軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

3-4

女子会のホストとして見回る俺は、ウッドデッキの端の方でテーブルに何かを広げて向かい合っているルカートとエミリさんの所に向かう。

お茶とお菓子を少しずつ口にして、互いに静かに向かい合っている。

「ルカート、エミリさん。お茶のお替わりは必要?」

「あっ、ユンさん。いただきます」

「ユンくん、ありがとう。いたせりつくせりね」

そう言って微笑むエミリさんは、テーブルに広げた何かの上に置かれたものを動かし、エミリさんの好きなパウンドケーキをフォークで一口サイズに切り分けて食べている。

「二人は、何をやってるんだ?」

「エミリさんが持ち込んだボードゲームで遊んでいるんです」

二人のテーブルを覗くと、大きな動物の皮のシートの上に、六角形のマス目が描かれており、その上に金属製のフィギュアが置かれている。

ルカート側は、剣士や騎士や魔法使いなどを模したフィギュアが六体。

エミリさん側は、マス目を超過するように細長い獣型のフィギュア。

また、エミリさんは使用していないが、様々なモンスターのフィギュアがある。

「金属のフィギュア?」

「そうよ。知り合いのボードゲーム好きの【細工】系プレイヤーがオリジナルのボードゲームを作ってね。そのテストプレイよ」

動物革のシートにマップを描いて、その上でフィギュアを動かして、戦わせるタイプのボードゲームで二人の手元には、各フィギュアのステータスと複数のダイスがある。

「へぇ~」

俺が相槌を打つ目の前でルカートは、静かにフィギュアを動かす。

ルカートの操るフィギュアは、OSOの六人パーティーのように役割毎の動きをして、目の前の細長い獣型のフィギュアを相手する。

「私は、騎士を側面に移動。攻撃します。――成功。ダメージダイスは、2D6で7です」

「なら、ボスの装甲4からマイナスして3点ダメージね」

攻撃の判定は、6面ダイスや10面ダイスを振って命中やダメージを判定している。

また、マス目が六面であるために、正面三方向はダメージ倍率1倍。左右の側面が1.5倍。背面2倍などと言う感じでポジションの選定が重要になっているようだ。

「次は私ね。うーん。このまま騎士を側面に置いておくと背面に回られそうだから、少し移動して、ノックバック攻撃。――成功、ダメージダイスは、2D6+3で10ね」

「騎士の装甲が3からマイナスして、7点ダメージ。危ないですね」

ただ、エミリさんの操る一体の獣型フィギュアは、ボスモンスターらしくステータスや攻撃性能が高いので、正面からでも高いダメージを出せる他、特殊技で相手のコマを強制移動させるノックバック技でダメージを与えつつ優位に戦況を動かす。

「敏捷の早いキャラ順に動かすと――」

盗賊がボスの背面に一気に移動し、攻撃。

剣士が反対側の側面に移動し、攻撃。

僧侶が、騎士の回復に間に合うように移動。

魔法使いが遠距離から攻撃。

予備戦力の騎士Aが魔法使いを守る位置につき、待機。

騎士Bは、ダメージを回復させるために、移動した僧侶の傍まで移動。次のターンに回復だろう

そうして、再びエミリさんのボス――

そうしたサイクルで戦闘が行なわれる。

人数が多い人間パーティー側が有利そうに見えるが、ボスモンスターの攻撃力も高く、防御力の高いフィギュアで運が悪ければ、瀕死。

防御力の低いフィギュアは、即死の可能性があるので立ち回りが重要になる。

また、危ない時は、ターンでの行動を放棄した騎士が庇ったり、攻撃対象の強制変更などのスキルを使い、戦況を安定させている。

「そして、ついに――」

「私は、剣士が攻撃します。――成功。ダメージダイスは、2D6で8です」

「じゃあ装甲4点分引いて、4点ダメージ。はい、ボス撃破ね。お疲れ様」

「ふぅ~。改めて立ち回りを考えさせられるゲームですね」

何度か、壁役の騎士が崩れそうになった場面があり、騎士Aは、回復される間もなく倒され、ボスも突進という技能で攻撃と共に1マス前進する技能で危うく魔法使いと僧侶が攻撃範囲内に入りそうになってた。

「うーん。MOBとの戦闘時の思考実験としては面白いけど、ゲームとしては、もう少し詰めた方がいいわねぇ」

エミリさんは、ボス撃破完了で横倒しにしたフィギュアを拾い上げ、眺める。

そして、ルカートも同じように動物革のシートの上に載せたフィギュアを手元に寄せる。

「でも、すごい精巧に出来ていますよねぇ」

「なんでもスクリーンショットとかの画像を3Dモデル化してそれを【細工】センスで金属を削り出して作っているみたいよ」

このフィギュア群を作る生産職は、無数の敵MOBフィギュアを量産し、着彩し、それでジオラマを作るのも趣味らしい。

その一環で出来たのが、このオリジナルのボードゲームらしい。

「それなら、自分のフィギュアとか作れそうですね」

「作れるわよ。プレイヤーのフィギュアを作製を請け負って活動資金にしているから」

ただ、一体300万Gとかなりが技術料が高めだ。

OSOでのニッチな需要であるために、使う素材に関係なく、高いために一部のプレイヤーの記念品として一定の需要はあるらしい。

「いいですね。今度、ミュウさんたちと行ってみたいと思います」

「なら、その生産職への紹介メールでも送っておくわ。あと、実は、色んなMOBの3Dモデルを作る参考資料で、色んな角度からのスクリーンショットを欲しがっているからそれを情報料として買い取ってくれるわよ」

そうすれば、多少便宜を図ってくれるはず、と言っていた。

エミリさんのアドバイスにルカートが、うんうんと頷いている。

俺は、聴く側に回りつつ、この女子会のホストとして、色々と見て回る。

そして――

「あー、楽しかった。また、女子だけで集まってやろうね! 次は、セイお姉ちゃんやミカヅチさんも参加できると良いね!」

「そうだな。まぁ、楽しめて良かったよ」

時折、話し合う女子との組み合わせを変えて、話をしていた。

OSOのゲーム情報やお得情報、ちょっとした小技・小ネタの情報共有など、思わぬ発見があったり、女の子らしいトークに花を咲かせた。

中盤からは話す話題が無くなっていたので、テコ入れとして俺が、シンプルなテーブルゲームを提案し、希望者が参加して盛り上がりを見せて、女子会の時間はあっという間に過ぎた。

全員には、お土産のお菓子を渡し、【アトリエール】から見送る。

「あかん、うちら、お昼寝してもうた……全然、何やったか覚えとらん!」

「ううっ……なんか、モフモフしてた記憶しかないです」

レティーアの使役MOBに寄りかかり、眠ってしまったコハクとマミさんの少し残念そうな様子に微苦笑して、次は楽しめるようにやろうと思う。

そして、最後に――

「ユンお姉ちゃん。ありがとう、楽しかった」

満面の笑みでお礼を言ってくるミュウに、それはよかった、と思って全員を見送る。

まぁ、たまにはこういうのも悪くないかな、と思いながら、静かになった【アトリエール】で俺は、お茶を一杯飲み、ホッと一息吐くのだった。