軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

新型兵器

五千対三千の戦い。

攻め手はグルーガリア軍の五千で、守りになるのがオリエント軍の三千だ。

【壁建築】で強化した関所、あらため砦にグルーガリア軍から矢が飛んでくる。

普通、十メートルもの高さのある防壁があるこちらのほうが有利になるのではないかと思う。

単純に守りが硬いのもあるが、高さの差は大きな要因になる。

地面から上に向かって弓で射かけるよりも、上から放つほうが飛距離が出るからだ。

だが、グルーガリア軍はあえてそれを選択した。

きっと、これがいつもの戦術なのではないだろうか。

軍全体が強力な弓兵によって構成されている。

それは攻城戦でも力を発揮する。

多少の高さの差は問題にならないということをよく知っているのだろう。

壁の上から矢を飛ばされるよりも、自分たちのほうがより遠く、より力強く矢を放てる自信がある。

そう確信しているからこそ、迷わず攻撃してきているように感じる。

そしてそれは間違いではない。

こちらの矢の飛距離よりもグルーガリア側のほうがはるかに飛ぶのがよくわかった。

幼少期から弓とともにあり、大きく成長し、一人前と認められてからは更に柔魔木の弓を使いこなす弓兵たち。

その柔魔木の弓は魔力を込めると普通ならば引くことすらできない硬い弓がしなやかに弧を描く。

そして、その弓のしなりを最大限にいかして放つ矢にも魔力を込めた攻撃が飛んでくるのだ。

一般的な弓とはまるで比較にならないほどの攻撃力だ。

十メートルなど障害にもならないとばかりに空を駆けて飛んでくるその矢の命中精度も非常に高い。

壁の上にいるこちらの兵が次々とその矢の攻撃を受けて傷ついていく。

【アトモスの壁】であれば、さらに高い壁を作ることができるが、あれはあまりにも高すぎてこちらも防衛戦がしにくいという点があり、重要なところだけを囲うだけにとどめているために、そこらで被害が出ていた。

「やっぱり柔魔木の弓は強いな。使いこなすのも一朝一夕では難しいし、そう簡単には真似できない戦法だろうな」

グルーガリア軍の攻撃を見て感心する。

単純に強い。

かわった奇策を用いて有利に立つ、というわけではなく、ごく普通に強いのでまともに戦ったらかなり厳しいかもしれない。

こっちも、去年手に入れた柔魔木はあったが、あれは弓に加工しても使いこなすのは難しそうだという結論に達した。

弓術のみなら、【見稽古】で真似できるのだけれど、それはあくまで肉体を使った技術面だけだったからだ。

体の内部にある魔力を操作し、必要な分の魔力を柔魔木の弓と矢に分配して、しかも正確に狙いをつけて放つのはそう簡単には真似できなかったのだ。

なので、弓での攻撃だけだと圧倒的にグルーガリア軍が有利になる。

「団長、射程圏内に入った。攻撃許可を」

「了解だ、ウォルター。攻撃を許可。放て」

まあ、弓の腕前で勝負しようとは最初から思っていなかったのだけど。

というか、俺が手に入れた柔魔木の量は限られている。

その貴重な柔魔木を、弓に変えたところでその量は向こうのほうが圧倒的に多いのは分かっていたからだ。

戦いは強いほうが勝つ。

そして、強さとは数と装備の質だ。

強い武器を持った人間の数が多いほうが勝つ、という法則があるとアイから教わっている。

なので、グルーガリアが持っているのと同じ弓を作ったところで意味はあまりない。

ならば、それよりももっといいものを作ろうと考えた。

俺の攻撃許可を受けて、ウォルター分隊が攻撃を開始する。

その攻撃は、柔魔木を使った新たな装備からのものだった。

いや、新しい装備というのは確かだけれど、もともとの発想はすでにあったものだ。

それを改良したものにすぎない。

それは、弩だ。

柔魔木を使った弩。

というと、バナージが作った魔弓オリエントを思い浮かべるかもしれないが、それとも少し違う。

大きさが違ったのだ。

バナージが作った魔弓オリエントは兵が手に持って使う大きさだった。

これは、グルーガリアのように幼いころから弓の腕を磨いたりはしていないオリエント国の人間でもすぐに戦場で活躍できるようにと考えて、即戦力の射手を求めたからだ。

だが、今回俺が用意したのは大型の弩だ。

グルーガリアの材木所から奪ってきた木材は丸太のようなものもあった。

それを巨人であるイアンが使う大型の弓にしようと思っていたのだけれど、別にイアン限定にする必要はないんじゃないかと思ったからだ。

大きな弩はそれだけで威力を増すことができる。

ただ、威力を出すためにはより大きな力を入れて弦を引っ張らなければならない。

そのためには、大人数の力が求められたり、複雑な機構が必要だったりする。

が、柔魔木はそんな問題を解決してくれた。

魔力を込めれば、恐ろしく硬い木材が曲がるのだ。

そして、柔軟性を増した大型の弩を発射態勢に持ち込むには、魔弓オリエントという魔道具の魔法陣も流用している。

つまり、魔力を込めた魔石を用意しておけば、ごく普通のひとりの兵でも攻撃力の高い大型の弩を放つことができるのだ。

ようするに、こいつは大きな攻撃用魔道具というわけである。

そして、発射する弾は複数のレンガだ。

これは単純に弾の確保のしやすさからだ。

魔法が使えるなら【レンガ生成】でいつでもどこでも数を揃えることができるからな。

たった一度の攻撃で、空には大量のレンガがバラまかれる。

しかも、今使った弾は普通のレンガではなく、硬化レンガのほうだった。

そこらの金属以上に硬いとも言われるそれなりに重さもあるレンガが地上にいるグルーガリア軍の上から落ちてくる。

レンガは痛いぞ。

こうして、地上から柔魔木の弓で攻撃するグルーガリア軍にたいして、砦からいくつもの大型魔弓による硬化レンガの範囲攻撃を行うオリエント軍という形で戦闘は進んでいったのだった。