軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

センス

「まったく、このような建物を建てていながらなんという品性のなさですの。正気を疑いますわ」

「何を言うでござるか。拙者の作ったものに対してケチをつけようというのでござるか」

「ふん。あなたのようなどこの馬の骨とも知らないものが作ったのですか。それならこんな事になっているのもうなずけますわ」

「な、どういうことでござるか。拙者はともかく一緒にこの城を作ったアルス殿を侮辱するようなら許さないでござるよ」

「そこです。この城はあなたではなくこのバルカ騎士領の当主であるアルス様がお作りになったのですわ。その城がこのような有様ではアルス様の感性が疑われると言っているのですわ」

俺がリオンに城内を案内して一周りし、謁見の間に戻ってきた。

そこで何やら大声で言い争いをしているのが聞こえてきた。

普段あまり聞かない口調の2人が面を向かい合わせて言い合っている。

というか誰だろうか、あのですわ口調の女の子は。

「クラリス、何をしている。アルス様の前で失礼ですよ」

「あ、アルス様、リオン様。申し訳ございません」

「はじめまして、クラリス。俺はアルスだ。で、そこのグランとなにやら言い争っていたみたいだけど、どうかしたのか?」

「はい。恐れながらアルス様に進言したいことがあるのですわ。よろしいでしょうか?」

「俺に言いたいこと? なんだろ」

「このお城に置いている調度品を変えることをおすすめしますわ。このままではアルス様は貴族の皆様に恥をかくことになりますの」

「調度品を変える? 城を造ったときにグランがいろいろ追加で作って置いたんだけど、なんで変える必要があるんだ?」

「そうでござる。みんな拙者の力のこもった一品ばかりでござるよ。どれも見事なものでござろう」

「甘いですわ。確かに一つ一つの品を見れば、手を抜かずに作ったことは認めるのです。ですが、どれも主張が強すぎるのですわ。このような品をアチラコチラに置いているようであれば、アルス様はご自分を大きく見せようと虚勢を張っていると思われても仕方がないのです」

「……ああ、なるほど。要するに成り上がりものが成金趣味を出しまくってる感じになっているのか」

「さすがアルス様。そこの造り手はこのことをまったく理解しませんでしたので困っていましたの。そのとおりですわ。もっと城との調和を考えて調度品を置くべきですわ」

「い、異議ありでござる。この城は拙者とアルス殿が創り上げた作品でござる。いきなりきたものにとやかく言われる筋合いはないのでござるよ」

「グラン、ストップだ。そういえば、クラリス、君はいったい誰なんだ?」

「申し遅れました。わたくし、リリーナ様の側仕えをしておりますクラリスと申します。リリーナ様のご婚姻前の準備にリオン様とこちらに伺いましたの。以後、お見知りおきを」

「すみません、アルス様。この城の見事さに見とれている間にクラリスが勝手な行動をしていたようです」

どうやら、このクラリスという若い女性はリリーナの身の回りのことをする人のようだ。

グラハム家が騎士領を失ったあとも仕え続けていた人なのだろう。

それが今回ここに来て、城を見て意見を言い始めたようだ。

ちょっと唐突だったが悪い人ではなさそうだ。

それにしても、そんなにセンスが無いように見えるのか。

ぶっちゃけ、俺はグランが次々に作っていった作品を適当に見繕ってあっちに置いて、こっちに置いてと振り分けていっただけだ。

だから、城全体をみてトータルバランスを整えるようなセンスは一切発揮されていないと言われればそれも間違いないだろう。

だが、仕方のない部分もある。

この城は今までにないステンドグラスを全面に押し出すようにして作った城なのだ。

それに合わせる調度品としては城のコンセプトを理解したグランの作品が合うと考えたのも決して間違いではないとおもう。

「いいえ、アルス様。アルス様がご存じないだけで、この城の魅力をもっと引き立てる調度品というのはたくさんあります。アルス様、ぜひこのわたくしめに調度品の選定をまかせてくれませんか」

「君に?」

「はい。かならずや、アルス様とリリーナ様のご結婚とその後の生活を最高のものにする空間づくりをしてみせますわ」

なかなか、押しの強い女の子だ。

だが、それもいいかもしれない。

どうも俺とグランは必要なものや新しいものを造る情熱はあるものの、それは実用性や機能美といったものに偏りがちだからだ。

単純な審美眼や配色、位置取りといったものや、小物選び的なセンスはあまり高くないと言えるかもしれない。

であればクラリスに任せてしまってもいいかもしれない。

リオンを始めとしたグラハム家に仕事を任せるという話もあったし、その第一号となってもらうことにしよう。

こうして俺とグランが造った城はクラリス先生によって、美しさの採点と添削が行われることになったのだった。