軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1-4【祠巡りその1:森気楼というマント】

実は判明しているわらしべイベントの内容は、【深淵種子】の入手までだったりする。

そして、この【深淵種子】は、武器や防具、アクセサリーの強化素材として使え、闇属性の追加ダメージや耐性系の追加効果を付与することができる。

だが、俺は、まだこのわらしべイベントに連鎖が続いていると思っている。

そして、後日――

「こんにちは」

「よう来たな、嬢ちゃん。今回は、何の用だい?」

今日訪ねたのは、OSOの第一の町の南地区にいる農夫NPCだ。

時折、新しいエリアで手に入れた薬草や、化石やアイテムボックスのランダム納品で手に入る植物の種の栽培方法についてアドバイスをくれるために、OSOで二番目にお世話になっているNPCかもしれない。

「今日は、この植物の種を見てほしいんだ」

「また、新しい植物かね。色々手広くやっているが、土地は大丈夫なのか? 必要なら売るぞい。隣接した土地一枚で200万Gじゃ」

「だから、急に跳ね上がり過ぎだし、買わないから」

ジト目で農夫NPCに答えると、ふふふっと愉快そうに笑う。

そして、その笑いが治まったところで、インベントリから【深淵種子】を農夫NPCに見せる。

「むぅ! これは……」

驚き、目を見開き、俺の掌に置かれた【深淵種子】を実際に手に取って確かめてみる。

殻の硬さ、重さ、匂い、色合い、様々な要素を確かめた後に、俺にお礼を言って種を返してくれる。

「儂の知らん植物じゃな」

「そっかぁ……なんか、ヒントとかあればよかったんだけどな」

「情報が欲しいのかぁ。そうだなぁ」

顎を撫でながら目を細めて、何かを思い出そうとする農夫NPC。

俺は、何か効き出せないか言葉が出るのをじっと待つ。

「わしの爺さんが生きておった頃に聞いた話だ。古い風習とかで、黒い種を祠に捧げる話があったのう。ただ詳しい話は思い出せん」

もう、歳かのう、と呟き話はそれで終わる。

「祠かぁ」

割と目立つオブジェクトを探していけば、もしかしたら次のわらしべイベントの相手が見つかるかもしれない、と思った。

「まぁ、黒い種と祠の話だけだとちょっと不確かだし、図書館で先に調べるか」

俺は、その足で第一の町の北側にある図書館に向かう。

図書館裏手の憩いの広場にリゥイとザクロを離し、俺は司書NPCのレファレンスを利用して『黒い種と祠』に関わる本を何冊かその場で借りて読む。

「むぅ……それっぽい話はあるけど、その祠がどこにあるのか分からない」

俺は、『黒い種と祠』の伝承に関する本を読んでいる。

災害や疫病などに関わる荒神の類らしく、定期的に供物やお祈りを捧げていたが、ある時、供物に混じり珍しいものとして黒い種を捧げたら偉く気に入り、逆に一つのお願い事を叶えてくれるという。

なので、村の負担となる供物やお祈りを取りやめることを頼むと、承諾され以来、祠には供物やお祈りが捧げられなくなり、荒神の信仰も薄れて消えた。

これは、この地に教会がくる前の土着信仰のお話。

「……って、ヤバめな神様じゃん」

災害や疫病に関わる神様の祠っていい予感がしない。

もう、このわらしべイベント諦めようかなぁ、などと思うが首を振ってその考えを振り払う。

「とりあえず、最後までやってみよう」

俺はそう言って、借りた本を司書NPCに返して、図書館を出る。

そして、次に【深淵種子】を捧げた祠を探さなければいけないが……

「割と祠で検索すると色んなスクショが出てくるよなぁ」

他のプレイヤーが風景やオブジェクトのスクリーンショットを撮影し、OSO内部の掲示板に投稿することがある。

その中でも、遺跡や廃墟好き向けのスレッドには、祠らしきオブジェクトとそのスクリーンショット、その位置情報などが乗せられているのでそれを頼りに祠巡りをするつもりだ。

「ひぇ、火山エリアにも祠とかあるのか、とりあえず行ける範囲を行ってみるか。リゥイ、ザクロ」

図書館裏手の憩いの広場でのんびりと過ごしていたリゥイとザクロを呼び、そのまま祠巡りに出かける。

近場の祠から順番に巡っていくが、祠にも色んな種類があって面白かった。

石組みの小さな枠組みの中にご神体の石が置かれていたり、お地蔵様みたいな小さな石像が何体も並んでいたりする。

町中にある祠や石像などは、近場のNPCが手入れしているのか小奇麗でお供え物の果物が置かれていたりする。

その反面、町の外にある捨て置かれたような祠や石像は、苔や蔦が生えており、土や埃で汚れ、お供え物もしていない。

中には、ちょっと傾いていたりもする。

見ていると何とも物悲しい気持ちにさせられる。

「……できる範囲、綺麗にしてみるか」

応急処置になるが直せる範囲の祠を綺麗にしていく。

農業用の草刈鎌で周りに生えている草を刈り取り、ついでに【調合】に使える素材と肥料に使える草を集める。

また、リゥイには、水魔法で水を掛けてもらい、汚してもいい布で苔や汚れを落とした後、更に何度が水を掛けて綺麗に洗い流す。

ザクロは、成獣化して自在に操る三本の尻尾で傾いた祠や石像を支えて角度を調節したら、俺が傾きを直すために地面や祠に【錬金】センスで石をまとめ上げた岩や土石で地盤を整えて直す。

「よし、これでラストだな」

最後に、【彫金】センスで作った食器の上に果物でもお供えして、静かに手を合わせる。

リゥイも俺に合わせて目を閉じ、小さく首を下げ、ザクロも器用に後足と尻尾で体を支えて、前脚を合わせる。

「さて、本命の祠を探すか」

そうして、次の祠に向かうが、向かった先々の祠を直したい衝動に駆られ、巡る祠や石像を次々に綺麗にしていった。

十回も繰り返すと、慣れてきて祠の清掃の効率が良くなったところで、【彫金】センスのレベルが1つ上がっていたのは地味に嬉しい。

そして、20個目の祠を直したところで――

『汝、奇特な人間よの。打ち捨てられた祠を巡るとは』

『然り、然り。すでに信仰されぬ土着の神にすら信心深いものには褒美が必要かと』

『然り、然り。我らが汝に、これを授けよう』

突然頭の中に響く声に驚き、祠を綺麗にする時に使った布を取り落としてしまう。

そして、慌ててメニューを確認すると、受けた覚えのないクエストがクリア済みになっていた。

【お遣いクエスト:信仰されぬ神々への巡礼】

打ち捨てられた祠にお供え物をする。――20/20。

普通に、お供え物をすればいいクエストなのに、なんか祠を直してしまった。

そう言えば、様々な場所にある小さい領域のセーフティーエリアであるために、意外と休憩のついでにお供え物をするといつかクリアできるクエストだったのかもしれない。

「今度、またお供えするついでにセーフティーエリアとしての機能充実させようかな」

丸太の椅子とか、座りやすい岩とか置いて置けば、もっと他のプレイヤーが休憩に使ってついでにお供えしてくれるかも……と淡い期待を抱き、報酬を確認する。

「報酬は――【森気楼】って蜃気楼と森に多くの祠があるのと掛けているのかな? って……これって確か」

緑色のマントタイプのアクセサリーでそのステータスを確認したが、ステータス補正のないために少し落胆するも、アイテムの追加効果を見て、息を呑む。

「追加効果:【蜃気楼】って、オークションで高額取引されたユニークアイテムだ」

高い隠蔽系のユニーク追加効果を持つアクセサリーだ。

【隠形】系のセンスと組み合わせると対抗する【発見】系センスを持っていても発見は困難であり、更に敵MOBもほぼ反応を示さずにノンアクティブになるというアイテムだ

ダンジョン最奥まで戦闘数を少なく短時間で駆け抜ける時やPVPでの先制攻撃、敵MOBからの追跡を阻害し逃走成功率を高めるのに使えるアイテムだ。

「へぇ……このお遣い系クエストで手に入るんだ」

今まで情報が出てこなかったけど、こうやって手に入れたのか。

そして、このお遣い系クエストをやったプレイヤーは、アイテムを手離すもクリア方法は伝えなかったのか。

「まぁ、こうした細々としたクエストやる人少ないし、それに欲しければ、苦労を味わえばいいんだ」

一人で黒い笑みを浮かべながら、【森気楼】のマントを仕舞い、祠巡りを再開するのだった。