軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

Sense38

種子不足のせいで畑が半分ほど稼働していないのを解消するために、ちょっくらポータル使って第三の町まで行って、薬霊草と魔霊草を買い足して来た。

大体畑の割合が、薬霊草50個、魔霊草50個、解毒草と解痺草で50個。残りは、活力樹や新しく手に入れたアイテム栽培用にしていて、今は魔霊草が一時的にそのスペースを占拠している。

また金が減ったと思うが、ハイポとMPポーション売れば元取れるし、良いかな?とも思う。

錬金で種子作って、NPCの娘に渡して指示しておくだけで後は、最適な管理をしてくれる。

「あっ、ユンさん?」

「うん? なに」

NPCが何か畑で話がある時は、向こうから話しかけてくれる。なんか、一日中AIと話しても飽きない。とかそのレベルらしい。凄いよな。

対人訓練でNPCと会話する人がいるとか、いないとか。

「活力樹が定着して実を付けるようになりましたよ」

「ありがとー。じゃあ、見てみるよ」

俺が返事をすると、愛嬌のある笑みを返してくれる。むう、なんという細かい表情。本当に中に人がいないのか? と疑問に思ってしまう。

そして、案内された活力樹は、俺の腹ほどの背丈で実を三つほど実らせていた。

実の形は、すっごいニンニク。

木になるニンニクってシュールだな。

「ねえ、活力樹ってどういう使い方するんだ?」

「さぁ? 逆に聞きますけど、ユンさんは何でこれを植えたんですか?」

「……種があったから植えた」

「……」

そんな気まずい雰囲気を醸し出さなくても良いでしょう。今、実は人が操作してますって言われたら絶対に信じる自信あるよ。

なんか、場の空気が気まずいから逃げるように、俺は言葉を捲し立てる。

「お、俺少し、出かけるから後の収穫よろしくね」

「はい、いってらっしゃい」

逃げ出すが、用はちゃんとある。マギさんたちに事前連絡入れて、武器と防具を取りに行く。

今日は、リーリーのお店に集まれば良い様だ。

町中を走り抜け、東側のお店。今日は開店しているのか、クロードのお店も人の出入りがある。が、意外な事に女性客が多い様に感じた。

「いや、偶然だよな。偶然。ただ皮や布装備の人が女性に多いだけだよな」

そう言い聞かせ、反対側のリーリーのお店に入る。

中には、先客がいるようで、軽装の魔法使いやこん棒を持っている人。

店内には、宝石付きの杖や弓、珍しい武器だとフレイルという、棒と棒を鎖で繋いだ打撃武器などが飾られており、マギさんのお店とは違う趣の武器が目を楽しませてくれる。

「へぇ~。面白いな……なんか、パチンコとかもあるし」

Y字型の木の間に伸縮性のある素材と皮をあしらった道具。

「いらっしゃい、ユンっち。弓は出来てるよ」

店内に飾られている装備品を眺める人の間を抜けて、カウンター越しにリーリーと対面する。

店には、細面の店員のNPCもいて滞りなく運営されているようだ。リーリーが俺を連れて奥に引っ込む時、NPCが俺達に向かって、軽く会釈してくる。

「来たぞ。他の二人は?」

「クロっちは、まだお店にいるらしいね。マギっちは奥で待ってるよ」

「俺も奥で良いか? ちょっと見せたいものもあるし、人には見られたくないから」

「なになに? また何かやらかした?」

「人聞きの悪いこと言うなって。別にやらかしたわけじゃないって」

文句を言うが、目の前のロリショタは、楽しそうに笑って流すだけで、俺の方がたじたじだ。

「おー。ユンくん。こんにちは」

「マギさん、こんにちは」

「うーん。今日は私がいる必要無い気がするけど、何かあるようじゃない」

「それは、また後のお楽しみ。ってことで」

「あはははっ、焦らすね。ユンっち」

リーリーは、そう言いながら、テーブルの真ん中に長弓を取り出し置く。

「ユンっち用の依頼通りに作った弓だよ。大きいから取り回しが大変かもしれないけど、試しに持ってみて」

しなやかな曲線を描く弓の色合いは、黒。 黒檀(エボニー) の色合いを思い浮かべる。

弦の張り具合は、堅く、弓全体は、ずっしりと重い。だが、扱えないとは思えない。むしろ、手にシックリくる不思議な感じだ。

黒乙女の長弓【装備品】

ATK+40 追加効果:ATKボーナス

黒乙女って、何で乙女。

「これも、クロっちの防具と同様でランクアップも強化素材で追加効果を増やすこともできるから。気に入ったら、また持ってきて。後はたまに、耐久回復とかしなきゃいけないんだけど……ユンっち、それを使いこなせる?」

「ああ、重たいんだけど、扱いやすい。歩きながら使うのは大変だと思うけど、これは結構遠くまで狙えそうだ」

矢を番えずに、弦だけを引っ張り、鳴らす。弦楽器のような澄んだ音が部屋に響く。

「……凄いね。ユンくんは」

「そうですか?」

「武器や防具の中には、身の丈に合わない装備を付けるとマイナス補正が掛かるんだ。ATKが足りないのに金属鎧を装備すれば、SPEEDが極端に落ちたり、大剣の場合は持ち上がらなかったり。

弓にもそれがあるの。それで、ユンくんはその弓に拒絶されなかった。凄いことだよ」

マギさんは、身の丈に合わない装備のマイナス補正を言うに事欠いて、拒絶とは、上手いな。

「弓のマイナス補正は、ダメージの反射。現実で弓をやる人は、手が擦れたりして、怪我をするでしょ? あの現象が起きるんだ。

DEXが低いと矢を射る度に、地味だけどダメージを受ける。でも僕の杞憂だったようだね。現状で何とかなるかな? とか思ったけど、十分DEXが足りている」

弓を渡す時、リーリーが言い淀んだのは、それが原因か。

それにしても、まさか弓に俺の知らない不遇が存在したとは。それに他の装備でも身の丈に合わない装備は無理なのか。

そう言えば、タクとか全身鎧を着こんでいたわけじゃないな。頭と、腕は金属装備付けてなかった。 町ですれ違うプレイヤーたちに、全身金属鎧の人が殆どいない理由は、資金不足だと思っていたが、そう言う原因で装備しないのも理由にあるのかもしれない。むぅ……奥が深い。

「どうやら、クロっちが来たみたいだね。中に入ってきて」

リーリーは、チャットでクロードと会話をしているようだ。程無くしてNPCの店員に案内でクロードが入ってきた。

「俺が最後か。すまない遅れた」

「別に待ってないよ。それにクロードは、また、あれやってたんでしょ?」

ひらひらと手を振るマギさんは、呆れたように言う。あれ? って。

「なあ、あれって何だ?」

「ブログに乗せるスクショを撮ってた。俺の服を着たプレイヤーを、な」

「……盗撮?」

「失礼な奴だな。ちゃんと、詳しい説明をしてやったぞ。顔も隠してあるし、服自体の紹介ブログだ。そして貴様も俺のモデルの一人だ」

「何でだよ!」

「お前のその服は、俺の傑作のうちの CS(クロードシリーズ) を冠した作品だ。記録を残さずにどうする」

「いやいや、知らんって。良いから防具くれよ」

全く、せっかちな奴だ。と溜息を吐かれた。いや、俺は精神的に疲れた。

「ほら、インナーと腰装備だ」

「ああ、ありが……とう?」

歯切れが途中で悪くなるのは当然だろう。インナーはまだ良い。コートと同じ黒地に黄褐色の刺繍が入っている。何の刺繍か分からないが、紋章みたいでカッコいい。ただ、腰装備がいただけない。

「おい、パンツじゃねぇか、これ」

「これは水着だ。パンツじゃないから恥ずかしくない!」

「スカートは辞めろって言って水着かよ! 余計に恥ずかしいわ」

「安心しろ、腹装備で、腰布を巻けば、スカートの様な……いや、すまん。冗談が過ぎた」

マギさんが、拳を振り上げた状態で、クロードに向かってにこっとしていた。指にはリングがいくつも装備され、その中には俺のトリオン・リングが見てとれる。

絶対、ATK強化のリングだよ。あれ。

「本物はこっちだ」

水着の代わりに取り出されたのは、ホットパンツだ。こちらは、濃緑色の生地で肌さわりは、ジーパンに近い。動きやすいだろう。少し後ろが気になるが、コートの裾がうまくお尻を隠してくれるのは見事に設計されているようだ。

「CS№6オーカー・クリエイター。とでも言えば良いか」

「そのシリーズとかナンバーって恥ずかしいんだけど」

「これだけは譲らん。それに装備の性能を見ろ」

CS№6オーカー・クリエイター【内着】

DEF+10 MIND+10 追加効果:DEXボーナス

CS№6オーカー・クリエイター【腰】

DEF+10 SPEED+10 追加効果:DEXボーナス

「物理防御合計が36、魔法防御が10、速度が10。三点だけでこれだ。下手な金属の全身装備よりも性能は良いはずだ」

いや、知らんって。俺のエンチャントリングとでは比較する対象が間違っていると思うから専門の人に尋ねる。

「そうなの、マギさん」

「ほんとだよ。むしろ、速度が上昇するから金属鎧よりも俊敏に動けるよ」

マジですか。まあ、見た感じ良いかも。

「他三か所のデザインはもうある。早く金を用意して、フル装備のオーカー・クリエイターを拝ませてほしいものだ」

「普通に服だけなら見れるだろ?」

「最高のモデルが着てこその服だ! 着る者の居ない服などに興味はない!」

うわっ、台詞はカッコいいけど、つまり、俺に服着せたい。ってことだろ。あっ、なんか、鳥肌が立ってきた。

「リーリー、どこかで着替えさせてくれないか?」

「じゃあ、こっちの方に個室があるから、そっちにどうぞ」

俺は、案内された場所で、装備をオーカー・クリエイターに着替える。

着心地は、今までの初期装備以上に良いし、体が軽い。速度上昇の恩恵が実感できる。

「着替えました」

うーん。みんなこっちを凝視してるな。ちょっと、肩に掛けている矢筒とか、髪は大丈夫だよな。まあ、元々VRの中で服装気にするのもおかしい気がする。

「似合ってるね。ユンくん、身軽そうだね」

「おー、ユンっち、モデルみたい」

「うむ。俺の見立ては間違っていなかったようだな。パシャリ」

三者三様で肯定的な感想を口にするのは、嬉しいが、ちょっと恥ずかしい。

その思いを察したのか、リーリーは、俺に近づき、手を引いてくる。

「それじゃあ、その装備のままこっちに来て、試射してみてよ」

リーリーは、俺達を引き連れ、店の裏手に案内した。

そこには、幅十メートル、奥行きが十五メートルの射撃レーンを思わせる広場と並ぶ板金製のかかし。

「魔法と弓の試し打ちのために作ったんだ。ユンっち、やってみて」

「じゃあ、少しやらせて貰う」

俺は、十五メートル先のかかしを鷹の目で見つめる。

新しい長弓に矢を番え、弦を引く。新しい防具のDEXの補正があるのか、さっき弓を引いた時より扱いやすい。

先ず一射。まっすぐに飛ぶ弓は、板金のかかしの中心に当たり弾かれる。だが当たった所には、小さく、くぼみができているのが見て取れた。

続いて、右に歩きながら、矢を番え放つ。今までやらなかった移動撃ち。先ほどと同じ所に当たる。

第三射は、左へ。また同じ所に、今度は、鋼鉄の歪みが大きくなる。

四、五……同じように左右から射る。六、七、八、九、十、狭いスペースだが、左右にステップを踏み、激しい動きで矢を放つが、体の軸はぶれない。

矢がちょうど十八本目の時、板金を貫いた。俺はそこで弓を下ろし、ふうっと溜息を吐き出し、独り言のように感想を呟く。

「良い出来だと思う。前だと、鉄は貫けなかった」

「あはははっ、矢だけで鉄を貫くって。それも、移動撃ちとか遠距離職じゃあ難易度高い技術だよ、ユンくん」

「それ以前に、全く同じ所に撃つ。ってことはDEXが相当高いよ。早くユンっちのステータスを確認してみたいよ」

そう言われると、ちょっと恥ずかしいな。

そして、一人腕を組み、ぶつぶつ呟いているクロード。REC完了、SS撮影完了、フォルダ名には、黒の戦女神。完了、隠しに保存。

聞くのがちょっと怖いな。知らぬが仏って言うし。話を進めよう。

「リーリーは武器を、クロードはカッコいい防具を作ってくれて、ありがとな」

「気にするな。それよりモデルをやらないか? 防具の割引はするぞ」

「気にしないで。僕は、自分の手で作るものが好きなだけだから」

「リーリーは、これからも贔屓するぞ。あとクロード。男物で、俺の名前が出ない。が条件で気分が乗った時ならな」

嬉しそうな顔をするリーリー、肩を竦めるクロード。そしてそんな俺達を微笑ましいもののように見ているマギさん。

「それじゃあ、俺から三人に話。前に言っていた付加術で素材に技能付加できるからそれをアイテム化してみた」

三人に、エンチャントストーンとマジックジェムを見せる。

MPの消費量が攻撃魔法の方が大きいこと、更に上位の素材じゃないと上位の攻撃魔法は付加できない可能性。などを説明していく。

その説明を聞き終わって最初に疑問の声を上げたのは、リーリーだった。

「ふーん。で効果はどうなの? ダメージ量は? 杖を持った時は魔法に補正が掛かるけど、無しで付加したマジックジェムはどうなの?」

目を光らせて矢継ぎ早に質問を投げかけてくるリーリー。木工師として、杖や魔法使いを多く見ているための疑問なんだろう。だが俺は全て答えられなかった。

「実は、まだこれを試し打ちしてないんだよ。だからこの場でやっても良いか?」

「良いよ。あのかかしに狙って打ってみてよ」

俺は、弓をインベントリの中に仕舞い込み、代わりにマジックジェムを十個取り出し、左手に持つ。

その中の一つを右手で摘み、正眼に構える。

「――【ボム】!」

俺のキーワード発動で光を発するマジックジェム。だが発するのは、右手の宝石だけでなく、左手に持つ、九つの宝石までも。

「やばい……伏せろ!」

クロードの怒声が響いた直後、俺の手の中で全ての宝石が――爆ぜた。