軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

二つの呪文

「……どうだったんだ、ゼン?」

「驚きました。本当に魔法になっていたみたいです。いや、本当に驚いたな。まさか、自分の家族が魔法を作るなんて思いもしていなかったですから」

「俺もだよ。つーか、ぶっちゃけ、ちょっと忘れていたよ。最近は別にできなくてもいいかとすら思っていたくらいだからな」

オリバに血の入れ替えを行い、魔術が使えるようになった。

そして、それを見ながらイアンとアトモスの戦士の巨人化が魔法にできたら面白いなという話をしていた。

だが、魔法がうまく作れるかどうかは現状ではわからない。

なので、俺としては気長に待つつもりでいた。

だが、まさにその日の晩に驚くべき連絡が入った。

魔法創造ができたという一報だ。

それも一つだけではない。

ふたつもの魔法ができたと連絡が入ったのだ。

連絡は新バルカ街からだった。

新バルカ街にあるバルカ御殿などとも呼ばれる俺の家。

そこに住む者が魔術の呪文化に成功した。

「【にゃんにゃん】と【うさ耳ピョンピョン】という呪文名か。【いただきます】がかわいく思えるくらいのとんでもない名称のができたんだな……」

「なんか、すみません。うちの子も何を考えているんだか」

「いや、いいよ。多分、本人たちに悪気なんてなかったんだろうしな。呪文になるまで続けてくれただけでもすごいとほめてやらないと。っていうか、怒ったりはしてないだろうな、ゼン?」

「まさか。【うさ耳ピョンピョン】って聞いたときは頭が働かなくなっただけで、別に怒りはしないですよ。むしろ、呪文を唱えるユーリの姿がかわいくて、何度も見せてもらいましたからね」

そう言うと、ゼンの顔がニヤニヤとし始めた。

どうやら、思い出して笑っているらしい。

ちょっと気持ち悪い笑い方だが、多分それだけかわいかったということなんだろう。

新たな呪文を作り上げたのは、新バルカ街にいるミーティアとユーリの二人だった。

この二人は獣人の血を持つ先祖返りだ。

かつて、ここらの大陸とは別にあり魔大陸と呼ばれる土地には獣人と呼ばれる二足歩行する獣たちがいたという。

そんな獣たちとどういう心境か子どもを作った者がいた。

そして、生まれてきた子どもたちのうちの何人かが普通の人間との間に子どもを産んで、さらにその子らがほかの人と人間を産むということを繰り返していった。

結果として、普段はほかの人とまったく同じ姿をしているのに、魔力を使うと獣の耳や尻尾が出現する者たちが現れることとなった。

そんな獣人の血をひく者たちだが、魔力を使って姿を変えると、肉体的には負担が大きすぎたようだ。

そのために、長生きできない運命にあった。

ハンナの妹であるミーティアや、ゼンの奥さんの妹であるユーリもそうだ。

だが、彼女たちは今は長生きできるかもしれない状態になっている。

それは、血を操るノルンの存在と、ハンナの【慈愛の炎】にあった。

この二つのおかげで、体の負担を減らすことに成功していたのだ。

そして、俺は獣人の血を引く者を見つけては、保護するという名目で手元に集めることにしたのだ。

だが、見つけたのはたいてい幼い子どもだったし、負担が減ったとはいえどのくらいで体に影響があるのかが分からなかったので、無理に【獣化】を呪文化させるようにはしていなかった。

なので、まさかミーティアやユーリが呪文化に成功するとは思ってもいなかったのだ。

しかし、俺やゼンの心配とは関係なく、二人は最近は結構頻繁に猫耳を出したり、うさ耳を出したりして遊んでいたらしい。

そう、遊びだ。

この二人にとっては、今のオリバのように命じられて呪文化しようとしたわけではなく、遊んでいただけで呪文ができたようだった。

俺の【いただきます】と似ていると言えるのかもしれない。

普段から言葉にしていたものが呪文となってしまっただけだ。

それが、【にゃんにゃん】と【うさ耳ピョンピョン】というのは予想できなかったけれど。

「で、獣化できることは分かったけど、猫とウサギになってなにか肉体以外の変化ってあったのか?」

「ありました。どうも、【にゃんにゃん】では猫耳と尻尾が出る肉体変化に追加して、平衡感覚と俊敏性の向上、それと夜目が利くようになるみたいですね」

「なるほど。猫っぽいね」

「そうですね。で、【うさ耳ピョンピョン】ですが、これも俊敏性が上がって、あとは耳がよく聞こえるようになるみたいです。かなり遠くの音を聞き分けることができるみたいですよ」

「へえ。ってことは、やっぱりその動物の特性っぽいのが出る感じかな?」

「おそらくそうではないですかね。ああ、あとはユーリみたいにかわいい女の子だと本当に目に入れてもいいくらいなんですけど、男が【うさ耳ピョンピョン】と言うのを聞くとちょっとイラっとするかもしれません」

「うーむ。それが一番の問題なのかもしれないな」

しかたがない。

俺としては分かりやすく【猫化】とか【兎化】とかいう呪文のほうがよかったと思う。

が、魔法を作るためにどんな言葉を言うかはそいつ次第だ。

しかも、二人は普段から獣耳を出して遊ぶついでに言葉を言っていただけみたいだからな。

今更変えようもない。

ミーティアやユーリみたいな女の子だったらそれでもいいんだろうけれど、大人の男がそんなことを言っている姿はあまり想像できないし、したくない。

が、魔法の効果自体はしっかりとあるみたいだ。

希望者を募ってみようか?

獣化の魔法を欲しい者には手を挙げてもらって、二人に名付けしてもらおう。

で、それをぺリア国との戦いで実戦投入してみてはどうだろうか。

どのくらい戦力として使えるか試してみたい。

こうして、詳しい呪文名は伏せた状態で、新しい魔法を欲しい者は名乗り出ろ、とオリエント兵にたいして募集をかけていったのだった。