軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

弱点攻撃

成功だな。

俺は倒れたセシルをワルキューレの上から見下ろして、自分の攻撃が無事に通じたことを確認していた。

強かった。

【雷光】の騎士セシルと名乗る純白の騎士は文句のつけようもないほどに強かった。

使っている装備が優れているというのももちろんある。

だが、それ以上に一切油断しないというところが手ごわかったという印象だ。

もともと、ほかの者に比べて魔力量が多い奴なんて、どこかしら他人を下に見るものなんじゃないだろうか。

とくに生まれ持った魔力量に違いがあるのであれば、生まれた瞬間から周囲との格付けは終わっている。

セシルがどこの人間かは知らないけれど、この東方であれほどの強さを持っているのであればかなりの名家出身なんだろう。

きっと子どもの時から使用人に囲まれて暮らしてきたんじゃないだろうか。

他者と圧倒的な違いを持つ人間は油断をする。

特に明らかに格下だと思えば、同じ人間とすら思わないかもしれない。

ブリリア魔導国の貴族院でもそういうふうな奴には会ってきたからな。

そうして、そういう常識に囚われていれば、大きく開いた実力の差から相手への警戒は減ってしまう。

けれど、セシルはそうではなかった。

高い魔力量を持ち、優れた装備を持つ。

だというのに、俺を倒すには過剰ではないかと思うくらいに自分を強化していた。

おそらくは迷宮で手に入れたであろう装備の力によって、普通に戦えば俺は敗北していただろう。

そうなっていなかったのは、アトモスの戦士であるイアンがいたというのも一つの理由だ。

自己強化していくセシルの目的は、俺ではなくイアンにあった。

イアンを相手にすることを考えると俺相手で途中で強化を止めるのは不安だったのだろう。

そして、少しでも手傷を負うわけにもいかなかった。

そのため、なるべく安全に損耗することなく俺に勝ってイアンに挑みたかったのだと思う。

油断しないで自己を最大まで強化するセシルにとって、唯一あった隙というのはそれだろう。

なるべく傷を負わずに勝ちたい。

そう思ったからこそ、俺の攻撃を反撃するのみにとどめて、一気に勝負を決めに来なかった。

そこをついた。

こちらはもともとの魔力量でもセシル相手には負けていた。

ただ、今回は戦場から大量の血を集めていたので対抗できた。

血の魔力を使って拮抗状態を保つ。

そして俺の狙いの自分の強化だった。

つまりは、セシルの血を狙っていた。

セシルの強化状態が血にどれくらい影響を与えるかはわからない。

もしかすると肉体を強化して【雷光】と呼ばれるほどになる強さを手に入れたセシルの体は魔力も大量に保有しているのではないかと思ったのだ。

というのも、肉体の強化というのはなかなかに難しい話だからだ。

ただ単に筋肉が出せる力を通常以上に引き出すことができたとしても、それでは肉体そのものがもたないと考えられる。

自分の怪力で怪我をしてしまうからだ。

それを防ぐには肉体の耐久力を上げる必要がある。

それもまんべんなくだ。

その場合、どうすればいいか。

上昇した力に耐えられる体を作るには、やはり一番は魔力を使うのがいいのではないだろうか。

つまり、奴が強くなればなるほど、その力から身を守るために体全体を魔力が保護していることになる。

そして、肉体にある血液もその特大の魔力が含まれているはずなのではと考えた。

俺はこのイクセル平地での戦いで鮮血兵ノルンを使って血を集めた。

その結果、結論を得た。

効率だけで言えば、戦場全体から血を集めるよりもものすごい強い奴一人の血から魔力を奪ったほうがいいというものだ。

そして、目の前にいるセシルという男は時間が経てばたつほどに魔力量も増大していく。

なので、相手の能力が分かった時点で、俺の戦う目的は勝利から血の吸収に移行していたというわけだ。

とはいえ、ここで問題がある。

いくら、効率を重視してセシルの魔力量を高めるためとはいえ、こちらも身を危険にさらしながら相手と剣を交える必要があるのだ。

その途中で殺されてはたまらない。

なので、すでに集めた力を使いながらも必死に食らいついていた。

が、そうして最大まで強化させたところで、セシルから血を吸収できなければこれもまた意味がない。

それどころか、それがもしかしたらイアンにとって強敵を生み出す行為になり、戦犯となっていたかもしれない。

なので、一撃で相手を仕留めるために戦いながら準備を行っていたのだ。

戦闘中に魔剣と大剣をぶつけ合いながら、考えに考えた。

どうやったら、セシルに勝てるか。

強くなり続ける相手。

どこまで強くなれるのかわからない相手だ。

そんな相手に勝つには、どれほど強化されていようと勝てる手を用意しなければならない。

そこで、俺が選択したのが急所攻撃だったというわけだ。

いくら強いといっても、人体である以上弱点はあるはずだ。

どこかが弱い部分というのは確実に存在し、そこを狙う。

そのための手段として用いたのが、血の霧だった。

実は途中からひっそりと【黒死蝶】を生み出していたのだ。

セシルの攻撃であちこちに吹き飛ばされながら、相手から見えないように漆黒の蝶を生み出し、そこに俺の血を混ぜた。

【黒死蝶】は俺の血を吸い、そして、その血を周囲に散布する。

そうすることで、あたり一帯を血の霧で包み込むことができる。

この血の霧はもちろんただの液体ではない。

【黒死蝶】に含まれているのが俺の血だからだ。

つまり、その血の霧は極小のノルンでできているということでもある。

そのため、血の霧内部にいる人間の居場所は例え視界が見えなくなっていたとしても俺にはわかった。

が、今回はそれだけには留まらない。

以前までは血の霧でできるのは視界を塞ぐことと、相手の位置を特定することだけだったが、【回復】が使えるほどに増した魔力と血液が俺に新たな力を与えてくれたのだ。

血を介して相手の肉体の魔力分布を把握することで弱点を探し出すことができた。

あとは、簡単だ。

セシルの体に弱点を見つけたら、そこに血でできた槍を突き立てた。

これも力が上がったことでできるようになったことだ。

今までは、赤黒い魔石を核とすることで鮮血兵を生み出していたが、一瞬だけ出現する血の槍は魔石を用いずに血の霧から発生させることができたのだ。

血の霧内部にいた際についてしまった俺の血液が、相手の弱点を貫くように血の槍として実体化して攻撃する。

鎧を着ていても関係ない。

むしろ、鎧の内部から肉体を攻撃される分、意表を突かれるだろう。

さすがにこれには【雷光】の騎士様もどうしようも無かったらしい。

体のあちこちから血の槍が突き出て、動くこともできない状態になってしまった。

とはいえ、これはそこまでポンポン使える方法でもないだろうな。

血の霧を出して弱点を探って準備を要するし、こちらの攻撃方法を知っていれば回避も可能だろう。

多分、血の霧を見てすぐにその場を離れて生活魔法の【洗浄】でも使われれば血の槍は発動しないだろうし。

もしも、そのことにセシルが気づいていればこの攻撃は通じずに負けていたかもしれないな。

まあ、でもいいだろう。

結果は俺の勝ちなんだし。

地面に倒れて動かないセシル。

その体に改めて魔剣ノルンを突き立てた。

ごきゅごきゅとおいしそうに血を飲むノルン。

そのノルンを通して、俺に大量の魔力が流れ込んできたのだった。