作品タイトル不明
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「ふぅ、満足した!」
「ボクは、疲れたよ。やっぱり、いつものボーイッシュな格好の方が楽だね」
ミュウは、セイ姉ぇと同じくらいに成長したが、大して印象は変わらずにいる。
ヒノは、少し疲れた様子ながら、自分が楽で似合うにはボーイッシュな格好だと思い、元の髪型などに戻している。
「やっぱり、おしゃれって楽しいですね」
「……私は、恥ずかしかった。あと、揉まれました」
青の【年齢偽証薬】を使ったルカートとトウトビは、グッと大人っぽく成長したために、綺麗になっている。
ルカートは、綺麗に成長しており、トウトビは、【増毛薬】で髪型を伸ばして控えめな美人に成長したが、小動物的な印象は抜け切らない。
あと、俺がいない間、誰に何を揉まれたかは、ツッコミはしないでおこう。それだけ二人は、きっと順調に成長するだろう。
「ふふふっ、皆さん美人で素晴らしいです。ああ、堪能できました」
外見に不相応な怪しいニヤけ顔のリレイは、一人赤いの若返りの【年齢偽証薬】を飲んでいたようだ。
次々と大人っぽくなるミュウたちを楽しんでいたのだろう。
中でも一番驚いたのは――コハクだ。
「だからってなんでリレイはうちに抱き付いてるんや? いつもなら、他の人の方に流れていくやん」
「ふふふっ、今の私は、幼い女の子で母性を求めているので、この中だと一番母性を感じたのが、コハクだっただけです」
「母性って胸は、相変わらずやで」
コハクも青の【年齢偽証薬】を使ったために、ミュウたちと同じ大学生くらいになっている。
だが、その印象は、大きく変わっていた。
何時もの髪の毛を結い上げる簪を外した結果、気の強そうな目元が垂れ下がり、穏やかそうなおっとり美人になった。
鼻先にちょこんと載せる丸眼鏡も目元が下がることで、更に古風ながら控えめな美人の印象を与える。
ただ、幼い姿になったリレイに纏わり付かれて、あんまり嫌がる素振りは見せていないのは、普段の面倒見の良さがあるのだろう。
「ユンお姉ちゃん、おかえりー」
「ただいま。みんな、綺麗になってビックリしたよ。まぁ……若干一名、逆に子どもの姿になっているけど」
「ふふふっ、ユンお姉様、大好きですよ」
妖しい笑みを浮かべる幼女姿のリレイは、ちょっと子どもらしくないので微苦笑を浮かべてしまう。
そして、全員が一通り楽しんだところで――
「そうだ! ユンお姉ちゃんも使って大人になってみない?」
「えっ!? 俺も!?」
「そうそう! ユンお姉ちゃんだと大学生くらいかなぁ」
4、5年分の加齢の【年齢偽証薬】を使えば、セイ姉ぇと同じくらいか、少し年上になる。
だが、俺自身別に、成長した姿を見たいわけでもないし……
「い、いや、やらなくて良いかな」
もしかしたら、このユンというキャラが機械誤認で女性として生まれたように、もしかしたら、より女性的な特徴が強調されそうで怖い。
なので、流石に自分で試す勇気はなく、そっと自分の体を抱き締めながら拒否する。
「えー! 絶対にセイお姉ちゃんに負けないくらいに綺麗になってると思うんだけどなぁ!」
「いや、俺は……」
「それじゃあ、早速、使ってみよー。え~い!」
ミュウの緩い掛け声と共に、蓋の開けられた青の【年齢偽証薬】が掛けられ、俺の頭に掛かる。
「冷たっ!? うわっ!」
そして、白い靄に包まれて成長した俺の姿は――
「あー、ユンお姉ちゃん。あんまり変わらないかなぁ? でも、雰囲気は少し落ち着いて大人っぽいかも」
「変わってない、って言われるのは、それはそれで嬉しくないなぁ」
俺は、ジト目でミュウたちを見返す。
確かに、あんまり身長は変わっていないが、服の上から撫でるように胸を触ると、心なしが大きくなっている気がする。
「すごいね。ユンさん。ボクより身長とか変わってないのに、大人っぽいもん」
「なんか、セイさんとは違った不思議な感じの女性になりますね」
「……えっと、セイさんが優しい包容力がある感じ。ユンさんは、少し傍にいるだけで安心感がある」
トウトビの言葉にミュウたちが、分かると同意する。
俺は、見守り、寄り添うような印象を与える程よい距離感の相手らしい。
だから、保母さんとか言われるのかなぁ、などと遠い目をしてしまう。
「全く……俺は戻るぞ」
俺は、疲れたような溜息を吐き出し、赤の【年齢偽証薬】を取り出す。
これを飲めば、青の加齢の年齢偽証薬と効果を打ち消しあい、元に戻れるはずだ。
だが、その前にミュウから最後のお願いが――
「ああっ! ユンお姉ちゃん、勿体ないよ! もうちょっとね!」
「いや、戻る!」
「スクショ撮らせてよ!」
そんな俺とミュウとの押し問答のルカートたちが笑う。
どんなに年齢偽証薬で大人になっても中身はそのままなので、全く落ち着くのない俺とミュウは笑われているので、少しだけ恥ずかしさを覚えた。
「あははっ、結局、大きくなりたい、って思っても何時かはなるんだから、ボクたち慌てて大人になろうとしなくてもいいんだね」
そんな俺とミュウのやり取りを見たヒノの言葉に俺は頷く。
「ほんと、そうだよ。ミュウみたいに中身も外見相応に成長する必要があるんだから」
「あー、お姉ちゃん酷いこと言ったー!」
事実だろ、と軽くミュウの額にデコピンをしながら、俺たちは【年齢偽証薬】の効果が切れるのを待つ。
そして、元の体に戻ったことでそれぞれが安堵したり、残念がる。
それでも今の体のまま、少しずつ将来の姿に近づくように心身ともに成長していければ、と願う。
そして、余談であるが――
「リゥイ、ザクロ。お前らが年齢偽証薬を飲んでも何にもならないぞ」
【成獣化】と【幼獣化】を切り替えることができる使役MOBのリゥイとザクロが俺の目を盗んで年齢偽証薬を舐めていたが、プレイヤー専用アイテムであるために特に変化はなかった。
リゥイが更に大きく成長することも、ザクロの尻尾が三尾から四本、五本と尻尾の数が増えることも無かった。
【年齢偽証薬】とは、結局ジョークアイテムなのだ。だから、そんなに便利なアイテムという訳ではないのだ。