軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

位階の上昇

「アルフォンス様、敵将討ち取りました」

「よくやった、キク。追撃をかけてそこから相手の陣地をめがけて進め。戦果を拡大させろ」

「分かりました。第一小隊は俺とともに前進だ」

魔導通信器を通してキクからの報告が入る。

どうやら、ぺリア軍から【にゃんにゃん】部隊に向かっていた救援部隊を撃破したようだ。

上手くキクが対処してくれたようで、こちらの部隊を荒らされることなく相手の将を討ち取った。

それを聞いて、すぐに【にゃんにゃん】部隊を前に進ませる。

そして、それと同時にこちらも動き出す。

「おまたせ、イアン。俺たちも出ようか」

「待ちくたびれたぞ、アルフォンス。早くいこう」

「よし。ヘンドリクセン殿はゼンとともに行動をお願いします。よろしいですか?」

「分かりました。パージ軍も【うさ耳ピョンピョン】を使って戦おうと思います」

「了解です。それじゃあ、健闘を祈ります」

「はい、バルカ殿もご武運を」

ここしばらく、ずっと後ろから命令だけをしていた。

戦場全体を見渡して部隊ごとに命令を出すことで全軍を効率よく動かす。

それによって、同じように防壁戦術を行っていたぺリア軍を圧倒することができている。

ただ、それももう終わりだ。

ここからは速攻を仕掛けることにする。

俺はワルキューレに、イアンはヴァルキリーに騎乗する。

そして、その周りには騎兵部隊が二十数騎ほどと、ほかには歩兵がいた。

【うさ耳ピョンピョン】部隊だ。

壁を攻略するときにはどちらかというと猫のほうが使いやすかったが、速攻を仕掛けるときには兎のほうがいい。

速さは強さだ。

それに兎は体力があるから相手のもとまでいち早くたどり着けるだろう。

急ぐ理由はぺリア軍にある。

こちらが全体を通してみていると相手の軍についても感じとれる部分というものがある。

その戦場での雰囲気を通して、向こうが退く可能性が高まっているのではないかというのがあったのだ。

もともと安全に戦えるはずの防壁戦術でこちらにいいようにやられていて、しかも、本来であれば持久戦は相手の望むところではない。

ぺリア国は食料のことなども含めて短期決戦を狙っていると考えられたからだ。

だというのに、こちらと接敵するイクセル平地ではオリエント・パージ軍が防壁戦術を採用し、それを徹底していた。

きっと相手も驚いたことだろう。

今までの俺の情報を持っていれば、もっと自分で前に出て戦いを挑んでくるのではないかと思っていたかもしれないからだ。

だが、今回ばかりはその逆で何日もじっくりと戦われてしまった。

相手には焦りもあっただろう。

短期決戦したいができない。

前に出て突破を図りたいが、その要所となる場所はすでにこちらが抑えてしまっている。

なので、無理に壁を抜けようと攻撃を仕掛けても損害を増やすだけであるというのは分かっていた。

そうして、何日も壁を作り合い、しかし、相手のほうが多くの壁をいい場所にばかり作ってしまっている。

そのうえで、相手から攻勢に来られたら一方的にやられているのだ。

乾坤一擲で反撃に出るべきか。

そう思っているところで、救援に出した部隊が負けた。

そこは、イアンがいない場所だ。

ということは、少なくともアトモスの戦士がいないオリエント軍にも強い兵の存在があるということだ。

そんな状況でぺリア軍のとれる選択肢はほぼ二択だ。

防壁戦術という戦い方を捨てて、全軍で突撃して戦局を変えるか。

あるいは、一度退いて立て直すか。

その二つの選択肢のうち、どうやら後者を選ぶのではないかと感じる。

つまりは、相手の本陣が壁の後ろから逃げ出そうとしているのだ。

ここはぜひとも攻撃を仕掛けたい。

相手が退くときは狙い目だというのもある。

撤退している部隊は脆いからな。

一度の被害で雪崩を打ったように軍が崩壊する可能性だってある。

それに、魔力量の多い者をまだそれほど倒せていない。

戦いで重要なのは街などの拠点を奪うか、魔力の多い者を倒すかだ。

いくら相手の兵を減らしても、一般兵はそのうちどこかで補充できる。

だけど、魔力量が豊富で軍を動かすような教育を受けた者というのはそうそう補充できるものじゃないからな。

ここで叩ける相手を逃がす手はない。

「戻ったぞ、アルフォンス」

「ああ、お帰り、ノルン。血は吸えたか?」

「まあ、それなりに、だな。だけど、あまり効率的とは言えない。あちこちに壁があるばかりで人がばらけてるからな」

「けど、その分、相手は油断していたでしょ? 壁という守りがあると思っているんだから」

「そうだな。確かに警戒は緩かった。この戦場に人以外の姿をしたものが人を襲っているとは思っていなかったんだろうな」

ワルキューレに乗ってイクセル平地を駆けているとき、ノルンが帰ってきた。

俺の血から独立して行動している鮮血兵のノルンだ。

ただ、今のノルンの姿は鎧姿ではなく、猫だった。

膝の上に乗れるくらいの大きさの全身赤い毛並みの猫だ。

猫の姿のノルンが人語でしゃべりかけてきていた。

実は、何日か前からぺリア軍にはノルンという刺客が送られていた。

赤黒い魔石と俺の血から作り出されて、眠りを必要としない鮮血兵ノルン。

その姿はある程度自由に変えられて、人型である必要は必ずしもない。

なので、色が赤くて目立つこともあるが、それでも人の姿をしていない子猫姿のノルンはこの戦場で好き勝手に動き回っていた。

具体的には夜中の暗い時間帯に猫の姿のノルンが相手の陣地に入り込み、ぺリア兵から血を吸っていたのだ。

ぺリア軍も不思議だっただろう。

オリエントやパージ軍の兵の姿がないにもかかわらず、兵に被害が出るのだから。

怪奇現象でも起こったと思ったりしていないだろうか。

そんなふうに、あちこちで血を回収してきたノルンが俺のもとに戻る。

その結果、血と一緒に取り入れた魔力も手に入った。

「お、位階が上がった」

それによって、俺の魔力量が一定値を越えたようだ。

位階が上昇した。

そのおかげで、俺は【回復】を使える位階に到達したのだった。