軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

Sense332

崩壊していく異次元の魔女城。

その崩壊が第二フェイズに移行し、崩壊によって落ちてくる瓦礫が徐々に大きくなり、瓦礫にぶつかるだけも少なくないダメージを受け、更にプレイヤーたちは危機に晒されていく中、俺たちも必死に脱出のために城の通路を逆走している。

「まだ時間の余裕はあるが、焦ってダメージ無視した結果、死に戻りなんてことになるなよ!」

「クロード! そんなミスはしないわよ!」

帰りの道筋は、道中にトラップなどがないことが分かっているために今度はマギさんが先頭を走り、頭上から降ってくる瓦礫が大槌で振り払いながら進んでいく。

そして、第六階層のボス部屋から降り、階段のところから見下ろした長い通路で見た物は、黒い靄のようなものがそこかしこにあり、そこから次々と現れる敵MOBが見つけたプレイヤーたちを襲い始める。

『BUMOOOOO――』

「あ、攻城戦の時のオークたち。こんな時に出てくるんだ」

「リーリー、呑気なこと言ってる場合か!」

そこかしこで戦闘が始まり乱戦模様の通路を無事に通り抜けることができそうにない。

【幻想空間】を求めて上へと登ろうとするプレイヤー、【幻想空間】を確保して城から脱出しようとするプレイヤー、無差別に襲い掛かる敵MOBのせいで、下手に動けば戦闘に巻き込まれかねない。

こんな乱戦状態の通路を強引に突破するほど生産職の俺たちは強くなく、また俺の長弓も取り回しの関係や乱戦には弱い。

考えている間にも城の崩壊は進み、また階段手前まで到達した敵MOBは階段の真ん中で足止めしていた俺たちを見つけて武器を振り上げて駆け寄ってくるためにそうした個体だけ遠距離を射抜いていく。

「くそっ! これじゃ埒が明かないぞ!」

「ふむ。事態が好転する要素はなさそうだし、攻めるしかないだろ」

クロードも俺と並び魔法を打ちながら階段に登って来るオークたちを倒しているが、それでも徐々に押されている。

「私が先陣を切るわ! ユンくんたちは後に着いて来て!」

「分かりました!」

「僕が殿を務めるね!」

リーリーは、二本のナイフを構えて軽く素振りをし、俺も乱戦の中に飛び込むために取り回しの難しい長弓から抜き身の解体包丁・蒼舞と肉断ち包丁・重黒を取り出す。

一応、【料理】センスに対応する武器であるために攻撃判定は発生するが、センスの補正やアーツなどはない。

「そこ退きなさい! はぁっ!」

脱出のための途中で立ちはだかるオークたちに切り掛かり、そのまま突き飛ばすように道を切り開くマギさん。

「結構、キツイなぁ! もう!」

キツイと言葉にするが、それでも嬉々として大槌を振り回しているマギさん。

防御のために構える武器や防具ごと粉砕して切り開く血路の後を追いながら、左右からこちらを捕まえようとするオークたちの腕を掻い潜る。

「くっ、はぁっ!」

「ユン、よく動きを止めた! ――《シャドウ・ブリット》!」

また接近し過ぎた敵には、肉立ち包丁の側面で攻撃を受け止め、カウンターで解体包丁を突き入れて動きを止めたところでクロードの魔法が頭部を狙い打ち、ゆっくりと後ろから倒れていく。

「ふぅ、危ないな――ぐっ!?」

横合いから飛び出して来るオークを一体倒した後、気が緩んでいたのか、その影に隠れていた敵MOBが腕を伸ばして俺を捕まえる。

【看破】のセンスにも反応があったが乱戦過ぎて危険な反応が多く、見落としたために襲われた俺は、一瞬息を詰まらせるが――

「させないよ! ――《ソード・ダンス》!」

リーリーが一瞬で近づき俺を捕まえるオークの腕を両手のナイフで無数の傷を付け、俺を離す。

「さっきはよくもやったな! ――《ボム!》」

反撃とばかりにそのまま胴体の分厚い脂肪に覆われた腹に肉断ち包丁を振るい半ばまで食い込ませ、頭部に《ボム》と【空の目】の組み合わせである座標爆破して倒し切る。

「みんな、あと少しで第五階層抜けるよ!」

中ボスとの連戦が行われ、今は瓦礫が散乱するこの場所がもうじき終わり、階段に差し掛かる。

俺たちを追って第四階層まで降りてくる敵MOBのオークの集団が後ろで集まっているが、クロードは一瞥すると杖を高々と掲げる。

「乱戦と混戦には、状態異常の闇魔法だ! ――《トランス・コンフュ》《バーサーク》!」

状態異常系の魔法を使用するクロード。

一体のオークに【混乱】状態を引き起こし、隣のオークを一発殴ると殴られた敵にも【混乱】が伝播する。また、【怒り】の状態異常を引き起こされた敵も同じように【怒り】が伝わり、固まっていた敵MOBが互いに互いを潰し合いを始めた。

「うわぁ、なにあれ。えげつない……」

後を振り返り、若干引き気味でその光景を見ているが、クロードは損な俺に指示を出す。

「ユン。奴らの足元に泥沼を設置だ!」

「わ、わかった。――《マッドプール》!」

俺は集まったオークたちの集団を中心に床面に泥沼を生み出す。

ずぶずぶと自重で沈んでいくがなおも互いに殴り合い、斬り合いを続けるオークたち。

そして、無事なオークたちが俺たちや他のプレイヤーの方に向かおうと泥沼を掻き分けて進むのだが、その間に他のオークたちに殴られ、引き倒されて次々と泥沼に沈んでいく。

「なに、この地獄絵図……」

「あはははっ、珍しい光景だね」

敵MOB同士の潰し合いに気が付いたプレイヤーたちは、そこを避けつつ、掠めるように、または泥沼の中に敵対していたオークをノックバック攻撃で叩き込むようにして次々とこの周辺の敵MOBを対処していく。

「よし、魔法の効果が切れる前に脱出だ!」

唖然としている俺たちに代わり、今度は、クロードが先頭に立ち第四階層への階段を降りていく。

そして見えたのは、第四階層の階段手前に開いた大穴が更に広がっており、第三階層を更にぶち抜いて第二階層の一部まで穴が広がっていた。

左右の迂回するギミック通路に入り込むプレイヤーとその後を追って進むオークたちを見た。

「……これはまだまだ戦闘が進みそうね。どっちに行っても狭い通路で回避の難しい戦闘を強いられるのかぁ。また、ユンくん足場作れる?」

「流石にここまで左右の壁が崩壊すると厳しいかも……」

土壁同時を連結させたアーチ状の足場で何とか向こう側に、と俺が考えている間にも事態は進む。

「マギっち、ユンっち、残り時間30分だよ!」

「思いの外、第五階層の突破に手間取ったな。それに……」

後ろを振り向くと混乱と怒りの状態異常で同士討ちをしていたオークたちが状態異常と泥沼の足止め効果が切れたことでその一部が第四階層に一気に解き放たれる。

「このままだ狭い通路で捌き続けるか、背後が大穴のこの場所で戦闘になるな。ユン、足場を作れるか」

「やってみる! ――《クレイシールド》!」

崩落した大穴の手前に土壁の足場を斜めに生み出す。

「――《クレイシールド》《クレイシールド》!」

少しずつ土壁の側面に土壁を生やし、アーチ状の足場を生み出す。

セイ姉ぇの氷のスロープのようにはいかないがそれでも大穴の半分を超えるくらいまでは大穴を渡るための足場を作り出す。

「ユンくん、オークが迫ってるよ!」

「ここまで伸びればあとは飛び越えられるだろ!」

「ユンっち、行くよ!」

まだ半ばまでしか伸びていない土壁の足場を駆け出すマギさんたちの背を見て、俺も釣られて駆け出す。

「《空間付加》――スピード!」

全員にエンチャントを施し、俺は、土壁の足場の根元に【ボム】のマジックジェムを撒く。

そして、追ってくるオークたちを一瞥すれば、まだこの土壁の足場に辿り着くには時間が掛かりそうだ。

俺たちは、斜めに伸びる土壁の足場を駆け上がり、蹴って向こう側を目指す。

プレイヤーとしてのステータスを考えれば、全員の飛距離は、十分だろうが、俺は更に成功率を高めるためにスキルを使用する。

「――《ゾーン・キネシス》!」

視認する全員に【念動】スキルを使用し、少しだけ体を軽くし、跳ぶ方向に力が掛かる様に操作する。

たったそれだけだが、空中で加速した感覚を覚えたマギさんたちは、驚きの表情を浮かべ、向こう側の足場に辿り着く。

マギさん、クロード、リーリーが次々と足場に着地する中、俺も到達地点を予測して着地に備えるが――

「ユンくん!」

着地と共に振り返るマギさんは声を上げ、直後俺の目の前に影が差し、頭部に硬い物がぶつかる。

城の崩壊により発生した瓦礫が直撃し、空中でバランスを崩す。

本来なら、向こう側の足場に乗ることができるが、バランスが崩れて足場の淵に体からぶつかる様にして叩きつけられる。

「ぐっ……」

腹部の圧迫感に苦しげな声を漏らすが、俺は何とか縁にしがみ付き、第三階層に落ちずに済んだ。

「ユンくん、大丈夫!?」

「今引き上げるぞ!」

すぐにマギさんとクロードの手によって引き上げられた俺は、這うようにして足場に辿り着き、大穴の向こう側を見れば、俺の足場を使い途中までこちらに来ようとするオークたちが見える。

「――【ボム】」

だから俺は仕掛けていたマジックジェムを一斉に起動させる。

土壁の足場の根元から宝石を起点に爆発が起き、土壁の根元から崩れ、それに乗るオークたちが落下して一気に第二階層の床に叩きつけられて光の粒子となって消えていく。

「これで後から追ってくる敵MOBはいないね。さぁ、僕らも脱出――」

背後のオークたちも足場の消失により左右のギミック通路に駆け込み始める中、俺たちは、一直線の太い通路を進んで第三階層、第二階層と降りて脱出すればいい。

そう思った矢先に、ビシリ、と嫌な音が走り始める。

「全員、この場から退――」

クロードが声を上げる前に、俺たちを乗せた床面の一部がごっそり抜け落ちるように大穴の中に落ちていく。