軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

回収

ゴクリ。

俺の隣にいるラッセンの喉からそんな音が聞こえた気がした。

ちょっとビビっているみたいだ。

【ラッセンの獄炎釜】から這い上がってこちらへと向かってくる人影。

ゆらゆらと揺れて見えるのは周囲の炎の影響か、あるいはそいつが燃えているからか。

もう少し周りを見渡してみれば、ほかにもいた何人かの作業員たちも「獄炎釜から地獄の使者がやってきた」みたいな雰囲気を出している。

「大丈夫だったか?」

「なんとか、な。だが、だいぶ消耗した。かなり力を失ったぞ」

だが、周りの人が怖がるのとは対称的に俺は冷静だった。

なぜかというと、そいつが何者であるかを知っているからだ。

当たり前だ。

だって、そいつはもともと俺の血でできているんだしな。

「ラッセンの獄炎釜の中は燃え続けているからな。あの炎の影響で血が蒸発したんだろう。だけど、その様子だとちょっとは中の様子が分かったかな」

「ああ。といっても、内部は外から見たように地面に大穴が開いていて、その穴の中がずっと燃えているのはそのままだな。だが、原因は多分こいつだろう。これが燃えていた元凶だ」

なぜ、魔剣ノルンが地面に開いた大穴から出てきたのかというと、俺がそこに送り出したからにほかならない。

ようするに偵察に出したのだ。

十日間もずっと炎が消えずに燃え続けている獄炎釜を調べるためには、誰かがそこに行くのが一番手っ取り早かった。

が、人間が行くにはさすがに厳しい。

俺が行くわけにもいかず、ほかのだれかに行かせるのも成功の見込みがなかった。

そこで、ノルンの出番だというわけだ。

魔石に俺の血で実体化させた鎧姿の鮮血兵に獄炎釜の様子を見に行かせたというわけだ。

そして、そのノルンはなんとか無事に帰ってきた。

といっても、最初の重厚な鎧姿が帰還時には変わっていたけれど。

どうやら、血でできた鎧が燃えて蒸発してしまったようだ。

が、蒸発する代わりに内部の魔石が燃えることなく情報を持ち帰れたということなんだろう。

鎧がとけてただれたような、丸みを帯びた外観になった鮮血兵ノルンが手にした物体を俺に渡してきた。

「なんだこれ? 石、じゃなさそうだな? 鉄でもないみたいだし、なんだろう?」

「そいつに魔力を流してみな。面白いことになるぞ」

「魔力を? こんなふうにか……、って、うおっ。火が、炎が出てきたじゃねえか」

「ああ。どうやら、そいつがあの穴のそこかしこにあるみたいだな。そして、地面の奥から漏れ出た魔力に反応しているのか、そいつが炎を出している。例え、穴の上に蓋をしても魔力が流れてくるかぎりはおそらく火が消えることはないだろうな」

ノルンが手渡してきたものに魔力を通すと炎が出た。

びっくりした。

思わずそいつから手を放して落としてしまう。

落ちた後も炎が出ていたが、しばらくして消えていく。

どうやら、込めた魔力が少なかったからたいした時間は炎が出なかったのだろう。

「いや、っていうか、これってもしかして……」

「炎鉱石ですね。なるほど。炎鉱石の採掘地として知られる狐谷も毒が充満した地です。なにか関連があるのかもしれませんね」

俺が火の消えたそいつを拾い、アイに見せた。

するとすぐに、その物質の正体についてアイが教えてくれた。

どうやらこれは炎鉱石で間違いないみたいだ。

たしか、バイト兄さんの領地にある狐谷だけで採れる不思議な鉱石だったはずだ。

魔力を込めれば炎が出るその炎鉱石は、断層がある狐谷でのみ発見されている。

もしかして、その狐谷も昔は地面から火を噴いたりしていたことがあるんだろうか。

だけど、そこは今は別に山が噴火するとかいう話は聞いたことがなかったように思う。

それをアイに確認してみたけど、やっぱり噴火の話は出ていないということだった。

記録には残らないくらい大昔に似たようなことでもあったのだろうか。

ってことは、もしかしたらこの獄炎釜の付近に発生した毒って何年も消えないのかもしれないな。

今のところ、この毒に関しては何で発生しているのか全然わかっていないし。

まあ、いいか。

毒が出ていようがなんだろうが、【毒無効化】があれば大丈夫なんだし。

それよりも重要なのは炎鉱石だ。

まさか、こんなものが手に入るとは思いもしていなかった。

大量にある油が手に入れられるかもってだけだったのに、思わぬ収穫だ。

「よし、大発見だぞ、ノルン。もっとたくさんこの炎鉱石を採ってきてくれ」

「それはいいが、あの炎の中に入るならまた血を失うことになるぞ。そう何度も往復するのは無理だ」

「あ、そうか。いくらでも採りに行けるってわけじゃないのか。しょうがない。できる範囲でいいから、たくさん採ってきてくれ」

魔力に反応して炎を出す炎鉱石は魔法剣なども作れる材料になるはずだ。

こんなにいいものはないと、もっと採ってきてくれとノルンに言った。

が、そう簡単ではなかったようだ。

どうも、思った以上に血を消耗していたようで、そんなに大量に持って帰れないみたいだ。

ちなみに、ラッセンが地面に魔力を流して獄炎釜の中の炎鉱石をうまいこと取り出せないかと思ったが、どうやらできなかったようだ。

がっぽりとお宝回収というわけにはいかなかった。

が、少数ながらも炎鉱石を手に入れられたのは大きい。

それに、今後も血を集めさえすればまたノルンに採りに行かせることもできるだろう。

なんにせよ、こうして俺は炎鉱石を手に入れたのだった。