軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

レンガとともに

「門を開けろ。出るぞ」

小さな砦から飛び出すように部隊を出す。

砦の中からは今もウォルター分隊が大型魔弓を使ってレンガを飛ばし続けていた。

その援護射撃があるからこそ、砦の入り口を開けてもグルーガリア軍に内部に侵入されることなく、外に出ることが可能になった。

だが、油断はできない。

グルーガリア軍は大きく広がるようにして展開しており、砦の周りから柔魔木の弓によって攻撃をしてきていたのだ。

その攻撃の最中に俺とグルーガリアの弓兵が放った矢の衝突で衝撃波が起こり、相手の陣営にもほころびが生じた。

そのおかげで、別動隊としてイアンをはじめとした騎兵部隊が突撃している。

が、それはあくまでも相手の軍の一部にしか過ぎない。

五千も数がいるグルーガリア軍にとっては、まだまだ動ける者の数のほうが多い。

門を開けて飛び出した直後に内部に入られることはなかったものの、それでも周囲から矢が降り注いでくるのが分かった。

この戦場では俺たちはただ勝つだけでは駄目だ。

普通に勝つだけでは相手を押し返すことしかできない。

しかし、それだと撤退した軍に国境付近に張り付かれただけで、こちらは動きが取れなくなってしまう。

それを防ぐためにはとるべき選択肢は二つあった。

ひとつは、相手の大将を討ち取ることだ。

どれだけ軍の規模が大きくても、頭をつぶせば相手は動けなくなるからだ。

とくに、生まれ持って魔力を多く持つ名門一族の人間はすぐには補充がきかないからな。

そいつをつぶすことで、一気に軍という組織の動きを封じることもできるはずだ。

だけど、それがこのグルーガリア軍でも通用するかどうかは分からなかった。

それは、グルーガリアの兵一人ひとりが強いからだ。

幼いころから弓の腕を鍛えて、兵としての力量を認められた者が多い。

これはつまり、ひとりでも戦えるということでもあった。

もしかすると、軍をまとめていた人間を倒すだけだと、軍がバラバラになっても個人で戦うかもしれないという危惧があった。

そこらの森なり林なりに身を潜めて、柔魔木の弓を片手にチクチクと嫌がらせのような攻撃をされたらどうしようか。

そんなことをするかどうかは分からないが、もしされたらそいつらを片付けるのにはどうしても時間がかかってしまう。

そうなると、ぺリア国に対しての対応がその分遅れてしまうことになる。

それに、警戒すべきはぺリア国だけではない。

もしかしたら、他にもどこかの小国が動いてくるかもしれない。

オリエント国を狙って、次々といろんな国が参戦してこられたらさすがに対応できなくなるだろう。

だからこそ、相手の軍を機能停止させることが必要だった。

そのために、俺はもう一つのとるべき選択肢を実行した。

グルーガリア軍を無力化するために、親玉をつぶすのではなく、相手の兵すべてを動けなくするという方法だ。

つまり、ここに来たグルーガリア軍全体を完全につぶす。

そのための方法は、今も行われている大型魔弓による攻撃にある。

それは、毒だ。

魔法陣を用いて作られた速射性と攻撃性能を高めた大型魔弓。

その大型魔弓を使ってバンバン飛ばしているレンガと一緒に、今は毒も混じるようになっている。

砦から出るときに使うために用意しておいたものだ。

容器に込められた毒は一緒に空を飛ぶレンガによって、空中でその容器が壊される。

その結果、空で毒紛がバラまかれることになる。

この毒は新バルカ街で栽培されているものだ。

化粧品などを作り始めた時に、天空王国から持ってきた薬草などをいろいろと植え、育てることになった。

その中には毒草も含まれていた。

というか、毒も使い方によっては薬になるからな。

今回使っている毒はそんな薬にもなる毒草を、毒として使いやすいように加工したものだ。

粉状で大気に散布されたものを吸い込むと体に影響が出る毒。

毒の強さと効果が出るまでの時間が早いのが特徴だ。

さっきからレンガと一緒に飛ばしているので、そろそろグルーガリア兵にその影響が出始めるころだろう。

もちろん、そんな毒を空中にばらまくというのは、自分たちにも被害が出る可能性がある。

なので、普通ならばそんなことはやらないだろう。

が、【毒無効化】という魔法があるからな。

オリエント軍に所属している兵は全員に名付けが終わっているので、アルス兄さん由来の魔法である【毒無効化】はみんな使える。

これさえ使っていれば、その毒を吸い込んでもなにも問題はない。

もちろん、グルーガリア軍のなかにも魔法を使える連中はいるだろう。

ただ、こちらは事前の作戦として毒を使うことを想定していて、すでに全員が【毒無効化】を使用している。

が、相手は軍全体でまとまって毒対策しているということはないだろう。

個人でたまたま使っている奴はいても、集団として対応できている可能性は低い。

その考えはどうやら当たっていたようだ。

グルーガリア兵の動きがだんだんと悪くなっていくのがわかる。

即効性の毒によってうまくグルーガリア軍全体の動きが悪化してきた。

こうなれば、いくら弓が強くても問題ない。

動きの悪くなった相手を蹂躙するために、砦から飛び出したオリエント軍は一気に相手へと襲い掛かったのだった。