軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

4-1【友好MOBに会おう】

OSOには、様々なMOBが存在する。

プレイヤーを発見したら攻撃してくるアクティブMOBや攻撃されるまで自由気ままに徘徊するノンアクティブMOB。

プレイヤーとの激戦を繰り広げるボスMOBや何らかのクエスト進行に必要なイベントMOB。

そして、俺のパートナーであるリゥイやザクロのような使役MOBや特に何をする訳でもない中立MOB。

そして、プレイヤーに何らかの恩恵を与える――友好MOB。

今回は、そんな友好MOBについてのお話である。

まず最初に――

「よし、薬草畑から薬草を集めるか」

「はい。頑張りましょうね」

俺とNPCのキョウコさんは、【アトリエール】の裏手に広がる薬草畑で薬草を採取していた。

ポーションなどの消耗品を扱う【アトリエール】では、ポーションの素材となる薬草は、とても重要である。

そんな畑という要素は、初期は不遇要素を多数抱えていたコンテンツであったが、度重なるアップデートでこっそりと強化されていた。

その一つが畑に出現する友好MOBの存在であり、今日は、その友好MOBが来ていたようだ。

「ユンさん、こっちにムーちゃんが来ていますよ」

「おっ、ムーちゃん。来てたのか」

『ムゥームゥー』

俺がキョウコさんに呼ばれた薬草畑の一角を振り向くと、そこからムゥムゥーと可愛らしい鳴き声が響く。

一見、子猫のような鳴き声のムーちゃんと呼ばれる存在を見るために近寄れば、薬草畑の葉っぱの下に隠れて、大きな子猫ほどの芋虫が、ハイポーションやメガポーションの材料である薬秘草をムシャムシャと食べていた。

黄色い触覚と真っ黒な蟲目、少し硬そうな甲殻を背負い、二本に分かれた尻尾先を持つ芋虫型のMOBである。

その芋虫型MOBは、高い位置の薬秘草を食べるために、後ろ足で立つと、甲殻に覆われていない柔らかそうなお腹辺りが見え、短く可愛らしい丸まった脚先がちょこちょこと動いている。

「最初、ムーちゃんが来た時は、驚いたけど、こうして見ると可愛いよなぁ」

芋虫型のMOBということで人によって嫌悪感などがあるだろうが、ジッと観察するとその動作が一々可愛らしく、俺とキョウコさんは、ムーちゃんが来たら、いつも出迎えている。

『ムゥムゥムー!』

「あ、倒れた」

後ろ足で立ち、薬草を前足で押さえて咥えたところで後ろにコロンと倒れた。

背中に甲殻を背負っているので怪我はなく、倒れてお腹を向けても短い足で葉っぱを押さえてムシャムシャと食べている姿は、どこか気が抜けて可愛い。

「ムーちゃん。こっちの薬草も食べるか?」

『ムィムィムゥー!』

俺がまだ収穫していない薬秘草を引っこ抜き、ムーちゃんに与えると、嬉しそうにムシャムシャと食べ始める。

俺とキョウコさんがムーちゃんと呼ぶ芋虫とは何か。

畑のアップデートによって追加された畑限定で出現する友好MOBの芋虫のムシュフェルトというMOBである。

俺や畑を持つプレイヤーたちの間では、ムーちゃんの愛称で親しまれている。

そのムーちゃんは、ふらりと畑によって農作物を勝手に食べてしまうことがあるのだ。

それだけ聞くと一見、お邪魔要素のように聞こえるだろうが、去り際に薬草や農作物を食べたところに、お尻の尻尾を畑に突き刺し、その作物の種を植え直すのだ。

そのために、プレイヤーにとって、貴重な農作物の種を消失することがなく、時間的なロスだけになる。

「けど、あの光景って、可愛いんだけど――やっぱり、いや止めよう」

地面にお尻を突き刺して排泄しているから食べたものに含まれる種から発芽して作物が育つのではないか、と考察しているプレイヤーがいる。

まぁ、その辺は、考察なので真実は分からない。

とりあえず、ファンタジーであると考えよう。

そんなムーちゃんが友好MOBたる所以は、畑の農作物を食べた後、有用なアイテムをくれるのだ。

「ユンさん、ムーちゃんが出し始めましたよ」

「じゃあ、キョウコさん。これで集めましょう」

俺は、インベントリに入っている空のポーション瓶を取り出し、ムーちゃんの変化を待つ。

ムーちゃんは、背中に背負っている甲殻の隙間から黄緑色の澄んだ液が滲み出てくる。

それを待っていると少しずつ、ぷっくりと膨らみ、そして、表面が乾き始めて、ポロリとムーちゃんの背中から剥がれ落ちる。

俺とキョウコさんは、それも五つ拾い集めた後、ポーション瓶の上で乾いた表面の膜を割って、中の液体をポーション瓶に詰める。

友好MOBのムーちゃんから手に入る有用アイテムを手に入れることができた。

ムシュフェルトの畠蟲蜜(消耗品)

園蟲・ムシュフェルトが分泌する蟲の蜜。料理に加えることでアイテムの効果を増強させる。

このムシュフェルトの畠蟲蜜――通称、『畑蜜』は、料理系アイテムの追加効果を強化する効果がある。

そのために料理系プレイヤーの間では、畑プレイヤーの人口の少なさに対して、需要が高いので高価になっている。

そんな畑蜜を手に入れた俺は――

「リゥイ、ザクロ。ムーちゃんからお裾分け貰ったから、あとで蜜入りクッキー作ろうな」

『きゅっ! きゅきゅっ!』

【アトリエール】の薬草畑に面したウッドデッキでのんびりと過ごしていたリゥイとザクロがゆったりと起き上がり、ザクロが嬉しそうに鳴き、尻尾を振っている。

このムーちゃんの畑蜜は、効果もさることながら、程よい甘さで砂糖の代わりや料理の隠し味などに使うのが楽しみなのだ。

俺とキョウコさんは、薬草を食べて蜜を分泌し終えたムーちゃんがゆっくりと帰って行くのを見送り、薬草畑の収穫の続きを行なう。

その後、ムーちゃんの畑蜜だけでは量が足りないので、蜂蜜とブレンドしたハチミツクッキーを作る。

オーブンストーブで焼かれ、【アトリエール】の店内のハチミツの甘い香りが充満し、嬉しくなる。

ハチミツクッキー【食物】

満腹度+20% 追加効果【INT+10】【MP+5%】

そして、焼き上がり、程よく冷めたクッキーを味見するとサクッとした食感と甘い蜜の味、そしてINTステータス強化とMPの上昇効果が持ったクッキーができたことをムーちゃんに感謝して、リゥイとザクロ、キョウコさんと一緒に、お茶会をするのだった。