軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

Sense235

「プレイヤー一人一人が可能性の卵だけど、今のユンは、カオスな状態だぞ」

「センス構成、装備の追加効果等を調整すれば、化ける可能性があるのに、これほど絶妙な具合で抑えられた存在は無いな」

一部、真剣な表情で額を突き合わせている二人がいた。

一人は、少しゲッソリとした感じで全面的に同意する。と呟くタク。もう一人は、夜通しの宴会の疲労も吹き飛んで普段通りのミカヅチ。

リゥイと共に近づき、軽く尋ねる。

「俺たちの動きどうだった? やっぱり、リゥイは優秀だよ。俺の行きたい方向を感じ取って動いてくれる。ありがとな、リゥイ」

二人の会話の途切れた瞬間を見計らって話しかける。

「なんか、凄い眩しいな。こんな純心な嬢ちゃんに対して私たちは何て言えばいいんだろうな」

「事実を言うしかないんじゃないですか? ユンの場合、元々の構成と合わさって能力の発揮するタイミングが限定的になってますし」

なんか、言われているが、俺が聞きたいのはそう言うことじゃないんだけど……。

「そうじゃなくて客観的に見て、リゥイの能力はどうだ? 二人の目から見て」

「そうだな。今まで弓をメインに使っている嬢ちゃんだから馬上であれだけ動けるんだろうな。騎乗での弓兵ってのはレアポジションじゃないか?」

「機動力のある遠距離攻撃職。更に隠蔽能力が高いとなると戦闘の先手を取り放題だよな。

MPの消費量からの運用時間と隠蔽状態での攻撃だと強制解除される所が欠点だが、限定的な運用をすれば、それも補える」

イマイチ、二人の評価が理解できずにリゥイと共に首を傾げている。妙に、視線を逸らした感じだ。

「噛み砕いていうと、一対一やパーティー戦闘じゃあ、あんまり変わらないんじゃないか?」

「そ、そうなのか?」

「だってそうだろ。パーティー戦闘では、認識できないレベルの隠蔽能力よりも水魔法や回復、後は直接の格闘戦が出来る事の方が優先される。それにダンジョンや洞窟なんて場所で馬に乗って移動するか?」

「隠れてこそこそ攻撃するより囲んで殴った方が早いよな」

「身も蓋もない発言だな。けど、確かに……」

リゥイの能力も元々直接の戦闘系と言うよりもバランス系だ。それにいくら騎乗による移動速度が速くてもパーティーを置き去りにしたら意味も無い。他者に気を使わないソロだから、と言っても大幅な戦闘力が上がったわけじゃない。

「リゥイ、ごめんよ。乗っているのが中途半端な弓使いの俺で、十全にお前の能力を発揮できないよ」

タクたちに突き付けられた事実に落胆してリゥイの首に頭を預ける。

「いや、落ち込んでないで町に帰るぞ。レベルも上げたり、色々なセンスと組み合わせたりしろ。今のお前でも限定的だが強いんだぞ」

「何だよ、それ。慰めてるのか?」

「十人に……いや五十人に一人は、戦い方が嵌ってワンサイドゲームになるんじゃないか?」

「なに、逆に褒めてるのか、貶してるのか分からない内容は……」

「良いから帰る。俺たち、まだ飯食ってねぇし」

そう言って、終わったし今日も張り切ってクエスト行くぞ、と声を上げるタクに、相変わらずだ。と溜め息を零す。

そして、町へと戻って来る俺たち。いや、全プレイヤーが町の上空を指差し、目を細める。

「あれは、何だ! 鳥か?、飛行機か!? いや、あれは――サンタさん!」

上空を駆ける存在。

陽気な笑い声で空飛ぶトナカイを巧みに操る立派な白鬚のお爺さん。みんなが大好きなあの人だ。

赤い服着て、大きな袋を背負ったサンタさんが空を駆けまわり、町に居るNPCやプレイヤーに笑顔で手を振る。

ミュウなんか、プレゼントくださいって大声を上げて手をぶんぶん振り回している。恥しいからやめろ。

「――サンタクロース。そう言えば、クリスマスシーズンだったな」

「ここでOSOのイベントに参加している時点でクリスマスシーズンは捨てた様な物だったのにな」

「リア充どもの聖なる夜なんて消えてしまえ! 糞がっ……」

「彼女持ちは、殲滅殲滅。リア充は、撲滅撲滅」

赤い服を着たお爺さんの出現と共に一部の男性プレイヤーは怪しげな新興宗教っぽい怪しげな儀式も始め出す。こっちも誰か止めろ。

そんな一部心温まる? 光景を見ている俺だが、一部では、顎に手を当てて真剣な表情で見つめている。

「さて、サンタの出現がイベントで何に関わるのか……、これが昨日の告知にあった特殊MOBか?」

「なら、サンタを簀巻きにしてとっ捕まえるのか? 宗教的に大丈夫なのか? 一応は、聖人だぞ」

「流石に聖人殴るイベントは、やりたくないぞ。知り合いから幻滅されそうだしな」

タク、クロード、ミカヅチの順番で話す内容。俺は、しっかりと睨みつければ、三人は両手を上げて降参のポーズを取る。そんな子どもに見せるべきじゃないことは、いくらゲームでも俺が許さん。

そして、楽しげに笑顔を振りまくサンタクロースの突き出したお腹から――黒い腕が生えた。

「クハハハッ――。聖人ノ中核。見ツケタゾ!」

太く、聞き辛い声と共に、引き抜かれた腕。サンタクロースの背後には、黒い皮膚に赤い目を持つ禍々しい男が立っていた。

「――永キ時ヲ概念トシテ生キル聖人ノ核」

「――これを我らが取り込み、存在の格を上げる」

「――聖なる象徴を貶める儀式の準備は整った」

「――人の負の感情を吸い上げ、我らの中で聖人の核と合わせて、悪魔の神器を作る」

「――僕らは、それを使って大悪魔・サタン様を呼び寄せる」

何かを引き抜かれたサンタクロースとそのトナカイは、徐々に姿を消していき、空には、五組の異形が存在していた。

そして、その内の二人を俺は見覚えがある。

「……『魔導』と『結界』の夢魔?」

夢で見た二体の夢魔。それがクエストに関わっていた。

最初にサンタクロースを貫いた黒い男は、引き抜いた何かを握り潰すとそれは五つに分かれ、それぞれの手に移動し、町の外へと移動を始める。

そして、町を囲む様に正五角形を位置する配置となり、空から黒い光が落ちる。

――緊急クエスト【聖人の復活】が全プレイヤーに発生しました。

これより、【夢魔】たちが生み出したミニダンジョンをクリアすることで【聖人の原核】が一つ解放されます。

五つの核が解放された段階で聖人の復活が完了し、全プレイヤーにクリア報酬が発生します。

また、【夢魔】たちのミニダンジョンの難易度は、町のクエスト消化率によって変動します。

「ちょっと見に行ってくる!」

「わ、私も!」

と、多くのプレイヤーたちが町の外へと一気に掛けていく。ミュウや身軽な者は、壁を蹴り、町の外壁の上まで登る一方俺もその流れに逆らわずに後列の方から見上げる。

一つ一つ、生まれたミニダンジョンは、別の特色を持っていた。

火と靴下と銀貨が中核となって出来た――煉瓦のミニダンジョン。

水とケーキと祈りが中核となって出来た――雪原のミニダンジョン。

風とモミの木と荷物袋が中核となって出来た――巨大樹のミニダンジョン。

土と精霊と聖歌が中核となって出来た――墓場のミニダンジョン。

光とトナカイとソリが中核となって出来た――道のミニダンジョン。

OSOのクリスマスの目玉イベントが始まろうとしていた。