軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

Sense293

ミカヅチとの宴会では、喉が疲れるほど歌わされ、ミュウとはノリと勢いのままデュエット曲。セイ姉ぇは、拳を握りしめて、渋めの曲を歌うなどして盛り上がりを見せた宴会。

「はぁ、思い出すだけで疲れる」

まぁ、そのテンションを何時までも続けるのは、かなり体力を必要とする。

俺は、ここ数日の無茶な作業の反動でのんびりと過ごしている。

アルコールによる成分結晶の生成方法も確立され、細かな調整を細々と行っている。

「と、言った感じでこれが試作品の第二号です。あー、お茶が美味しい。癒される」

「そんなことがあったんだ。ユンくん、根を詰め過ぎちゃ駄目よ」

今は、【アトリエール】の裏手に作られたウッドデッキから畑を眺めながら、生産職同士の小さなお茶会を行っている。

各自が持ち込んだ成果報告のようなもので、イマイチ値段を決めかねている複合回復ポーションの基準を考えている。

「ふむ。多数の組み合わせを持つ複合回復のポーションと粉末タイプの状態異常薬か。全状態異常に対応するものがないと選ぶ側が混乱するな」

俺が持ち込んだサンプルは、二種類、三種類の状態異常回復薬と状態異常薬の成分結晶を細かく砕いた粉末薬。その他、派生アイテムを一個一個手に取って検分するクロード。

「値段は、回復の度合いやコスト、使用頻度や使用度の高いエリアごとに細かく管理と説明が必要だな。後は、粉末薬は、上手く風魔法で周囲に散らせば、多人数に対しては有効手段になるだろうが……効果範囲、状態異常に掛かる最低限の吸引量、魔法を組み込んだ防衛方法、液体と粉末の管理方法の違いとか、色々と調べることが多そうだな」

クロードが捲し立てるように言う言葉に同意しつつ、そこまで調べるのは、かなり面倒なので出来上がったポーションは、【生産ギルド】の方に委託販売して、適正価格や使い道の検討を代わりに頼みたい。

「そこは俺じゃなくて、クロードたちの【生産ギルド】に任せたいよ」

「なら、有効な使い方の一つとしては、水魔法の《ミスト》や闇魔法の《スモッグ》のような妨害系の魔法と組み合わせる方法とかだな」

真面目に検討するならそういう使い方だろう。とクロードは答える。

リーリーは、こちらの話に耳を傾けているが、自身の持ち込んだ作品の調整を目の前で行い、たった今完成させる。

「完成! 希少素材と木工技術をつぎ込んで作った生きた人形――リビングドール!」

「うわっ、かわいい」

リーリーが作っていたのは、二頭身の小さな人形だ。全部で七体。七人の小人をモチーフとしたカラーリングのデフォルメされた人形は、ちょこちょこと歩き、紅茶用の角砂糖を持ち上げては、運んで砂糖建築を始める。

リビングドールは、合成MOBにもおり、物質人型系MOBの素体に樹木や木材などの素材を合成することで派生するMOBだ。

だが、そうしたMOBとは違い、リーリーの作ったリビングドールは、戦闘要員というよりは、俺の調合のネタレシピのような物だ。

「かわいいな。よろしくね」

マギさんが小さな小人人形の頭を人差し指で撫でて、指先で握手をする。小人人形も小さな両手で触れ合うようにして握手をし返す。

「なんか、小人たちに捕まりそうだな」

「あー、ガリバー旅行記の」

リーリーのお店には、弓の弦や釣竿の釣糸などの素材があるために、侵入者は、それらで拘束される姿を想像すると、なんだか可愛く思える。

小人人形は、俺の方にも歩いてきたので掌を差し出すと、短い手足を使ってよじ登り、全身を使って俺にアピールしてくる。なんか、可愛い。

「なんか、ファンシーだな。寝てる間に木工を仕上げてくれたりするのかな」

「ユンっち、それは革靴じゃないかな? そこまでファンタジーじゃないよ」

そんなのほほんとした会話をするリーリーだが、これはあくまでリーリーの報告の前段階だ。

今回リーリーが持ち込んだアイテムは、この小さな小人人形。そして――

「ちょっと加工の難しい素材で弓を作ったからユンっち持ってみて」

リーリーが持ち込んだのは、二種類の弓。クロスボウなどの機械弓の改良型、そしてもう一つは非常に重い硬弓だ。

「なんか、質感が冷たいな。形は歪で、総金属製武器みたいな冷たさがあるぞ」

「それは、化石樹から作った弓だよ。素材が弓に適した形だから、メイスじゃなくて弓にしてみた」

化石の鑑定で手に入る超硬度を持つ 希少(レア) 木材? のアイテム。打撃系武器としては、非常に有効であり、一部金属武器すら凌ぐ効果を齎す特殊素材だ。高く、曲がらぬ超耐久。ただ、形に歪な違いがあり、真っ直ぐな素材が必要なメイスは難しいので、小さく分けてフレイルにしたり、木工素材と組み合わせて、複合武器とすることがある。

それなら、部品として研磨して成形した素材で作った 複合弓(コンポジットボウ) がコスト的に適していると思う。それを考えれば、この総、化石樹製の弓は、まさに贅沢の極みだ。

ただ、その贅沢の分だけの価値のあるステータスなのだが――

古代樹化石の硬弓【武器】

ATK+100 DEX-25 追加効果:ATKボーナス

驚異の物理攻撃で100の武器だ。メイン武器でありグレードアップを続ける黒乙女の長弓の攻撃力を軽く超え。そして、これでほぼ追加効果を付けていない素材だ。

「なに? このロマン武器」

「ロマンになり過ぎだな。だが、それ相応のリスクがあるんじゃないのか?」

俺の呟きに対して、クロードが、リーリーに尋ねるが、困ったようにそれを肯定する。

「いくら強くても使えない武器だからね。ユンっち、それを引いてみて」

「分かった」

リーリーに頼まれて、掌の小人人形をテーブルに戻して、化石の硬弓を手に取る。弦すらレア素材の繊維を強度が高くなる編み込み方をしたものを使用した強弓。弓を番えずに弦だけを引くが、びくともしない。

「硬いな。《付加》――アタック!」

エンチャントを施し、物理攻撃力を高めるのだが、それでも弦は引くことができない。

「えっ、それでも駄目なの」

エンチャント込み、ブーストタブレット込み、さらに、【攻撃力上昇】のセンス込みの状態ですら弓は僅かに曲がるが、弓を番えて飛ばすことはできない。

「あー、これはあれね。武器の要求ステータスが足りないのね」

俺が全力で引いても引くことができないこの弓という名の鈍器をリーリーに返した後、マギさんが納得したように呟く。

例えば、重量級武器のハルバードと総金属製の全身鎧を装備したまま人は全力疾走できるか、と言う点で、プレイヤーのステータスが足りなければ、SPEEDにマイナス補正が掛る。更にステータスが足りなければ、マイナスどころか持ち上げることも動くことも叶わない。

今回は、軽量系武器や魔法系武器をメインとする木工ではそれは殆どないために、皆驚いている。

「木工でもこんな武器があるんだな」

「自分でもびっくりだよ。まさに時代の先取りだね」

困ったように苦笑いを浮かべるリーリー。機械弓の方は、以前よりも更に改良を重ねられ、重量の増加の代わりに使い易さと強度、命中などが上昇している。

「対人戦とか、集団戦ならクロスボウの一斉射撃とかあるけど、ファンタジーだと使われないよね」

「それを言うなら、俺なんて、精々、身体か精神系の状態異常に対する複合薬だからな。万能薬にはまだまだだ」

俺とリーリーは、二人して次のイベントじゃあ、有用な新規アイテムは提供できないだろうな。と溜息をつく。

「技術やアイテムなんてそんなものよ。実際に使って見ないと分からないんだから」

「そうとも、次の技術は俺とマギが同じ技術から作ったファンタジー的なものだからな」

そう言って、マギさんが取り出したのは、一本のロングソードだ。

見た感じ普通の剣なのだが、どこか普通の剣とは違うように感じる。

「特定MOBの素材を加工して武器を融合させた物ね。上限はあるけど使い込むほどに強くなる成長武器かしら」

俺が武器のステータスを確認した結果、このような表示がされる。

鬼人殺しのロンソ【武器】

ATK+40 追加効果:ATKボーナス、クリティカル上昇(小)、鬼系特化(小)、成長(0/5)

物理攻撃のボーナスとクリティカル率は分かる。鬼殺しという名前は、【鬼系特化】の追加効果から生まれたのは理解できる。

この成長の追加効果は、初めて見る。

「結構、レベルの高い素材を武器の芯に使ったのよ。今回は、 首領鬼(ドン・オーガ) の骨を金属と混ぜて、作ったから追加効果のある強化素材とは別枠で出来たわ」

一部のMOBの素材を武器に混ぜ込む。これによりその系統のMOBに対する特攻ダメージと成長武器という特徴を得た。

「と言っても、対人戦向けに人型特化武器の作成のために鬼系を選んだけど、無理だったんだよね。いうなれば、魔剣かな」

ちょっと冗談めかした言い方をするマギさんは、他にも似た様な武器を見せる。打撃の金属武器やアクセサリーだ。中には、鳥系への特攻武器に更にレベルの高い通常素材を混ぜ込み、本来は個別で【鳥系特攻(小)】の効果が統合されて【鳥系特攻(中)】のようになった。

ただ、素材との相性などがあり、アンデット系特攻性能を持つ銀製の素材にアンデット系素材を混ぜると、灰色にくすみ、特攻効果が失われるなど、要注意だ。

「そして、俺は、この革鎧だ。まぁ、ユンからマギ、そして俺に伝わった技術の一部だがな」

そう言って取り出したのは、変哲もない革鎧なのだが、今回は裏地に注目させたいのか、裏側を指し示す。丁寧に作られた裁縫師の一級革防具。シンプルだが丁寧な作りだが、その裏地に使われたフィルムには見覚えがある。

「……虫のフィルムだ」

以前、MOBの素材を削って作るアクセサリーやボーンアクセサリーの一環で虫の甲殻を強酸に漬け込み、フィルムだけを取り出したことを覚えている。

それをアクセサリーの表面に丁寧に貼り付けた。言わば、メッキや塗装のような見た目のための装飾の一部であり、何らかの効果を齎すレベルじゃないはずだが……

「まぁ、柔軟性がある素材へと加工するのは難しいからな。一部は、フィルムから繊維状の物を取り出し、刺繍糸にするなどの活用方法を探っている。素材が高レベルになれば、今まで意味のない装飾でも対象の効果が齎される」

「そうなんだ! じゃあ、杖に魚の骨を組み込んで、それから、周囲に魚の鱗を粉末状にしてニスと混ぜれば……」

リーリーは、今の発言から何かを閃いたのか、即席で武器を作り上げる。

魚の骨と鱗を使った杖は、マギさんと同じように成長する武器と水中特攻(小)の効果を有していた。