軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

強化外骨格

「ノルン、俺とワルキューレを守れ」

【アトモスの壁】によって作られた鉄壁の防御。

その堅い守りを光る矢の一撃で粉砕し、俺たちはぺリア軍本陣に突撃を仕掛けた。

すでに、そこにいたぺリア兵と巨人化したイアンや騎兵が戦っている。

その中に俺も加わる前に、最終準備を行う。

もともと、俺が出すことができた鮮血兵ノルンは合計で三体だった。

そのうちの一体から集めた血を受け取り【回復】が使える位階に到達した。

そして、それ以外の一体からもすでに血を受け取り、威力を最大限にまで高めた【流星】による体力消耗を補っていた。

そうして、今は最後の三体目を使う。

それは、俺の身を守るためだ。

最後の合流した三体目の鮮血兵ノルンが俺とワルキューレを守るために鎧化する。

俺の体とワルキューレの体を完全に覆うような全身鎧だ。

もちろん、その色は赤い。

鮮やかな血の赤でできた鎧を身に纏った。

ここはぺリア軍の本陣で強い連中が集まった場所だからな。

用心しすぎてやりすぎということもないだろう。

相手が複数いる集団での戦いだったら守りを固める。

そのために、ぺリア軍から集めた血を使ったというわけだ。

以前までは俺の体を守るくらいしかできなかった血の鎧だが、血を大量に集めた効果だろう。

俺以外にもワルキューレの体を守ってもまだ血が足りている。

なので、ノルンは鎧を大きくしたみたいだ。

まだ十歳の俺の体は成長段階だ。

そのため、立った時などにほかの人と比べると頭の高さが低い。

それは当然、手の長さも違うということになる。

手の長さは意外と強さに直結する要素でもある。

長ければ長いほうがより遠くに攻撃が届くし、相手からの攻撃を届かせにくくする。

子どもの俺よりも、魔力が同じなら大人のほうが強いということになるだろうか。

それを解消するために、血でできた鎧は子どもの俺の体を包み込みつつも、成人男性くらいの大きさの外見になったのだ。

というか、もっと大きいかもしれない。

アトモスの戦士という存在がいなければ巨人と呼ばれるかもしれないような偉丈夫の着るような立派な体格の鎧だった。

「動きやすいな、これ。違和感が全然ない」

普通、そんな大きな鎧を着ても無意味だろう。

いくら鎧を大きくしたところでそれはただの重りだ。

着用者の肉体にぴったりと合っていなければ、重いうえに動きを阻害するだけのものになる。

それが全身鎧だ。

なので、戦場では金属製の全身鎧をつける者は少ない。

単純に金もかかるし、人の手を借りて着なければならないしと使いにくい側面もあるからだ。

それでも、全身鎧を使おうというのであれば、それは防御力をあげたいからに他ならないだろう。

だというのに、動きが悪くなるのであれば命に係わる。

戦場で命を落としやすくするものをわざわざ着る必要などないのだから。

だが、このノルンの鎧は違った。

俺の身を完全に覆い、守ってくれている。

そのうえで大型化し、分厚い胴体、長い腕と長い脚。

それは分厚く、衝撃を吸収してくれる。

そんな鎧が俺の意図した動きを一切阻害することなく、現実の動きとして実行できる。

これってただの金属製の鎧とは別物だな。

今更だけど、鮮血兵というのは人間ではない別種の存在だということに気が付いた。

ノルンの鎧は俺を守る壁であり、そして筋肉でもあったのだ。

血でできた鎧が自分の頭の中で想像したとおりに動くことで、その偉丈夫の体格から発することができる力をそのまま発揮できているのだ。

子どもの体格のときとはわけが違う。

ワルキューレの背にまたがり、そこから二メートル以上もの身長を手に入れた俺はその太い腕で魔剣を振り下ろしてぺリア兵を斬る。

その攻撃は今までよりもはるかに力強く、相手の体を縦にスパッと切り分けてしまった。

「我が名はアルフォンス・バルカ。オリエント軍の総大将だ。ぺリア軍に我こそはと思う者がいればかかってこい」

すごく気分がいい。

今までにない力を手に入れることができた。

その力をもっと存分に奮いたい。

そのためには強い奴が必要だ。

だが、逃げる相手を追いかけて斬るだけでは、このノルンの鎧の真価は発揮できないだろう。

強い奴が相手から向かってきてくれてこそ、その強さが分かる。

なので、このノルンの鎧の強さを確かめるためにも俺は名乗りを上げて周囲の注目を集めることにした。

声に魔力を集めて発声する。

いつもならば、その魔力の形を調整して【威圧】になるようにするが、今回はそうはしない。

あくまでも、人の意識をこちらに向けさせるために魔力を声に乗せた。

これは、オペラ家が使う【歌唱】という魔法に近いのかもしれない。

【歌唱】のような歌を聞いた者を感動させられる魔力の使い方と似ているのか、俺の声を聴いてぺリア軍本陣の兵のほとんどと、そいつらと交戦しているはずのこちらの兵までもが俺に視線を送ることになった。

一瞬にして戦場に静寂が訪れる。

その雰囲気は若干戸惑いの気配が含まれていた。

何を言っているんだ?

そんな感じだろうか。

アルフォンス・バルカだ、と声を上げた存在が見るからに尋常ではない体格をした真っ赤な全身鎧の戦士なのだ。

しかも、ワルキューレに騎乗しているので、上背はさらに大きく見える。

その姿を見て、アルフォンス・バルカがまだ子どもであると知っている者ほど戸惑ったのかもしれない。

あるいは味方のほうが困惑しているだろうか。

「面白い。アトモスの戦士と戦えると聞いてここまで来たが、敵軍の総大将がお出ましとあれば話は別だ。我が功績としてやろう」

そんな静寂を打ち破ってひとりの男が前に出てくる。

……魔力量がかなり多いな。

遠目からぺリア軍を見渡していたときにもこんな奴いたんだろうか?

純白の全身鎧と自分の身長ほどもある大剣を背負った戦士がそこにはいた。

そいつが俺の挑発を受けて、戦いを挑んできたのだった。