軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

Sense33

今日は、午後からのログイン。昨日ログアウトした畑からだ。

昨日、一昨日と必死に耕した畑は、半分ほどが植物に覆われ、残り半分は、種が足りずに放置。全くもって自分の計画性の無さを恨むが、結局全てを畑にする事が出来るので気にしないことにした。

ポーン。とログインと共に音が響く。ああ、マギさんだ。昨日の今日で向こうから連絡とは珍しい。と思いながら、チャットを繋ぐ。

「こんにちは。どうしました?」

『やっ、ユンくん。実は、クロードたちが君とお話したいって言うんだよ~。だから、ちょっとクロードのお店に来てくれない?』

「マジっすか? あー、えっと」

顔合わせ辛いな。被害者、加害者とかの事はもう良いが、ちょっと苦手なんだよな。態度とか、言動とか。

『やっぱり、クロードは苦手か。私も、こいつ何言ってんだ? みたいな感じだったし』

「ええ、まあ」

結構ぶっちゃけちゃいますね。とは言わない。

「ちょっと、ポーションとか作ってからで良いですか? 三十分くらいで行きますから」

『了解了解。じゃあ、お店に来てくれれば、クロードの店に案内するよ』

広くなった畑のアイテムを回収。活力樹は、少し伸びただけでまだ収穫できないようだ。それでも拡張して植えただけアイテムが増える。

ただ、増えた分だけ時間も掛かり、ポーションを作る時間も無くなってしまった。

「あー、作る時間ないな。手持ちのハイポとMPポーションでいいか。帰ってきたらまた作れば良いし」

俺は、インベントリにアイテムがある事を確認して、畑を出る。

通い慣れた道とすれ違うNPCを避けることももう慣れたものだ。ほら、目の前のすれ違う二人の隙間を華麗に抜けて、あっと、驚いてる。ごめんな。

そのまま走り抜けて、マギさんの店に辿り着いた。

「来ましたよ」

「おー、時間通りだね。じゃあ、行こうか」

お店のNPCの店員に一言何かを言ったマギさんは、俺を連れて【オープン・セサミ】を出る。

店を出て、二人で歩くとすれ違う人がちらちらと見てくる。殆ど町を全力で駆け抜けてるから見られる前に通るけど、意外と弓使いって珍しいもんな。なんか、見られるの居心地悪いし、早く人目のない場所に行きたいな。

「マギさん、その、クロードの店って……」

「東地区の大通りに面するお店だよ、ほら、見えてきた」

指差す先には、オープンテラスのあるお店。どう見ても喫茶店だし。

「ちなみに、その反対側はリーリーのお店ね」

反対側を見ると、木の看板の掛かったシックな感じのお店。人の出入りは激しくないが、結構な頻度で入れ替わっているようだ。

「なんて言うか、片方は基本忠実で、もう片方は何でしょうね。すっごい喫茶店ですね」

「だよね。クロード曰く、コスプレ喫茶を開催するそうだよ」

なんか嫌な予感だな。入りたくないし、いや、入らなきゃいけないけど。

「じゃあ、入りますか」

「なんか、閉店中みたいですけど」

「おっじゃましまーす」

「って、開いてるし」

平然と入るマギさんの後に続き、直後、激しい後悔に襲われる。

「来たか。じゃあ、これに着替えろ」

何故か、ピンクのメイド服と和風メイド服を両手に持って、俺達を待ち構えていたクロード。そして、入店の流れからその腹にブローを決めるマギさん。俺以上に拳の入りが綺麗だ。

「ぐ、ぐふっ……前より、拳が重いぞ。内臓がひっくり返ると思った」

「もう、クロっちは、そうやって人を茶化すんだから。いけないよ」

「うーん。やっぱり、力の入り具合が違うね。このリング凄いわ」

三者三様で別々な事を言っている。俺は、店に入ってからぽかーん、と成り行きを見ていた。

「俺は、女性とまともに話した事がない故に、俺のペースを保つための儀式だ」

「場の空気を凍らせることが何の儀式よ。さぁ、案内して」

「分かった分かった。ユン、貴様に一つ聞きたいことがある。いいか?」

「な、何だ?」

「マギ以外に、アクセサリーを渡してないな」

「あ、ああ。まだ売るほど数が揃ってないからな」

殆ど、エンチャントの練習台となったし、後はせいぜい、エンチャントに耐えられなかった銅製のリング。付与が可能なのは、青銅製以上のリングだった。

「そうか。じゃあ、こっちだ」

店の中をじっくり見回すと、簡素な石造りの試着室が用意されていた。俺達が案内されるカウンターの奥の部屋は作製するための作業場の様な感じで、布や革、タペストリーが飾られている。

作業場の大きな木製のテーブルを四人で囲むように座る。

「それじゃあ、いくつか質問だ」

「お、おう」

「事前に言っておくと、言いたくない事は言わなくて良いからね。自分がゲーム上、不利になるとか、これだけは隠したいとか思う事があれば話さなくて良いし」

なんか、クロードは尋問官みたいな雰囲気を醸し出しているし、余計苦手意識が助長される。マギさんの方に視線を向ければ、大丈夫。と言った感じだ。

「それじゃあ、聞く。あのトリオン・リングは、自由に作れるか?」

「ああ、時間があれば」

この時点で俺は、付加術のセンスの事を話そうか、と思ったが前にマギさんたちは製法とかは無理に聞き出さないとも言っていたために、黙る。

「お前は、製法を完全に把握しているか?」

「まだ、だな。半分も判っていないと思う」

「最後だ。もしトリオン・リングを売るとしたら幾らくらいで売る?」

なんか、最後に予想外な質問が来たぞ。うーん。リングってピンからキリまであるし、自信作だから、せめて――

「――うーん。一万五千で売れれば良いかな?」

「「「はぁ~」」」

その場、全員が溜息をついてきた。いや、高すぎたかな。じゃあじゃあ。

「高すぎるのか……じゃあ、一万で」

「いやいや、ユンっち、逆だよ逆。安過ぎだよ」

「あっちゃー。今までアイテム私が一手に買い取ってたからユンくん露店価格知らないんだ」

「端的に言うと、貴様のこれは、最低で五万からだ。組み合わせが自由なら、魔法職なら十万以上は出すだろうな」

「はぁ? こんな鉄インゴット一個から五万とか。ぼりすぎだろ。あり得ないって」

実際、鉄インゴットなんて、売れば、500Gが良いところだ。

「俺達のボーナス付加は、現状一種類までだ。だが、お前のそれは、三種類。まあ、呪加ってマイナス効果があるが、考え方を変えれば物理攻撃のいらないプレイヤーには、デメリットになり得ないのは分かるな」

まあ、INTとMINDを付けて、ATKをマイナスに据えれば、魔法職には売れるのは分かる。逆にすれば前衛職向けに出来る。個人のスタイル毎にカスタマイズが可能だ。

そして俺のセンスは、まだ細工。彫金まで成長すれば、ある程度自由にボーナスを付けられるようになるかもしれない。

「つまり、それだけの価値があるのかよ」

「ああ、プレイヤーに提供する装備は充実する。そこで一つ話がある。お前のその作製方法を教えてほしい。無論、情報料は出す」

「はぁ?」

また突飛な話に俺は、しばし思考が停止した。