軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

別動隊

「大丈夫ですか、団長?」

「だ、大丈夫、かな? 助かったよ、ウォルター」

「いいっすよ。団長の身を守るためにもそばにいたんですから、これくらいは当然です」

俺の撃った【流星】と地上からの矢がぶつかった瞬間、そこから周囲一帯に恐ろしい衝撃波が広がった。

壁の上にいるこちらも後方に吹き飛ばされてしまうくらいの衝撃だった。

【流星】は魔力の消費も激しいけれど、体力もかなり使ってしまう。

一発撃った時点でへとへとになっているところに、そんな衝撃波が襲ってきたので俺はまともに飛ばされてしまったのだ。

ただ、それでも何とか無事だったのはウォルターがいてくれたおかげだった。

一緒に吹き飛ばされながらも、俺の体を支えてくれた。

最終的に後方の壁にぶつかったときにはウォルターの体がその間に挟まるようにして、衝撃を幾分か和らげてくれたおかげで特に大きなけがはしていない。

もしもウォルターがいなければ、飛ばされた拍子に頭でも打っていたかもしれないからな。

さすがにそうなったらもっと大きな負傷になっていたかもしれない。

本当にいてくれて助かったと思う。

それでも、体はあちこちが痛い。

吹き飛ばされたことも関係しているが、【流星】の影響もあるだろうか。

相手の攻撃に反応してのとっさの反撃だったこともあるかもしれない。

予想以上に高い威力の攻撃がきそうだったので、ほとんど無意識にこちらも全力を出していたのだろう。

【流星】は弓や矢に込める魔力の量も重要だけど、肉体の力も威力にかかわってくる。

魔力の流動を使ってとっさに限界以上に肉体を酷使していたのか、全身が筋肉痛みたいになっていた。

本当に予想外だ。

もしかしたら、流星と呼ばれた男と同じような弓の使い手がいてもおかしくはないと思っていた。

が、それに匹敵するどころか、もっとすごい使い手なのではないだろうか。

こんなのがいたら、そりゃオリエント国は弱国と言われるなと思ってしまう。

それに、これで終わりではない。

ここからでは状況が見えないのもまずかった。

俺のほうは結構体が痛めつけられることになったが、相手がどうなっているのかわかっていないからだ。

衝撃波は周囲に広がったので、グルーガリア軍にも影響はあると思う。

が、あれほどの使い手であればきっと無事でいることだろう。

そいつがもし、さっきと同じような攻撃を再びしてこないとは限らない。

こっちが一発撃っただけで疲労困憊するからといって、向こうもそうだとは限らないからだ。

「イアン。聞こえるか。グルーガリア軍に突撃してくれ。標的はさっきの強力な一射を放った奴だ。グルーガリア軍の中央にいる。そいつを攻撃してほしい」

「分かった。動くぞ」

痛む体を起こして、こちらも動く。

とはいえ、壁の上にいる俺がすぐになにかをできることは特になかった。

なので、指示を出す。

耳から顎にかけてつけた魔導通信器。

これを使って、アトモスの戦士イアンに指示を出す。

通信器を使ったということはイアンは俺のそばにはいないということだ。

というか、この砦にもいない。

イアンにはこの砦の外で待機してもらっていたからだ。

そのイアンに動いてもらう。

ただ、当たり前だが徒歩ではない。

砦の外で待機させている以上、その砦の周りを囲むようにして攻撃してきたグルーガリア軍から攻撃を受けないようにさらに離れて待機させていたのだ。

そんなイアンに歩いてここまで来て攻撃しろとはもちろん言わない。

イアンにはヴァルキリーに乗ってもらっている。

新バルカ街で新たに生まれたヴァルキリー。

こいつらは角を切り、魔法は使えない状態だ。

が、それでも騎乗して高速で移動できるというのは戦場で非常に価値がある。

このへんでよく使われている馬も騎乗できるが、やっぱり生き物だし、憶病な性格をしているみたいだからな。

さっきみたいな周囲全てを吹き飛ばすような衝撃波があれば、動きが悪くなったりもするかもしれない。

が、そんなことはヴァルキリーには関係がない。

イアンがそのヴァルキリーに乗って、駆ける。

そして、そのイアンのそばにはほかにもヴァルキリーに乗っている者がいる。

元孤児でアイから教育を受けた子たちだ。

アイの教えを受けた者は、基本的に人をまとめる仕事をしてもらうことが多かった。

キクなんかも分隊長として働いてもらっている。

が、なかにはあんまり人をまとめることにはむいていないというか、とにかく攻撃大好き人間みたいなやつもいたのだ。

戦法などを習っているにもかかわらず、とにかく相手に向かって突っ込んでいくやばい奴らだ。

あんまりにも猪武者すぎて、そいつらを隊長にしたらその部隊は毎回相手に突っ込むことになりそうだった。

なので、そういう奴らは隊長にはせずにイアンに預けたのだ。

こういう奴に限って、自分よりも強い奴がそばにいればその人の言うことには素直に従うからな。

イアンの言うことを無視して相手の軍に突っ込んでいくことはなかった。

そして、そのイアンから突撃の合図が出ると喜んで突撃していく。

ヴァルキリーやイアンがいるとはいえ、二十騎程度で五千もの相手にバルカ傭兵団初の騎兵部隊が攻撃を開始したのだった。