軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

Sense215

「で、ほんと何の用だよ。変なの連れてくるだけなら帰れ」

「すみません。本来は、ちょっと相談ごとです」

謝るアルに対して、全く。と溜息を吐く。一人暴走していたフランも素直に謝って来た。まぁ、まだ勘違いの半分も抜けておらず、俺に対する間違った認識をまだ持っているが、それは追々修正させよう。アルたちに。

「で、相談って何だ」

「ええ、その、わたくしも弟子に「却下」冗談ですわ!」

無い胸を偉そうに逸らして、言った言葉を遮る様に、切り捨てる。その後、両手を前に組んで、恥ずかしそうにもじもじとするフラン。

「ユンさんは薬師ですから、もしかしたら胸を大きくする薬を「無いから。そんなアイテム」……そうですの」

バッサリと切り捨てられて、明らかに落胆するフラン。そんな悲しそうな眼で見るなよ。

アルにそろそろ本題に入らないのか、という意味を込めたジト目を向ける。同じ様に隠れていたリゥイも同じような目で見つめる。ザクロだけは、俺に首回りを撫でられてゴロゴロ転がっている。

そんなアルは、落胆したフランを端へと寄せる様に手を引き、本題を告げてくる。

「ちょっと装備の拡充をするための相談です」

「装備って武器、防具か? 生憎と知り合いも装備のメンテの請負とかで忙しいから仲介は無理だぞ」

「そこまでのお金は無いわよ。予算が三万G以内の範囲で買えるアクセサリーが欲しいのよ。イベント前に出来るだけのステータスの底上げをしたくてね」

アルの言葉に続き、ライナも言葉を発する。

「イベントに向けて金は貯めておかなくて良いのか?」

「残念だけど、私たちは、装備や消耗品を買ってお金は無いわよ。どうせ無いなら一文無しよ!」

「年越す金を持たない江戸っ子じゃあるまいし……」

「それに! 所持金が制限されている! って事は、スタートラインからして不平等じゃない! もしかしたら、イベント開始時の所持金額の差で何らかの救済措置があるかもしれないじゃない。私はそれにワンチャン賭けるわ」

自信満々で金が無い事をアピールし、イベントに対しての願望を垂れ流すライナ。そんなに上手くいくもんかね。と溜息を吐きながら、アルとユカリに視線を向けると二人とも苦笑い。まぁ、この二人は保険を打ってそうだから心配は無いだろう。残るフランは、落胆からまだ復帰しない。

アクセサリーについて、どうした物かと考える。

「アクセサリーなぁ。まぁ、一応、下級のアクセサリーならあるぞ」

「なら、見せて!」

「まぁ、待て。店の方に移動してからだ」

ザクロを抱いたまま、リゥイとアルたちを連れて店へと戻る。俺は、一度【アトリエール】の工房部から今まで試作したアクセサリーを持ち出す。

俺だって一応、細工師の端くれだ。普段は、宝石の研磨を重点に置いた作業だが、それでもアクセサリーは多少作る。ただ、簡単な小物や他のセンスへの応用の実験で生まれた品は、店には置いていない。

店に出す自信もないし、自分で装備する気もない。ただの手慰みのような物だ。唯一、装備しているのは、最初に自作した指輪だ。これも何度も作り直して、強化を繰り返すが、本職と比べると見劣りする性能とデザインだ。

他のアクセサリーも本来は、店のアイテムボックスの奥底に眠らせておくのだが、今回は放出するとしよう。

「待たせたな。まぁ、色々な種類があるから見てくれ」

取り出したアクセサリーは、金属から骨、モンスターの一部、鉱物類を複合した物など様々。基本的なデザインのシンプルな物が多くある。

「おおっ!? 色々ある!? 何処で手に入れたの!?」

「色々な生産分野やってるから偶に、気分転換に、な。試作品だから、全部同じ値段で良いぞ」

そう言って、ライナは、羽根と紐とモンスターの骨で作られた飾り紐を手に取って眺める。あれは、確か、SPEED上昇させるアクセサリーだったはずだ。重量も軽い反面、素材自体がレベルの低いMOBの物で【彫金】スキルのステータスボーナスの追加効果やエンチャントの付与が出来なかったはずだ。

ユカリが今手に持っている赤黒い指輪と薄黄色の指輪を見比べている。赤黒いは、普通の鉄製のリングに、ブルビートルの甲殻を薬品に漬け込んで、余計な物を溶かし、残った赤黒い皮膜を綺麗に洗い流し、表面に張り付けた物だ。粘液スライムやアシッド・ドーザーの液体などが素材に該当する。他にも薄黄色の指輪は、マッドシードの素材を薬品に漬け込んでフィルムを張り付けている。ブルビートルの方は、DEFを。マッドシードの方は、MINDがそれぞれ強化されている。

また、アルの見ているのは、金属板に刻んだレリーフにフィルムを被せ、その上から液状ガラスを掛けて固めたプレートタグだ。腰やベルトに吊るすもので、見た目の実用性は無い。意外と複数のフィルムの効果が重複し、追加効果も一つだけ受け入れる容量を持つアクセサリーだ。

他にも魚の骨をベースにした物やモンスターの部位を色々な液体に漬け込んだ物を成形して作った物など。

どれも重量や素材が安く効果も低いために、初心者向けの手頃なアクセサリーだろう。

「気に言った物はあったか? ……フラン?」

「これは……」

一人隅っこで何かのアクセサリーを手に持っている。あれは、銀を成形して作ったフレームに色ガラスを流し込んだ金属パーツを繋げて五十個ほど繋がり、チェーンの形を為している。

パーツを個別に作り、それを繋げただけのただの雑な作りで指輪や腕輪のような使い方よりも、ベルトに引っかける様に使うのが良いかもしれない。ただ――

「ああ、まぁ色々と形を研究した産物だ」

「可愛いですわね。猫や月、それに星ですのね」

そうなのだ。銀のフレームが猫だったり、月や星、花、ひよこ、リゥイやザクロを抽象化したキツネと馬。様々なシンボルが繋がっている。この形は、クッキーの型抜きから参考にしたデザインでかなり子どもっぽい。

能力的には悪くない装飾品だが、如何せん子どもっぽい物になってしまった。

「フランは、それ? ふむふむ……能力的には、悪くないけど、こっちのブローチも捨てがたいわよ」

「それなら、こっちの金色の宝石付きも良いかもしれませんね。キャラ的に似合いますし」

「あなた達、わたくしのイメージってどうしてそうキラキラした物ですの」

お嬢様っぽいから成金とか金ぴかというイメージだろうか。二人が持っている派手目なデザインは、少ない金鉱石を薄くメッキした鉄のリングや髪飾りだが、正直フランに似合い過ぎている。勧められて、納得している様だが、どうにも先ほどのチェーンが気になるのか、ちらちらと視線を向けている。

もしかして、フランって見た目と違って可愛い物好きなのだろうか。実用性は無くても観賞用としては十分で星や月を象っているから今の時期にはある意味ピッタリかもしれない。

「師匠。全員、欲しいもの決まりました」

「じゃあ、一個三万で良いぞ」

「やっぱり、話が分かるわね。私は、この飾り紐で、ユカリは、そっちのDEFが上がるリングね」

「仕方がありませんわ。二つも買う余裕も無い事ですし、この金色のリングを購入しますわ」

決めたアクセサリーをNPC店員のキョウコさんに渡して精算していく。

全員が選んだアクセサリーを装備し、確かめている。アル、ユカリ、フランは、指輪を確かめ、ライナは槍の石突きに飾り紐を括り付ける。

「クリスマスも近い、全員で一つだけアクセサリーを選んでいいぞ。プレゼントだ」

サービスと言いながらも、きっと意地の悪そうな笑みを浮かべていたんだろう。どれもマギさんに渡したトリオン・リングや他のプレイヤーの店売りに劣る見栄えだけを追及した物ばかりだ。おまけとして一つくらいサービスしても問題ない。

そして、パーティーでちゃんと意志疎通出来ているか。

俺の言葉を聞いて、四人が話し合う。だが、特に何を欲しいという訳でもない三人と自分の意見を言わないフラン。すぐに代表のライナが前に出て選び取る。

「ししょー。コレ、良いですよね」

「サービスだ。ライナが選んだんだ。パーティー内で好きにすると良い」

フランをチラ見したライナがそう問いかけてきたので、俺も悪戯っぽく笑い返す。

「じゃあ、これを貰いますね」

「ライナさん、何故、それを選んだんですの? もっと性能的にも良いアクセサリーがあるのに」

「だって、フランが物欲しそうな目で見てたから」

「わたくしは、欲しそうに見てませんわ! ただ、可愛いな、と思っただけです!」

「はいはい。じゃあ、返して別のを「やっぱり、欲しいのですわ」もう、素直じゃないんだから」

素直じゃない。と言い、やれやれとフランに背を向けたまま、肩を竦めるライナだが、その顔は、おちょくる人の顔をしている。フランは、実に扱い易いタイプの人間の様だ。

「ううっ、感謝なんてしませんからね!」

「はいはい。じゃあ、師匠。また来るわ」

「イベント中に何かありましたら、少し相談しますね」

そう言って出ていく四人。チェーンを受け取ったフランは、それを片手で持って、猫のパーツを指で弾く。それを見て、にへらっとだらしなく笑うのだから、作り手としては嬉しい限りだ。

「さて、残りは片付けるとしますか」

「ユンさん。ユンさん」

「何ですか? キョウコさん」

他、数十点のアクセサリーを片付けながら、尋ねてくるNPCのキョウコさん。

「あれらを売っても大丈夫ですか? 中には、マイナーな作り方の物もあったはずですが……」

「……まぁ、性能的に考えれば、大丈夫だろ」

ボーンアクセサリーなどは、一部に浸透しているし、金属製素材にモンスターの素材を装飾した物もある。それに比べたら、一工程加えた素材を使ったのに、何も問題は無い。

後日、モンスターの素材に浸した酸系の薬品の作り方を教えてほしいとマギさんに頼まれたので、技術交換と言う事になったのは、余談だ。