軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

実験的戦場

「いいのか、アルフォンス?」

「なんの話だ、イアン?」

「今度の相手との戦い方についてだ。防壁戦術とか言ったか? 壁を作ってその後ろから矢を放つだけの戦い方など臆病者のすることだろう。そんな戦い方はつまらないし、面白くもないと思うが」

「だろうね。俺もそう思う。戦いに求める面白さで言ったら、多分ものすごくつまらないだろうな」

「なら、なぜだ? 俺とお前がいれば、もっと派手に暴れられるぞ」

パージ軍の指揮官であるヘンドリクセン。

そのヘンドリクセンとの話し合いによって、ぺリア国とは防壁戦術という戦い方をしようということに決まった。

それをお互いの軍に伝えていく。

その途中で、イアンが俺に注文を付けた。

そんな戦い方で面白いわけがない、と。

確かにそれはそうだろう。

相手の軍の目の前で壁を作り、その後ろからチクチクと攻撃を加えるだけの戦いだからだ。

この戦術の基本的な狙いはいかに自分たちが傷つかずに相手に損害を与えるかにある。

守功で言えば、圧倒的に守りに傾いた戦術であり、力で戦場を支配するアトモスの戦士であるイアンからすれば考えられない戦い方だろう。

もちろん、俺も同じ意見だ。

戦いに面白さを求めるのであれば、自分から積極的にこの戦法を選択することはないだろう。

ただ、今回に限っては都合がいいかと思ったのだ。

というのも、この防壁戦術が小国家群で流行っているという話があるからだ。

つまり、これからも相手はこの戦法を使ってくる可能性がある。

なので、一度その戦法を自分でも経験しておきたいというのがあった。

誰がこの防壁戦術を考え出したのかはよく知らない。

だが、その戦い方は優れていた。

それは強さそのものではなく、誰でも簡単に真似できて使いやすいという面が大きかったのではないかと思う。

だって、野戦で戦う際に、自分たちの軍の前に壁を並べて、そこから遠距離攻撃に徹するというだけなのだから。

話に聞いただけで誰でもすぐに模倣できるというわけだ。

それでいて、誰が使ってもそれなりに戦えるということで人気が出たのだろ。

そして、この戦い方はおそらく今後も続いていく。

ならば、それを知っておかなければならない。

知らないまま戦えば、いくらイアンがいたとしても勝てないことがあるかもしれないからだ。

「あんな高さの壁を作るくらいで俺を止められないがな」

「ま、イアンはそうだろうね。十メートルの壁でも手でよじ登って越えていけるだろうし。それに、今回はほかにも不確定要素がある。【にゃんにゃん】と【うさ耳ピョンピョン】の魔法がその防壁戦術とどうかみ合うか、試してみたいんだよね」

「あれか。猫やウサギになったら、あの壁を飛び越えられるのか?」

「難しいだろうね。獣化してもそこまでの跳躍力はない。けど、降りるほうはいけるらしい」

「降りる?」

「そうだ。普通ならあの高さの壁から飛び降りたら怪我するんだけど、猫化していたら怪我しないみたいなんだよね」

「ほう。面白いな、それは。ならば、地形をうまく組み合わせて壁を作り、その上から飛び降りれば奇襲をかけられるんじゃないか?」

「俺もそれを考えていた。ま、そんなわけで、ぺリア国との戦いは実戦で獣化した者たちの使い勝手を試してみたいんだよね。パージ軍も使ってさ」

ぺリア国との戦いではなるべく損害を出さずに勝ちたいという意志がパージ軍にはあるようだ。

防壁戦術という戦い方をとることに認めたことで、俺はそれを受け入れたかのようにヘンドリクセンは思ったかもしれない。

が、こちらにも狙いはあった。

それは、実際の戦場での魔法の使い勝手を確かめるという意図だ。

しかも、自軍ではなくパージ軍を使って。

今のパージ軍は全員が名付けを受けて魔法を使える状態だ。

そして、オリエント軍と違う点はその全員が【にゃんにゃん】も【うさ耳ピョンピョン】も使えるということにある。

オリエント軍はキクの【にゃんにゃん】部隊とゼンの【うさ耳ピョンピョン】部隊があるけど、あれはどちらか一方の魔法しか使えない。

それと比べると、ひとりの人間が二種類の魔法を両方とも使えることでさらに恩恵があるかもしれないとも思った。

もしも、二つ両方とも持つのがいいのであれば、オリエント軍でも全員が使えるようにしたほうがいいかもしれないな。

なんにせよ、グルーガリア軍との戦いとはまた少し違った流れになるはずだ。

どうなるかを楽しみにイクセル平地へと進軍し、オリエント・パージ連合軍とぺリア軍は相まみえることになったのだった。