軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ラッセンの大暴落

「まじかよ。こんなもんまで抵当に入れて魔道具買ってた馬鹿がいるのか……。っていうか、よくやった。お手柄だね、クリスティナ」

「ふふふ。もっと褒めてくれてもいいのよ、アルフォンス君。まあ、もともと魔道具相場がいつかは下がるってのは前から分かっていたしね。私も前から暴落した後のことを考えて行動していたってわけ」

「それが金貸しか。貸した金が回収できなくなるかもしれないのによくやるよ」

「だからこそ、担保がしっかりした相手にしか貸していないの。おかげでいい場所が手に入れられたから私の勝ちよ」

魔道具相場が暴落した。

予定、あるいは予想していたとおり、それは夏の終わりごろに起こった。

というか、起こしたというべきか。

こっちもある程度時期を誘導するために動いていたからだ。

暴落を予想した張本人であるシオン。

彼女の占いによって知りえた未来を作り上げるために、俺が考えた暴落原因を影の者たちを使って噂として流したのだ。

最近、流通しているはずのお金が不足気味だから国が金貨や銀貨を集めるかもしれない、と。

各地でそんな噂が流れ始めた。

けれど、それは何の確証もないただの噂だ。

そのことについて耳にした人も「へー、そうなのか」くらいにしか思っていなかっただろう。

だが、人によっては確認する。

もしそれが本当であれば、それに備えて先に行動したいからだ。

そうして、とある国の役人にそれを確認した者がいた。

その結果、返ってきた答えはその事実を肯定するものだったという。

なるべく、大国が発行している硬貨で税を納めるのが望ましい、というものだ。

まあ、その答え自体は当たり前といえば当たり前だろう。

国で働く者ならば誰だってそう答える。

小国が独自に作る硬貨やそれ以外のもので税を納めさせるよりもはるかにいいからだ。

だが、その返答を聞いた者がいち早く現金化に動いた。

魔道具を売却し、それにより現金を得ようとしたのだ。

しかも、それを周囲に声高に叫びながらだ。

その情報を影の者を使っていち早く確認したら、こちらも売り浴びせたわけだ。

それまでもちょくちょく売っていたが、一気に多数の魔道具を売り払った。

その時まではまだそれなりの金額での買い手がついた。

だが、数が多かったのだろう。

俺がそうし始めたのを見て、クリスティナやほかの身近な人間も同じように売り始めると状況が変わった。

魔道具相場の暴落は事前に予測しえる情報だったので、最低限近しい人間にはそのことを広げないようにと言い含めて教えていたのもある。

なので、暴落を知っていた者は全員後に続いたというわけだ。

うーん。

結局これって原因が硬貨不足だと言えるのだろうか。

人の手による相場の操作にしか思えないけど、まあそこまで全体を通して情報を把握し、分析や解析できる人間なんていないだろう。

なので、暴落のきっかけとなったのは最初にとある国の役人に質問して魔道具を売った商人だということにしよう。

大暴落の原因を作ったとなったら、きっと大勢の人に恨まれることになるだろうけど、強く生きてほしい。

というわけで、魔道具相場は見事に暴落した。

暴落がどんなものかは想像もできていなかったが、考えうる中でも想定以上だった。

あっという間に超高額だった値段が何の価値も見いだせなくなったからだ。

もう少しジリジリとある程度の期間を要しながら下がるのかと思っていたけど、本当に一気に落ち込んだのだ。

そして、それと同時に現金不足も現実に起こった。

これは群集心理とかいうものなのかもしれないな。

お金が必要だ、とみんなが同時に考えた結果、だれもお金を手放さなくなってしまったみたいだ。

普段はお金を用いて買い物をしているのに、お金を使おうとしない人ばかりになってしまった。

そうすると、さらに財布のひもが固くなるものらしい。

そのおかげでいろんなところに影響が出たみたいだ。

物の売り買いがほとんど停止した状態になり、街は死んだように静まり返った。

そんななかでも動きまわっていたのが金貸し連中だ。

貸した金を回収に回り、それでもどうしようもないものは担保となるものを奪い取るようにして持ち去る。

そんな中には当然、土地もあった。

クリスティナはこの暴落に備えて金貸しもしていたらしい。

多額の資金を貸し付けて、利子をつけて回収する金貸し業。

が、いずれ暴落するのが分かっているので、貸す相手は吟味する必要があった。

なので、担保は土地などのある程度価値が残りそうなものを用意できる相手にだけ貸し付けていたようだ。

そして、そんな中でも特に変わった土地を担保に入れている馬鹿がいた。

それはグルーガリア国の誇る柔魔木が生える中州の土地だ。

まさか、あの土地を抵当に入れている人間がいるとは思わなかった。

が、どうやら完全に安心しきっていたみたいだ。

魔道具の値段は上がり続けていたからだろう。

中州の土地を借金のかたにして金を借り、その金で魔道具を買って利益を出す。

利益が出たことを喜び、さらに金を借りて儲けを出そうと欲をかいたみたいだ。

実際にそれは今まではうまくいっていた。

グルーガリアは去年オリエント国に手痛い敗北をしていたので、そうすべき事情があったのかもしれないが、やっぱり大事なものは担保にするべきじゃないだろうな。

普通ならば売り出されないような土地を手に入れたクリスティナ。

さすがにグルー川の中州のような超特殊な立地はほかには売り出されてはいなかったが、それ以外の土地はいろいろと出回るようになった。

だって、最終的には金貸しも金が回収できずに火の車になって権利の投げ売りをし始めたからだ。

こうして、暴落はさまざまな国に大きな爪痕を残しながら、小国家群全体に影響を及ぼした。

ちなみに、この大暴落とそれに伴う不況は原因となった男の名前をとって「ラッセンの大暴落」などと呼ばれるようになったのだった。