軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

Sense277

空色をした上空、白い砂浜、マリンブルーの海。

で、どうしてここに居るのか?

「ユンお姉ちゃん! こっちだよ!」

「いや、確かに魚介類の料理を食べたいとは言っていたけど、なにもこんなに早くにしなくても良くないか?」

海エリア。遠くまで広がる白い砂浜。ここまで来るのは、幾多の困難があった。そして、人口密度の低いエリアには、俺とミュウのパーティーが仮設テーブルやバーベキューの準備を始めていた。

「よし! 水辺の魚介類を探し出すぞ!」

「いやいや、そもそも泳げないだろ。【泳ぎ】のセンスないんだから」

それに気合い入れて水着を着ているところ悪いが、別に水着着る必要ないと思う。目のやり場も困るのだ。

「まぁまぁ、私とヒノさんは、あっちで釣りでもしてますね」

「……じゃあ、私は、ミュウさんを連れて海岸で採取できるものを探します」

うん、ルカートとヒノは、釣り頑張ってくれ、あとトウトビは、ミュウを頼んだ、と四人を送り出す。

「それでうちらはなにしたらええん?」

「コハクか? うーん。特にやることないんだよなぁ」

食材が集まってからじゃないとできることもない。

「じゃあ、リゥイとザクロを見ていてくれないか? 今呼ぶから――《召喚》!」

呼び出されたザクロは、成獣化しても子狐サイズで三本の尻尾が機嫌よく揺れ、リゥイは、幼獣サイズのまま足を折り曲げて気だるそうに寝そべっている。

「それじゃあ、食材探して来るから」

「分かった。まぁ、のんびりと待ってるわ」

コハクとリレイに見送られる。

俺は、上着をインベントリに仕舞い、真っ直ぐに海へと向かえば、足元にちょこちょこと着いてくるザクロだが、波に足先が触れると驚いて砂浜を駆け戻る。

また、波が引いた砂浜を様子見で恐る恐る歩けば、再び打ち寄せる波から逃げることを繰り返し、その微笑ましい姿にくすっと小さな笑いが零れる。

「いい! すごくいい! ユンさんが子狐の様子に微笑んでいる。これは、まさに聖母の微笑み! はぁはぁ、この姿を永遠に留めておきたい」

「リレイ? また例の病気発症なんか? あー、それより、リゥイの体ひやっこい。涼しいわぁ」

ジト目でリゥイに寄りかかるコハクと鼻血でも噴き出しそうなほど興奮しているリレイ。二人ともビキニ姿でビーチパラソル風の傘の下で座り込んでいるが、その場の温度差が激しい。

リゥイの水の特性から涼んでいるコハクと真夏のビーチよりも熱い熱気を放つリレイ。

「全く、変わらないな」

二人の様子に苦笑いを浮かべながら、俺は、先日手に入れた採取と採掘のアクセサリーを装備して、海の中に飛び込んでいく。

ある程度の沖合までクロールで泳いで、一度海岸の方を振り向けば、尻尾をふりふりして俺の帰りを待っているザクロが見えたので、気にせずに待つように声を掛けて、一気に潜水を始める。

(久しぶりだけど、ちゃんとできるよな。感覚を取り戻さないと)

【泳ぎ】センスを装備しているために、水中行動に問題はなく、包丁片手に進む海の中には、透明度の高い世界が広がっていた。

久々の水中での作業。足裏で水を蹴り、素早く小刻みに動く魚たちを次々に捕まえては、インベントリに入れて行く。

(身体は覚えているものだな。ただここは小さい魚が多いな。まぁ、敵らしい敵が出ないだけマシか)

以前は、川や湖での素潜り漁だったが、今回は海。沖からの断続的な波の揺れを感じながらも、ごつごつとした岩場に手を掛けて、その下に隠れる魚やエビなどの魚介類を集める。

そんな中で幾つか変わったポイントを発見する。

(――海底に、採取ポイント?)

細かな砂が覆いかぶさっているところの砂を手で払い除け、その下にあるものを掴み出すと、拳サイズの石である。

非常に見慣れた感じだ。

(これは、鉱石か、宝石の原石か? 他にもまだある)

その採取ポイントで集めたものは、宝石の原石が主で、後は、久しぶりに見た『化石』だった。

次に、息継ぎして見つけたのは、岩場に張り付く二枚貝型のMOBだ。

一度、似たタイプのMOBを倒したことがあるために、同じ要領で倒していく。

二枚貝の隙間に包丁を差し込み、すっと中の貝柱を切り裂く。その瞬間、二枚貝が開き、設定されたHPが消えてドロップを残す。

(よし、これで貝柱ゲット。バター醤油で食べれば美味しいよな……)

そう思って手に入れたドロップは、肉厚な貝柱。それと、乳白色の粒――真珠だ。

宝石に分類される真珠は、大きさは、極小の一番小さいサイズだが、それすら気にならない。

「ふはっ……マジか」

一度海面まで顔を出して息継ぎした俺は、空に晒すように真珠を掲げる。

俺は、もう一度深く潜水して、真珠貝を探す。次々と真珠貝に狙いを定めて倒していくが、真珠のドロップ率は低く、十回に一回程度。更に大きさもバラつきがあり、大きいサイズは更に出現率が低い。

あと、確率なんてどれくらいか分からないが、一回だけ、独特な艶を持った黒い真珠だ。

「綺麗だな……」

ぼんやりと温かみのあるホワイトパールの輝きと吸い込まれるような魅力のブラックパールの神秘さ。俺は、それを大事にインベントリに仕舞い込み、あとでミュウたちに見せようと思った。

気分は、宝物を自慢する子どもみたいなものだ。

最後に、海底で同じように採取ポイントを見つけて引き上げてみたら――

(……箱? というか、宝箱)

寂びた金具の着いた木箱は、見るからに沈没船の宝箱といった感じだ。

俺は、重たいそれを引き上げようと足掻くが、どうしても重みで持ち上げられないために、諦めて別の方法を探そうとしたが……

(なんだよ。インベントリに直接入るのかよ)

と、ツッコミを入れる。やや遠い目をするが、そんな感じで近海での素潜りを楽しみたっぷりの魚介類を集めて、砂浜へと帰って来る。

ルカートとヒノは、釣り具とバケツ一杯の魚、それ以外の謎の物体を仕分けている最中だった。

「あっ、ユンさん。お帰りなさい」

「ただいま。そっちも……大量? だった」

「ええ、まぁ」

苦笑いを浮かべるのは、バケツから零れ落ちそうな大物の魚があることか、それとも使い道が分からないゴミっぽいものが集まっているためか? 流木とか、海藻とか、そんな感じだ。

一応、食べられるものとそれ以外で分けられているが、かなり微妙なラインナップだ。

「この枯れ木は、湿っているけど……鰹節もどきか? それとこっちの海藻は――《乾燥》。やっぱり、昆布だよな。ちょっと違うのはあるけど、そこはファンタジーか?」

緑色の海藻を【調合】の時に使う基本スキルである乾燥によって、カラカラに水分を飛ばし、小さく切って口に含む。

塩気と旨味。これは鍋の出汁に使えるな。

他にも食べられそうもないものは、鉱石のクズや武器の破片など一度溶かしてインゴットにするくらいにか使い道はないが、それは専門の生産職にでも任せることだ。

「よーし、それじゃあ、早速準備を始めるか。あと、ザクロは生魚食べるんなら、こっちの小さいのでいいか?」

バケツからはみ出した大きな魚に興味を向けるザクロに対して、インベントリから小魚を取り出し、与える。

頭からカジカジと食べ始めるので、そこは野生の生き物というような感じだ。俺と一緒に人間の料理を食べるが、こういう生食もありだったか。と思う。

「おーい、みんな! こっちに来てよ! おっきな船があるから!」

俺がいざ、大きな魚を捌こうとする時、遠くの岩場の上でぶんぶんと手を振っているミュウとそれを止めるようにおろおろしているルカート。

「大きな船?」

そんな物がこの周辺にあっただろうか? と首を傾げる俺たちは、一度バーベキューの準備を取りやめて、ミュウの居る場所に駆け寄る。

ごつごつとした岩場の上を慎重に登って行けば、岩場の反対側には、確かに船があった。

分類上は、帆船というやつだろう。マストに付いた布が見え、また風がない時のためのオールのようなものも見える。

ただ、海賊船というよりは、漁業用の網や銛などが立て掛けられており、漁船と言った感じ。

中世風の船で遠洋漁業というのは、なんだか、ちょっと違和感を感じる。

「なぁ、ミュウ。なんで見つけられたんだ?」

「うん? ある人が、この日、この時間に来ると面白いものが見れる。って言ってたから無理にみんなを集めた!」

威張ることかよ。あと、やっぱり無理にみんなを集めたのか、とジト目で見る。それと誰に呼ばれたんだよ。

俺たちが色々な憶測で騒いでいると、俺たちの声を聞きつけて船の中から人が現れる。