軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ガラス温室

い、いかん。

このままではかわいい弟に変な兄貴だと思われてしまう。

そんなことは許せない。

せめてカイルにはかっこいいところを見せておいてやらねばならない。

そう考えた俺はさらなる温泉の活用について考えを巡らせることにした。

わざわざ川から温泉を引いてくるという行為を正当化できるだけのことをしなければならない。

お湯を沸かせば入れる風呂という代わりがきくものではなく、あえて温泉を引いてきただけの価値があることをしなければならないということだ。

だが、そんなことが可能なのだろうか。

俺は自分の持つ知識を総動員して、温泉活用法に頭を悩ませたのだった。

※ ※ ※

「大将、今度はこの村に何をつくろうってんだ?」

「ふっふっふ。いいものだよ、バルガスくん。かねてより温めていた計画をこの温泉の存在によって実現に移すのだ」

「なんだよ、その喋り方。まあ、大将の作るものが何かは知らないが、もうすぐ寒さが一段とひどくなるからな。早いところ済ましちまおうや」

考えすぎて多少テンションが変になった俺を見ながら、バルガスがサラリと流して話を進める。

俺は再び隣村へとやって来ていた。

川から引いてきた温泉のさらなる活用をこの隣村で行おうと考えたからだ。

俺は温泉を川にある噴泉池から直通でこの村まで引いてきていた。

そして、硬化レンガを使って地中を通ってやって来た温泉の湯をこの村でプールのように広い湯船へと注ぎ込み入浴することに成功している。

今回はそのパイプから流れる温泉の一部を別のパイプへと通して活用することにしたのだ。

まずは建物をいくつか作る。

これは普通の建物ではない。

というか、おそらくこの世界には存在しないであろう建物を作り出した。

硬化レンガを材質とした格子状の柱をいくつも建てる。

そして、その格子にはめ込むように板ガラスを設置していった。

そのガラスは建物の側面だけではない。

天井にまでガラスをはめ込み、建物の反対側や空すら見ることのできるガラスの建物を作り出したのだ。

俺が作ったのはガラス温室と呼ばれるものを模した建物だった。

このあたりの気候では冬は雪が降り積もり、基本的に作物が育てられない。

この世界に生まれてから俺は冬でも食べ物を得られないかと悩んでいたのだ。

だが、それは無理だった。

いくら魔法を使っても雪の中ではなかなか育てられなかったからだ。

ならばガラスを使ったらどうだろう。

そう考えたことがあった。

ガラス製の建物を作れば日中は普通に太陽の光が当たることになる。

だが、ガラスの屋根があるため雪などの影響を受ける心配はない。

そう思った俺は以前にも小型のガラス温室を作ったことがあったのだ。

だが、これは失敗に終わっていた。

どうも後でわかったのだがビニールハウスのような温室とガラスの温室では決定的に違うことがあるらしい。

ガラスの場合、熱が逃げやすいのだ。

日中であれば太陽の光で温室内の温度は保たれるのだが、夜になるとほとんど外の気温と同じになる。

つまり、極寒の気温にさらされることに変わりがないため、ガラス温室を作っても冬場はまともに作物を育てられなかったのだ。

しかし、今回温泉が見つかったことで状況が変わった。

温泉の蒸気を利用してガラス温室の内部に熱を供給する。

こうすればたとえ太陽が沈んだあとの極寒の夜も温室内の温度は高い状態で保たれるはずだ。

湿度がすごそうとか、いろいろ問題点も出てきそうだがそのへんはやってみなければ分からない。

半分実験的な面が強いと言えるだろう。

俺はたくさん作ったガラス温室の中に温泉の熱が立ち込めるように硬化レンガのパイプを通していった。

完成した温室に入ってみると、冬場にお風呂に入ったあとの浴室内くらいの温度になっているように感じた。

雪が降るこの時期にこの温度を保った空間を作り出したというのは、なかなかの成果ではないだろうか。

あとはこの状況できちんと育つ作物があれば最高なのだが。

「バルガス。この村の人に温室内で食べ物を作るように言っておいて。うまくいけば、冬の食糧事情が大幅に改善することになるぞ」

「ははっ、さっすが大将だな。まさか、こんなもん作り出すとはな。いいぜ、村の連中にはちゃんと世話するように俺から言っておいてやるよ」

「頼んだ」

こうして隣村では温泉宿の他に、新たにガラス温室という異質な建物が増えることになったのだった。