軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

Sense240

「うわぁっ! はやいやん! ユンさん、やっぱりズルい!」

「喋ると舌噛むぞ」

俺に抱えられるようにリゥイに乗るコハクは、リゥイに乗っていることに感動しているのか、少しテンションが上がっている。そんな俺は、リゥイの手綱を巧みに……操れるわけもなく、リゥイの自由意志に任せている。

いや、ホントに楽だ。障害物の氷柱の隙間を縫う様に進むリゥイは、すぐにミュウたちと合流してくれた。

「ナイスアシスト! お姉ちゃん!」

「だから、姉って呼ぶなよ。でもどうする。二度目は助けられないぞ」

「なら、短期決戦しかないんじゃないかな? 他の人たちも既に行動しているけど」

ここまで残ったプレイヤーたちも夢魔を追い詰めている事を感じ、攻勢を仕掛けるが、先ほどのように上手くいかない。氷の槍の攻撃と道を塞ぐ障害物とで中々前には進めないのだ。

触れれば、砕けてその身を傷つける障害物。武器などで打ち払わないとダメージを受ける氷柱は地味に嫌らしい。ダメージの量は、先程コハクを助ける為に自ら突撃した時に体験した。

一回程度なら問題ないダメージ量だが、数が重なればHPをそれなりに削り、無意識に全てを避けようと考えれば、自然とルートや速度が落ちる。

「大分ダメージ受けたね。今回復するから――【ハイヒール】」

どうしたものか、と考えている俺に並走するミュウが俺に回復魔法を掛けて、少しずつダメージを癒していく。

現在は、リゥイとミュウのソリが並ぶ様に走り、その前でルカートとヒノが飛来する攻撃や障害物排除に当たっている。

後方のトウトビとリレイは、俺たちの後方からついて来ている。

「障害物が邪魔ですね。私とトウトビが前路を確保するので、ミュウとヒノが夢魔に切り込み、リレイとコハク、それとユンさんが後方支援。これでいきたいのですが」

「異論なし! みんなは?」

ルカートの提案に頷き、俺もその策に便乗する。

「では、行きます! トウトビ。合わせて!」

「……分かっている」

前へと躍り出るルカートとトウトビの二人は、武器からアーツを放ち、その衝撃波で正面にある氷柱の障害物を破壊し、道を作り出す。

「更に奥へと――【ラヴァ・カノン】!」

「そして風を重ねる――【クイック・ブラスト】!」

そのタイミングに合わせて、俺が抱えているコハクとリレイが魔法を重ね、相乗効果で威力を上げた魔法がルカートとトウトビの排除し切れなかった障害物を破壊し、宙に浮く氷の槍と相殺する。

「行ってこい! 【付加】――アタック、スピード!」

俺のエンチャントが掛かり、能力を底上げされた二人が勢いよく夢魔へと迫る。また、道を開いたタイミングに合わせる様に生き残ったプレイヤーたちも殺到するが、コハクとリレイの魔法で破壊し切れなかった氷の槍がプレイヤーたちを迎撃する。ミュウたちもその迎撃で僅かに速度を落とすが夢魔へと迫り――

「――行っけぇ!」

「――届けっ!」

「だから、人間風情がウザいんだよ!」

夢魔の迎撃を抜け迫るが、相手も一筋縄ではいかなかった。騎乗している悪魔トナカイの速度を速め、ミュウとコハクの攻撃のタイミングに合わせて、一気に範囲外へと逃れ、夢魔が反撃してくる。

「これは、僕もヤバいかも……」

「ヒノちゃん、早急に離脱を……」

加速によって夢魔とミュウたちの間に空間が生まれ、そこに氷の槍が連続して発射される。

また、ヒノへの直撃コースの攻撃にミュウが声を掛けるが、逃げるタイミングを逸したヒノ。

「――【弓技・一矢縫い】」

お膳立てもそうだが、仲間のミスを補うのもサポートだ。リゥイの上からアーツを放ち、ヒノへの直撃の槍を打ち砕き、相殺する。

コハクとリレイの魔法の様に多くの槍は破壊出来ないが、要所ごとにアーツを使い、ヒノの逃げる機会を作り出す。

一回目の攻撃は失敗に終わり、戻ってくるミュウとヒノ。

「再度突撃!! もう一度攻めるよ!」

「……ミュウ。寸前で逃げられ、攻撃を当てられなかった。速度不足もあるし、何より氷の槍を全て消し去れ無かったのが大きい。さっきのだって悪ければヒノがリタイアしていた。それに、突撃したプレイヤーも減って攻めれる人数も減った。後はジリ貧の詰みだよ」

剣を振り上げ、再攻勢に強い意識を向けるミュウにトウトビが冷静な判断を下す。

俺も同じ様に感じ、ルカートやヒノからも同じ雰囲気を感じる。

「そんなの分かってるよ! でも、やっぱり諦めたくないじゃん! もしかしたら、運良く通るかもしれないし、今ある手段を全部試したわけじゃない。それに、駄目でも二度目、三度目のチャレンジの参考になる! 無駄じゃないよ!」

無邪気に笑うミュウに、みんなの表情がふっと緩む。こんな追い詰められた状況でもミュウは、ゲームを楽しんでいる。それが、たまらなく素晴らしい。という気持ちがパーティー内に伝播する。

そして、俺は、そんなミュウを勝たせてやりたいと思った。

「二つ、突破の考えがある。ただ、その時は、コハクとリレイを借りるし、さっきの様に俺からの援護射撃は無いからな。そこだけは言っておく」

「策があるんだ。なら、聞くよ」

「策なんて言えるもんじゃない。脚の速いリゥイに乗ってミュウが突撃。ちょっとアイテムの準備に時間が必要なだけで手順は同じだ」

早速、準備に移ろう! というミュウだが、俺は、コハクを抱えたまま準備もできなし、並走している状態でミュウのソリに乗り移らないといけない。地味にそんな恐ろしい状況だ。

だが、何の躊躇いも無く、コハクは、リレイのソリに飛び移り、ミュウもリゥイに接近して乗って来る。

ヒノが槍でミュウの乗っていた無人のソリを突きながら、上手く俺の降りやすい場所に誘導する。

なんでこんな細かい事が出来るのか……と優秀過ぎる周囲に思うが、今はそんな場合では無い。

「準備ができたら、コハクとリレイの魔法に合わせて、アイテムを使う。その後はまた突撃だ。リゥイはミュウを守ってくれよ」

リゥイから離れてソリを乗る時、胴体を一撫でして俺は離れる。勝手にミュウを乗せたが、そのことに何の抵抗も示さずに大人しく俺の指示に従ってくれたリゥイをありがたく思う。

また、ミュウは、乗りたがっていたリゥイに乗れた感動に打ち震えていた。

「全く、ミュウが俺を急かすからこんな場所で作ることになるとは……」

そう言って取り出したのは、ある薬を作り出す素材。薬屋のオババから直前に買った素材に対して俺は、調合スキルを発動させる。

普段は、一度手作業で作り出すアイテムだが、今回は急場で不本意だ。それに効果を自分自身で一度も確かめていない。ぶっつけ本番。

スキルの発動は成功し、手には、液体で満たされた小瓶が握られていた。

「お姉ちゃん、それを使うんだね! 行くよ、みんな!」

ミュウの突撃命令に合わせて、俺がリゥイに速度エンチャントを掛ける。

先程と同じようにルカートとトウトビ。それにヒノも加わり前路を切り開き、コハクとリレイが障害物と氷の槍を破壊するための魔法を放つ。

「何をしても僕の速度には追いつけない! 足掻いたって無駄なんだからさっさと落ちろよ!」

「諦めるかよ。俺は――」

作ったばかりの薬【 音響液(エコーリキット) 】の蓋を開けて、煽る様に飲み込む。喉が熱を持ち、焼けるような感覚のまま可能な限りの声を上げる。

「――『意外としぶといんだよぉっ!』」

俺の声が空間に反響し、増幅し、圧力を持つ。使い方によって効果が複数ある音響液の最もスタンダードな使い方。口に含み、声を張り上げる。ただこれだけで、この声の届く範囲の全ての敵性MOBに【麻痺】を与える。

「ミュウ! 今です!」

ルカートが声を出す前に、リゥイの最高速度で道を駆け抜ける。

音響液の効果で麻痺状態の夢魔は、氷の槍を操作できず。また騎乗している悪魔トナカイの動きも鈍い。そのまま迫るミュウが夢魔を追い抜くように一閃。

「……人間、風情が……」

体が悪魔トナカイから崩れ落ち、次々と追い抜くプレイヤーたちを攻撃を受け、雪道を撥ねて、最後に後ろの崩壊へと巻き込まれて消える。

「やった! 遂に倒したぁ!」

(よかった。倒せて)

ミュウが喜びを全身で表しているが、騎乗を許しているリゥイはその様子が鬱陶しいのか、少しうんざりとした表情でいる。

「お姉ちゃん、やったよ!」

(だから、兄だって言えよ)

と口を動かすが、声が出ない。忘れていた。音響液の効果は、複数効果があると同時にデメリット効果も存在する。口に含んだ場合、しばらく声が使えない。そのために、魔法やアーツの発動に制限が掛かる。だから、事前にミュウに言った通り、援護射撃のためのアーツが使えないのだ。

俺が、喋らない事に不思議そうな表情を作るミュウに、ジェスチャーで声が出ない事を伝えるが、やっぱり理解していないのか、首を傾げる。

そうこうしている内に、コースの終わりが見え、生き残ったプレイヤーたちも続々と光のゲートへと入り込んでいく。

――【おめでとうございます。ボスMOBの討伐により道のダンジョンが攻略されました。残り、二つです】

俺たちもその中へと潜った時、インフォメーションが流れた。

俺たちが道のダンジョンを攻略中に誰かがダンジョンを攻略したのか。俺は、光に飲まれ、ダンジョンの外へと排出され、攻略を聞きつけたプレイヤーが集まってくる。

その中で、リゥイに騎乗したミュウが一際、注目を集めており、うちの妹様の伝説に新たな一ページが刻まれることだろう。と苦笑いする。