軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

Sense286

「ライナたちへの賭けの内容だけど……俺と一緒にクエストを受けて貰う。これでいいか?」

「分かったわ。例え、この身が使い捨ての壁として扱われようと、逃走用の囮として使われようとも、一緒に受けるわ!」

「ライナは、どうしてそう俺を困らせるような考えを思いつくんだよ。全く……」

むしろ、そんなことが必要なエリアなどこっちから願い下げだ。

「行く場所は、まぁ、おいおい。ただ、敵性NPC相手のクエストを中心に何かやる予定だから」

これがレティーアのギルドに訪れた時の約束だ。

そして後日、互いの予定を調節してライナたち時間はまだまだ先であるために、【アトリエール】を管理しつつ待っている。

「ユンさん。あのアクセサリーのお蔭で畑からの収穫量が約10%ほど上昇しました」

「そっか。凄いな」

「ええ、それと質の存在する素材の中で、全体の1%程が質が一段階向上しています」

「ああ、さっき素材を確認した」

今まで畑は、NPCのキョウコさん任せな部分が大きいが、基本方針は俺が打ち出している。そして、今日収穫したアイテムの管理もログイン毎に行い、今回の報告と合わせて把握している。

「あの【園芸地輪具】の効果は、10%の収穫量アップボーナスと1%の質向上ボーナスなんだな」

追加効果の【採取ボーナス(小)】の効果は、なんとなく多くなるだろうな。と思っていたが、実際に数値が出るとここまであるんだな。という気持ちになる。まぁ、統計結果を出したのは、キョウコさんなのだが。

畑の場合に関しては、一つの種から収穫できる薬草は、一つと種一つだが、時々、薬草が二つ。

また、骨粉や腐葉土を合成した肥料を入れた畑で発生する薬草の上質化が、発生し、効果が重複する。

そのために、薬草は、二段階上昇の【最上質な薬草】に。また、その他、上質化する種類の素材は、理論上上質化する。

メガポ、MPポット、状態異常回復薬や状態異常薬などの需要が高くて、上質化が可能な種類の素材を安定的に上質化させるために肥料の開発に着手すべきだろうか。悩ましい。

「より効果の高い肥料を作りたいけどなぁ。畑を作るプレイヤーも少ないし、作るにしても殆どデフォルト状態での育成だから、俺自身が手探りでやらなきゃいけないんだよな」

なにかレシピがあればいいんだけど、ままならないな。と苦笑いを浮かべる。この考えて悩む生産の時間が楽しいんだよな。と実感している。

「キョウコさん、肥料の性能向上方法って何か知ってる?」

「肥料ですか? そうですね。農家の娘ですから一応……」

そう言って思い出そうと、むむむっと表情を作っているが、愛嬌のある顔で眉毛をハの字にしているので少し可愛らしいと思ってしまう。

「熟成というか、発酵ですね。【合成】か【調合】で一度準備さえ整えれば、後は一週間ほどで効果が見えて、20日の期間で発酵肥料が完全になります」

「そうなの? 知らなかった」

と、いうか、何で教えてくれないのかな? と思ったが、NPCはそこまで深くこちらに情報を提供してくれる訳じゃない。こちらが聞いた質問に対しての答えと指定した仕事へのルーチンワークが基本であって、あまりに人間っぽすぎて忘れてしまう。

「そうですね。基本、生物や植物などを細かくしたものと腐葉土、そして燐魂結晶と水と糖液、後は良質な菌ですね」

「ちょ、ちょっと待って。今メモする!」

ふむふむ。と話を聞き、素材はボカシ肥料みたいな感じだろうか、と想像する。それなら、レティーアたちに渡した以外にも大量の鮮魚が残っているのでそれを魚粉にして混ぜ合わせるのもありか。それにしても熟成と良質な菌って……

「熟成ってのは、前に瓶作りした時に遭った単語だよな。あと良質な菌って何を使えばいいんだ」

「そうですね。パン作りに使った果物の発酵液とか、そこのキノコなどを細かく千切って糖液に浸したものを使えばいいと思いますよ」

そう言ってキョウコさんの指差す先には、一本の丸太。

巨大エリンギの姿を持つボスMOB・ファンカスジャンボからのドロップであるファンカス・ログは、日陰で食用キノコを生み出し、徐々にインベントリに溜まってきている。

「これでいいの?」

「ええ、後は肥料を作るスペースが必要ですね。一度作れば、数十回分にはなります」

「それならこれから作れるのかな?」

早速、キョウコさんに教わった骨粉と腐葉土の肥料の上位である発酵肥料の作成に着手する。

「まずは、穴を掘って崩れないように杭と板で補強しましょう」

「分かった」

農業用のスコップを取り出して、アトリエールの裏手の空きスペースに人の太腿くらいの穴を掘り、深く木製の杭を打ち付け、木の板で周りの土が崩れないようにする。簡易的な生ごみの捨て場のような感じになっている。

「これでスペースは完了したので後は材料を揃えましょうか」

「分かった。じゃあ、ちょっと店の中に入ってるな」

早速、使用する材料である骨粉、魚粉、糖液、ファンガスのキノコ、雑草、腐葉土、燐魂結晶だ。あとは、一応、パン酵母用の発酵液

骨粉は、骨系アイテムを粉砕機に掛ける。一応、【錬金】センスの下位変換でも可能だが、粉砕機に掛けると、錬金の下位変換よりも倍の量を入手できるので、今回は、粉砕機に掛ける。

ガガガガガッという重低音を聞きつつ、【調合】の素材加工スキルで、鮮魚、キノコ、雑草から水分を飛ばし、【乾燥した】という状態にして、更に粉砕機に追加して混ぜ合わせる。

乾燥させた雑草だけは、別用途であるために、脇に置いておく。

この時点でアイテム名はほぼ肥料なのだが、ここから熟成・発酵の手順が必要になるようだ。

糖液は、水に砂糖を溶かしたものを用意して、燐魂結晶の粉末はインベントリにストックされているので、それをボールに取り出し、揃った素材を掘った穴の近くに持ち込む。

「キョウコさん、こっちは準備できましたよ」

「こちらも腐葉土を用意しています。では、説明しますね。まずは、腐葉土と骨粉や魚粉、あとは枯草を適当に混ぜて入れてください」

「適当でいいの?」

「はい。極度に偏らなければ」

ニコニコと楽しそうな笑みを浮かべて、一度手本で穴の中にスコップ一杯分を腐葉土と骨粉・魚粉、枯草を入れて、鍬で適当に引っ掻き回す。おれはそれを真似て、用意した素材を混ぜ込み、穴の三分の二が埋まった所で全部の素材が入れ終わった。

「最後に、糖液と発酵液と掛けて、上から燐魂結晶の粉末で蓋をするようにして、水が入らないように蓋をします」

ふむふむ、と思いながら、それをノートに一度書き込み、実行する。

木の板で作った蓋とその上に重石を置いて、完成となる。

そして、作り上げた肥料の穴には、一つのアイテムステータスが浮かび上がる。

未完の発酵肥料【熟成中】

肥料1、熟成(0/20日)

シンプルな内容で効果は現在使っている骨粉と腐葉土と枯草の肥料と同じだ。

「これで後は一週間後に成否が判明します。失敗したら、また作り直しですね。その時は匂いとかで分かるんですよ」

リアルで農業は知らないが、ボカシ肥料は、失敗すると腐敗臭がする反面、上手く作るとフルーツのような甘い香りがするらしい。それが成功失敗の判断材料なのだろう。

長時間の経過による成否の判定は、今までになかったために少しワクワクする。期待半分、不安半分と言ったところだ。

「ユンさん、そろそろ約束のお時間ではないですか?」

「あっ、そうだった。夢中になって忘れてた。俺は、準備してくる」

「はい。留守はお任せください」

深く頭を下げるキョウコさんにひらひらと手を振ってお店の中に戻っていく。これから敵性NPCのクエストを受けに行くんだ。