軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

Sense210

後日のリーリーとのレベリング。互いに狩りの準備を整え、第二の町のポータルを待ち合わせ場所にして合流した。

「リーリー。準備は大丈夫か?」

「うん。いつも通りだよ。それよりユンっちも大丈夫?」

「装備は問題ないけど、戦闘だとどうする?」

「うーん。いきなり連携も出来ないからスタンド・プレイが基本で良いんじゃない? 互いに邪魔にならない程度にサポートが良いと思うな」

「じゃあ、決まりだな」

俺は、装備の握りを確かめる様に手のグローブを何度も握り、弓矢と腰のベルトに括られた包丁を確認する。リーリーも対の短剣を逆手と順手に持ち、武器を素早く抜けるか確認して、一度ベルトに収める。

「道中の敵は、全無視で一気にボス。その後更に奥のエリアで採取とレベリング。準備は良いな」

「ねぇ、ユンっち。一つ提案なんだけど、ボスのエリアまで競争しない? どっちが先に辿り着けるか」

「何子供っぽい事言って――「よーい、ドン!」って、リーリー!?」

一方的に告げたリーリーは、有無を言わせずにスタートダッシュを決めて森の中に入っていく。走る速度は、結構速いのだろう。あっという間に森の中に消えるのを見て、見送ってしまう。

「早く来ないと! 一人でボス倒しちゃうよ!」

「……全く、上等だ! 負けて堪るか! 【付加】――スピード」

速度エンチャントを自身に施し、森に入ったリーリーを追う。途中まで余裕で走っていたのか、すぐに追いついた俺を見て、リーリーが、逃げろぉー、と笑いながら更に速度を引き上げる。

そして、左右の木々から飛び出す虫型MOB。

俺たちの通った後を狙う弾丸の様に飛び出す――バレット・ロコスト。

リーリーを押し潰そうと樹の上から落ちてきて、俺の前では障害物になり、時折、麻痺効果の粘着糸を吐く――パラライズ・キャタピラー。

硬い甲殻と直線的な突進で俺たちの後を追い、毒液を背後から飛ばして来る――ブル・ビートル。

今戦えば勝てる相手を無視して、突き進む。トレインにならない様にMOBと接触しても、一気に走り抜けて突き放すために、相手からの初撃以降は、俺たちを見失うMOBが多い。

道中の戦闘を最低限に留め、一気にボスへと直進する。

ボスの所に近くなるほどに虫たちの密度が下がり、俺とリーリーは、並走しながらボスの居場所に辿り着く。

「おい、リーリー! 競争の結果はどうなんだ!」

「あーあ、ユンっち早いよ。スタートダッシュをしても同着かぁ」

「馬鹿言うな。俺が前に出たら、絶対にあの虫たちを捌けないだろ」

道中、左右に飛び出す 蝗(いなご) や芋虫の糸などを短剣で切り裂き、活路を開いたのはリーリーで俺には同じ事は出来ない。

「でも、死角からの攻撃は、ユンっちが防いでくれたから同着」

「全く――」

確かに、突撃するブル・ビートルをクレイシールドで受け止め、時間を稼いだり、頭上から落ちるパラライズ・キャタピラーを弓矢で事前に撃ち落とすなどはしたが、どちらかと言うと射撃ゲームをやっている感覚に近い。

森の木の上や左右から飛び出す的を狙い撃つ。まぁ、危ないと思ったのは、多少防いだためにほぼ無傷でボスの前まで来た。

現れたボスは、木の枝の様に細い体と手足を持つ枯れ木色をしたカマキリ)――キラー・マンティスだ。

「さて、先手必勝! 行かせて貰うよ!」

「お、おい!」

出現と同時にボスへと切りかかるリーリー。高く跳躍して、細い体の逆三角形のカマキリの頭部に切りかかるが、それを右手の鎌で受け、左手で反撃するキラー・マンティス。リーリーは、空中で身体を捻り、躱して、後ろへと流れていくのを見て、俺は、ひやっとした感覚を覚える。

「あー、危なかった!」

「何を準備もなしに行くんだよ! 【付加】――アタック、ディフェンス、スピード」

リーリーに三重エンチャントを施し、弓に矢を番える。キラー・マンティスは、その三角形の頭部と無機質的な眼をしたままこちらを見ている。

その後ろで二本の短剣を順手と逆手に構えて、膝を曲げて身を低くするリーリー。

先に、動いたのは、リーリーだ。

エンチャントで強化された攻撃だが、キラー・マンティスは、鎌で受け止め、カウンターでリーリーを狙うが、その前に離脱している。続けて、二、三とヒットアンドアウェイで責め立てるリーリーだが、どの角度、どの死角からも反応されている。

また、早い速度で相手が反応するより早く一撃を与えても、細くしなやかだが、硬いカマキリにマトモなダメージを与えていない。

「――複眼で死角をカバーしているのか。それに高い物理ステータス」

エリアに不釣合いな程の強さ。そして、何より怖いのが、巨大な鎌だ。

普通のパーティーなら、壁役の頭上を越えて、後衛にまで届きそうな腕。薙ぎ払う様に振るわれる鎌の一撃は、恐ろしい。だが、変則パーティーの俺たちは、互いに好き勝手に動く。引き付け役は、リーリーに任せて、俺がダメージ・ディーラーに徹しよう。

「それに、硬い防御を抜くしかないだろ。――弓技・流星」

今まで何もせずに見ていたのは、アーツの溜めの準備。

溜めが終わり上空へと放った矢は、森の木々の間を突き抜ける。しばらくして、薄青色の光を放つ一本の矢がキラー・マンティスの頭上に降って来る。

両手の鎌を交差させて、矢を受け止めるが、ギリギリと甲高い金属音を上げて、カマキリの細い体を縦に突き抜ける。

今のリーリーの攻撃で今までマトモなダメージを与えられなかったが、今の一撃である程度のダメージを与える事が出来た。

「ユンっち! 【認識阻害】使ってるよね!」

「勿論!」

「なら――【ヘイト・アタック】!」

リーリーは、俺へと向きを変えたキラー・マンティスに素早く、紫色に光る短剣で連撃を加えて離脱する。

リーリーが使ったスキルは、【盾】系スキルの【ヘイト・アクション】の攻撃版と言えばいいだろう。

紫色に光る武器で攻撃した場合、相手へのヘイト値を急上昇させる攻撃アーツ。それに俺の防具には【認識阻害】の追加効果がある。相手からの発見やヘイト値の上昇を押さえてくれる効果でスムーズにターゲットがリーリーへと戻る。

「ユンっち、後はこのループだけだよ!」

「リーリーは、攻撃当たるなよ! そんなに耐久高くないだろ!」

「大丈夫! 回避は得意だか、うわっ!? 危なかった!」

「全く、あんまり冷や冷やさせないでくれ。もう少ししたら、次のを撃つぞ!」

「分かったよ。安全第一だね」

そう言いながらも、倒す気満々でキラー・マンティスに挑んでいくリーリー。

俺も【弓技・流星】の 待機時間(ディレイ・タイム) の経過を待ちながら、リーリーへと必要な支援をしていく。またキラー・マンティスにも弱体化のカースドを放つが、 抵抗(レジスト) された。

魔法攻撃はほぼ無い代わりに、その他のステータスが高いMOB。そして、特別な技を使う訳でもない。

「第二射! 行くぞ――【弓技・流星】」

俺の声に、一瞬で退避するリーリー。二度目の高火力アーツを放ち、再びキラー・マンティスの頭上に降って来る。今度も両手の鎌で受け止めるが、最初の正中線を射抜く攻撃では無く、やや右に逸れた。この辺りの命中の甘さは、レベルが低いためだろう。

「そこからの――【ヘイト・アタック】!」

リーリーが先程と同じようにヘイト値を稼ぐためにスキルを発動させる。そこからは、ほぼパターン化された動きの繰り返しだ。十回以上【弓技・流星】を放ち、リーリーがその間、延々と飛び回って回避と攻撃を繰り返す。

「これで――ラスト!」

最後の一撃は、リーリーの攻撃。与えるダメージは少なくても手数で蓄積させ、ついに倒した。単調な作業と集中力の要る回避。それを行うリーリーは、何でもない風に言う。

「木工の生産よりも簡単だね。それ程集中する必要もないし」

「そうか? それでも十分凄いんだけど」

「ユンっちとは、微妙に違うからだよ。【木工】は一つの物を仕上げるのに対して【調合】は、複数作業の同時並行もあるでしょ? ユンっちも戦闘中、攻撃、回復、支援って幾つかの役割を並列的に出来るじゃん。僕は、無理だな」

そうなのだろうか? 戦闘で前後左右に動き回らない分、広い視野で見ているだけで突発的な戦闘で前衛になった場合などは、ほとほと弱いと自己評価を下す。

「まぁ、無い物をとやかく言うより先に進もうか。もう、目的のエリアだからな」

「そうだね。ボスのキラー・マンティスも余裕だったし、大丈夫でしょ!」

リーリーの言葉にそうかもな。と内心で少し舐めていた。

目の前に広がるのは、森より更に暗く樹の密度も濃い密林。木々の間からは光が差し込まず、昼間でも薄暗い空間に何の気負いも無く進んでいく。