っていてくださいませ。アルス様、このお城のステンドグラスというのはわたくし初めて見ましたの。それはもう心をときめかせてしまいましたわ。この感動をさらなる高みへと昇華させるにはやはり調度品も一流の職人の作品を用意すべきです」

「そんなこと言ったってな。時間的に無理なら諦めるしかないだろ。妥協案としては一流の職人とやらが作った既存のものを買い取るくらいか」

「それはこのお城にあったものを新たに作らせるのではなく、すでにある作品を用いるということですの? ここは少々奇抜な作りになっておりますので、合うものを探すには直接見るしかありませんが……」

「それでいいんじゃないのか? 商人に言って調度品を集めさせよう。そうだな、おっさんに頼んでひとつのイベントみたいにしてしまおうか」

「アルス様、イベントというのは?」

「バルカニアに来ている商人たちにこう言うんだよ。この城にあった調度品を集めてきて、それがクラリスのお眼鏡に適えばそれを買い取るときに表彰でもしようか。目利きの実力のある商人だと格付けチェックする行事にしてしまおう。俺たちバルカはともかく、グラハム家は一応歴史ある騎士家だ。そこから目利きの腕を認められるとあれば、商人たちもやる気を出して品を探してくるだろう。どうかな?」

「それは、……いいかもしれませんが気になる点もありますわ。先程も言ったようにこのお城はわたくしも見たことがないものです。それに合う調度品を、その……なんと言っていいのか、ここに集まる商人たちに集めることなどできるのでしょうか」

うむむ。

そう言われるとそうだな。

一応自由市にしてから商人がぼちぼちと来てくれてはいるが、貴族家とかかわり合いのあるような力のある商人はいないかもしれない。

というか、おっさんが知り合い関係に声をかけて来てもらっているという面もある。

おっさん自身も俺のヴァルキリーを取り扱うまでは貴族との伝手なんかなかったと言うし、クラリスのいうセンスのいい調度品選びができるかどうかなど分からない。

だからといって、なんでもいいからもってこいと命じることもできない。

なんでも買い取るなんてことは金額的にも無理だが、商人側も嫌がるだろう。

なんだかんだ言ってこのご時世に高価な調度品を持って移動していたら盗賊などに狙われて命を落としかねないのだから。

売れるとわかっていれば多少の危険を冒しても、護衛でもつけて運ぶことはできるが、売れるかわからないのであればそれも難しい。

せめて、これなら売れるという確信を商人側に持ってもらえなければ調度品を集めるのも難しいのかもしれない。

「うーん、それならこれを使うか。これをおっさんを通して商人に渡そう。こいつがあれば、どんな調度品が城に合うか、判断材料になるだろうしな」

「あ、アルス様、これはいったい何なんですの? まさか、このようなものが……」

「ん? この城を造る前に試作として造ったミニチュアのバルカ城だよ。ほら、こうして端を引っ張ると左右で分かれるんだ。こうして光にかざすと、謁見の間のステンドグラスの光加減も再現されてるんだよ。すごいだろ」

俺がクラリスたちに見せたのはバルカ城の実物を縮小させたかのようなミニチュア模型の城だった。

真ん中で左右に分かれるというギミック付きで、結構精巧にできていると思う。

これをおっさん経由で商人に渡せば、実物と見紛うほどのミニチュアと見比べながらこの城に合う調度品を選ぶことができるだろう。

商人としての格付けをされるとあれば、結構必死になって探して、売れると思うものを運んできてくれるのではないだろうか。

「す、すごいです、アルス様。このようなものがあるなんて……。あ、あの、あとでその模型を頂いてもよろしいですか。リリーナ様にお見せしなければ」

「ああ、いいよ」

「アルス様、よろしいのですか? 城の構造はあまりみだりに不特定多数の眼に露見しないようにしたほうが良いのでは?」

「その心配はないよ、リオン。これはあくまでもステンドグラスの再現をメインに作った模型だからな。外見と謁見の間は正確に造ったけど、それ以外は簡略化もしてあるから」

「そうですか。ですが、念の為に用心はしたほうがよろしいかと。この模型は貸出ということにして、調度品を集める際には回収するほうがいいでしょう。返さないものがいればそれなりの対処が必要かと思います」

「わかった。ならそうしようか。じゃあ、この模型をいくつか作っておっさんに商人へ渡すように言っておくよ。集まった調度品を見て、この城に適切だと思うものをクラリスが選んで配置する。グランもそれでいいな?」

「く、それなら拙者も調度品の審査には参加させてもらうのでござる。新品でないのであればどのような不良品があるかわからないのでござるよ。クラリス殿が見た目だけで判断して、使い物にならないものを買い取ることがないようにチェックするのでござる」

「ああ、それならグランも審査をよろしく」

こうして、バルカ城はクラリスとグランによって完成されていった。

それまでの、これ見よがしにおかれた品々は取り除かれ、落ち着いた気品ある品が必要最低限だけ、必要な場所に置かれるようになったのだ。

今までは城ができた直後の興奮もあり、気にならなかったが、確かに調度品が一新されたことで城の中が落ち着いたリラックスできる空間へと変わったのだった。

ちなみにバルカ騎士領ができてからはじめた金策で貯めたお金が、この一件で再び底をつきかけたのは言うまでもない事かもしれない。

結婚が無事に終わったら、また稼がなければならない状況になってしまったのだった。